わたしが連れて行かれたメイド部屋には、わたしと同じ衣装をまとった女性が10人くらい集まっていた。
あとで聞いた話だと、こういったメイドのグループが10ほどあり、全部で100人近くのメイドをこの邸宅では使用しているらしい。
早い話がアマゾンキング氏のハーレムってことね。
     
まあ、お目当てのアマゾンキング氏に接近できたんだし、その周辺で仕事をしているメイドさんたちに取材すれば、キング氏
の情報も収集できるにちがいないとわたしは前向きに考えた。 うん、やっぱりポジティブだわ、わたしって!
しかし、メイド連中にいろいろ話を聞いているうちに、彼女らはアマゾンキング氏への無償の奉仕活動に至福の喜びを感じており、
ファンというよりマインドコントロールされた信者と呼んだ方が適切だということがわかってきた。
だから彼女らから得られる情報はキング氏への賛美の言葉以外なく、逆にわたしにはキング氏がもしかしたらとっても恐ろしい
男なんじゃないかってだんだん思えてきた。
冗談じゃないわ!わたしは決して洗脳なんかされないから!
            
翌日、わたしたちのメイドグループは邸宅の豪勢なプールの清掃をさせられた。
40℃を越すと思われる炎天下の作業でわたしはフラフラになってしまったが、他のメイドたちの顔は嬉々として輝いていた。
    

やっぱり異常だわ、ここの人たち。まるで魂を抜かれたロボットみたい。
わたしにとっては過酷以外のなにものでもない労働を終えてクタクタになって部屋に戻ると、そこに例の爺やが待ち構えていた。
「明日香様、アマゾンキング様がお呼びです。さあ、こちらへ・・・」
(な、なに!やっと休めると思ったのにぃ・・・・) とは言え、わたしは不満を顔に出さないように気をつけながら、爺のあとに
ついて行った。
    
アマゾンキング氏の部屋に入ると、キング氏は正面の大きな木製のデスクでブランデーグラスを傾けながらわたしを迎えた。
「メイド明日香。どうかねここの暮らしは?なに不自由ない快適な環境で、もう帰国する気などなくなっただろう?」
「い、いえ、まぁ、そのぉ・・・・」わたしがなんて答えたらいいかわからなくなってシドロモドロになっていると、
「それより君に聞きたいことがある。」とキング氏は言って、一冊の赤い表紙の手帳を手にとって見せた。
「あっ、わたしの手帳!どうしてここに?」
     
「はははははは、意外と素直に認めたね。」
し、しまった!あの手帳にはわたしがここで取材したキング氏のあれこれが事細かに書き込まれているんだ!
きっと屋外での作業中に、爺あたりがわたしの持ち物を調べたに違いない。
「いったい君がここにやって来た本当の目的は何かね?これを見る限り、どうやらメイド志願ではなさそうだな。」
     
「い、いえ、そ、そんな・・・・わたしはアマゾンキング様の大ファンで・・・・・」
「まだそんなことを言ってるのかね?悪いが私の目は節穴ではないぞ。さあ、話してもらおうか。私の身辺を調べてどうするつもり
なのか?いったい誰の回し者なのかをね。」 そう言うとキング氏は爺に目配せした。
爺は、とても老人とは思えないパワーで素早くわたしの体を取り押さえると、両手をデスク越しに縛り上げ、さらに両足を広げて
デスクの脚に拘束した。
おかげでわたしは上体をデスクの上に伸ばし、大股を開いたまま尻を突き出した格好になってしまった。
              


「ただいまより、アマゾンキング様のプレイが始まります。あなた様が質問にお答えになるまで、プレイは終わることはありません。」
「な、な、なんですか、プレイって?!」わたしは大いに焦りまくりながら爺に尋ねた。
爺はわたしの短いスカートをめくりあげ、下着をつけていない尻を剥き出しにしながら落ち着き払った声で答えた。
「スパンキング拷問プレイでございます。明日香様。」
      
アマゾンキングにスパンキング・・・・・まさか言葉遊びじゃあるまいし・・・・・
ビシィィィィィィィィィィィッ!!!
いきなりアマゾンキング氏の手に握られた鞭がわたしの尻をしたたか打ちのめした。
きゃぁぁぁあぁぁぁあぁぁっ!!!
  
「どうだ、刺激的だろう。たまらないだろう。へへへへ・・・・」 わたしの尻を打つたびにキング氏はそう言ってわたしの顔を覗き込む。
わたしが睨んだとおり、この男はキングなんかじゃなく、ただの変態男だった。
バシーーーーーーーッ!!!!
ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!

「さあ、ここに来た目的はなにかね?」  
パシィィィィィィィーーーン!!!
あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

「産業スパイか?それとも警察か?どっちなんだ!」
ビシィィィィィィィィィィーーーン!!!
(絶対に正体を明かしてはならないぞ!)・・・・わたしの頭の中でうるさいほど課長の声が響いていた。
 

「わ、わたしは・・・・ウッ!・・・ただのファンで・・・クゥッ!・・・・怪しいものでは・・・・ハゥッ!・・・・ありません・・・ウグッ!」
そんなわたしの説明を無視して、キング氏のスパンキング責めは延々と続けられ、徐々にわたしの意識は遠のいていった。
キング氏は打てば打つほどだんだん興奮状態になってきて、やたら口数が増えていった。
「さしずめ私の新エネルギーの秘密でも盗もうとしたんだろうが、オマエはもう二度とここから出られない。だからメイドの、いや
冥土の土産にいいことを教えてやろう。あの新エネルギーっていうのは真っ赤なウソだ。そんなもの最初っからありはしない。
これで世界の企業を騙して、多額の提携金をいただこうというのが私の狙いさ。残念だったな。あははははははは・・・・」
              
わたしはそんな言葉をかすかに聞きながら、ついに意識をなくしてしまった。
「気を失ったか。オイ、爺。こいつを格下げしてショーグループに加えるんだ。」キング氏はそう言うと鞭を放り投げ、再びデスク
に戻ってブランデーをやり始めた。

翌日、アマゾンキング氏の邸宅の庭では朝から大勢の客人を迎え、賑やかなパーティーが繰り広げられていた。
周囲をジャングルに囲まれているので、どんなに派手に騒ぎまくっても一切苦情など気にする必要はない。
やがて陽が沈むと庭の宴はますます活況を呈し、今まさにクライマックスに突入しようとしていた。
       
「ご来賓の皆様、お待たせしました!本日のメインイベント!ジャングル美女の華麗なるショータイムのはじまりはじまりーー!」
そんな司会者の声がマイクを通して割れんばかりに響き渡る。
全裸に剥かれたわたしは、庭に通じる廊下で手枷足枷に繋がれた状態で、そのマイクの声に耳を傾けていた。
「いったいなにが始まるっていうの?」わたしはお尻に残る激痛を堪えながらもドキドキ緊張感に包まれていた。
                       
そこへ荒々しい大男が現れ、わたしを無理矢理庭に引きずり出した。
オオオオオオオオオオオオオオーーーー!!一斉に周囲から歓声が上がる。
「本日はめったにお目にかかれない東洋美女どうしの対決です!」司会者のマイクが叫ぶ。
「対決???」
「この壮絶なキャットファイトの勝者には自由の身を、敗者にはピラニア地獄の洗礼を。それが本日のルールですーー!」
「キャットファイト?!・・・って、わたしに誰かと戦えって?! 負けたらピラニア地獄?!そ、そんなぁ・・・・」
       
その時向う正面に一つの影が現れたかと思うと再び周囲から大きな歓声が沸き起こった。
わたしの手足の枷が解かれ、ファイト!の号令がかかる。
(仕方ないわ、こうなったら一か八か戦うしかないわ!) わたしは腹を決めた。
                
対戦相手も覚悟を決めたらしく、いきなりわたしに向かって突進して来た。
その距離3メートルまで接近した時、スポットライトに相手の顔が浮かび上がった。 え、えぇーーっ!!
相手もわたしの顔に気づいたようで、同じように驚きの表情をしたが、わたしたちはそのままガッツーーンとぶつかり、取っ組み
合いの状態になった。
「ど、どうしてあなたがここに?!」「あんたこそ、なにやってるのさ!?」
なんとわたしの対戦相手はあの握馬物産セールスレディの笛羅 千緒(ふえら ちお)だったのだ。
     
驚くわたしの隙を突いて笛羅が手を伸ばし、首を締めにかかってきた。 「覚悟しな!ピラニアのエサなんてごめんだからね。」
「ちょ、ちょっと待って。ねえ、ここは日頃の恨みを忘れて協力し合わない?」
わたしたちは、くんずほぐれつの体勢になりながら、密かに会話を交わした。
「協力ってどういうことよ?」 「脱出するのよ、ここから。」 「脱出?・・・わかったわ。で、どうするの?」 「わたしが逃げるから
その後を追って。」 わたしは笛羅にアイデアを伝えた。 「いいわ。やってみるわ。」
一瞬笛羅が手を離したのを機に、わたしはドッと逃げ出した。
その後を笛羅が「待てぇーーーー!!!」と追いかける。
観客に囲まれた空間をわたしはぐるぐる逃げ回る。それを笛羅が追う。 観客からは「いいぞ!行けー!行けー!」の声援。
そのうち頃合を見計らってわたしは観客の中に飛び込んだ。笛羅もわたしを追って観客の中に飛び込む。
「おい、あの二人はどこに行ったんだ!?」「こっちだ!」「あっちだ!」会場が騒然となる。
ヤンヤの騒ぎがしばらく続いたが、彼らがわたしたちがいなくなったことに気づいたのは、それから10分もあとだった。
うしろも振り返らず必死にジャングルを駆け抜けたわたしたちは、ようやく川岸に到着した。
そこにはグッドタイミングで、あのベーション増田氏の新しい小船が待ち構えていた。
                    
マナウスの町まで笛羅はひたすら無言だったが、別れ際に「明日香。この勝負の続きは日本でやるわよ。」と一言つぶやいた。
わたしは「アマゾンキングの話はでっちあげよ。この取り引きはやめた方がいいわ。」と忠告したが、笛羅は「その手には乗らないわ。」
と言って去って行った。
こうしてわたしの長年の夢の海外出張は、お尻の傷とともに悲惨な記憶だけが残ることになった。
でも、わたし、負けないわ!
         

★後日談・・・・・
わたしの報告でうちの会社はアマゾンキング氏のオファーを退けることにしたが、ガッチリ提携した握馬物産はしっかりペテンの
餌食にされ大損失を被った。
その後、笛羅が麗図社長から死ぬほど折檻されたのは言うまでもない。

      


※この物語はすべてフィクションであり、登場人物および団体は実在しないものであります。

 

 

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