うぐぐぐぐぐ・・・・ゲゲッ! モゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・!!!
突然の息苦しさに目を覚ましたわたしは、一瞬なにがなんだかわからなかった。
口に大きな漏斗がさしこまれ、そこに勢いよく水道の蛇口から水が流れ込んでくるではないか!


                   
無我夢中でその水を飲み込もうとするが、水の流れ込む勢いに追いつけず、わたしは窒息寸前だった。
「ストップ!」 女性の声が響き、水が止められる。
ハァハァハァ・・・・・苦しい呼吸で薄目を開けると、な、なんとそこには見覚えある顔が3つ。 矢良、未鱈、笛羅の3人である!
矢良と未鱈が仰向けになったわたしの手と顔を左右からしっかり抑え、笛羅が水道の栓に手を置いている。

「気がついたようね。あんたがサウナで脱水症状になってたんで、こうして水分をとらせてあげてるのよ。感謝しなさい!」
矢良がわたしに言った。
モギモグムゴ!!!(な、なにするの!?) と言ったつもりだったが、漏斗をくわえているので言葉にならない。
「まだ飲み足りないみたいね。もう一度行くわよ。」
笛羅が栓を全開にすると再び水が蛇口から飛び出してきた。
   
うぐぁぁぁぁぁぁ・・・・ムグムゴモゴモゴモゴ・・・・・ 大量の水が口から入り胃の中をいっぱいにしていく。
「はははははは! 今夜は終電を気にせず、夜通しあんたをいたぶってやるわ。これまでの恨み、観念するんだね!」
ウガウゴウグモゴモグモガ!!!(そんなメチャクチャな!逆恨みってものよ!) 
わたしは強烈な息苦しさと破裂しそうな胃袋の圧迫にもがきながら叫んだ。
そんなわたしの苦しむ様子をしばらく眺めていた連中は水道の栓を締めると、今度はわたしの体を仰向けのまま浴場の中央に引き
ずり出し、手足を伸ばして上下から押さえ込んだ。
                 
「菜子、スノコを持っといで!」 わたしの両手を抑えこみながら矢良が部下の未鱈に命じる。
未鱈が脱衣場から1枚のスノコを持ってくると、矢良はそれを水でパンパンに膨れ上がったわたしの腹の上に乗せるよう指示した。
              
や、やめてーーーーっ!!!!! わたしはこれから起きることを察して、慌てて叫んだ。
しかしそんなわたしの叫びなんか連中が気にかけるはずがない。 未鱈がわたしの手を抑えると、矢良がスノコの上に飛び乗った。
グェェェェェェェーーーーーーーッ!! わたしの口からは悲痛な悲鳴とともに大量の水が押し出された。
「女リンチの怖さを徹底的に教えてやるよ!」と矢良は大声で言うと、何度も何度もその上でジャンプしはじめた。
 
グワァッ!ググェーーーーー!!!!!ゲボォォォッ!!グワァァァァァッ!!!
腹の中のすべてをすっかり無理矢理口から吐き出された時、わたしは失神寸前だった。
「ハァハァハァハァ・・・・い、いったい・・・わたしに・・・・どうしろって・・・・いうの? ハァハァハァハァ・・・・」 
「はん、いい質問ね。教えてあげるわ。 今後二度と私らの営業の邪魔をしないって誓うのよ。」矢良が得意気な顔で言う。
そこへ別の声が割り込んだ。
「待って、それだけじゃつまらないないわ。 加えて、豪紋商事の営業戦略を逐一報告するって約束もしてもらおうかしら。」 
「そ、その声は・・・麗図社長?!」 わたしは新たに現れたもう一人の敵の存在に驚いた。
      

「わ、わたしにスパイになれっていうの?!」
「まぁ、そんなとこね。」
「いやよ!あんたたちみたいな汚いやり方をする企業に協力するわけないじゃないっ!」
                    
「ほほぉ、見上げた愛社精神ね。それともあの女部長への献身的な愛かしら?」
麗図社長は、矢良たち部下にわたしの体をうつ伏せにするよう命じると、自分は風呂場掃除用のワイヤーデッキブラシを手にした。
      
「これまで可愛い部下たちをさんざんコケにしてくれたお礼も兼ねて、スパイになると約束するまで、あなたの悶え苦しむ顔・声・姿
を今夜は存分に楽しませてもらうわ。」
そう言うと手にしたワイヤーブラシでわたしの剥き出しの背中をゴシゴシ力いっぱい擦りはじめた。
  
ギ、ギャアァァァアァ!!い、痛っぁーーい!!! ヤ、ヤメテェーーーーーーッ!!!!
ワイヤーブラシの摩擦は、お風呂でふやけたわたしの背中の皮をバリバリ剥ぎ取っていく。
あまりの激痛にわたしは気絶すらできず、ひたすら仰け反りながら絶叫をあげ続けた。
             
「さあ、どうするの? 我々のスパイになるって約束する?」
い、いやぁーーっ!!!あ、あなたたちなんかに・・・あなたたちなんかに・・・負けないわっ!!
                     
「ふん、本当にしぶとい子ね!いいわ、そこまで頑固を貫くなら。 今夜こそ容赦しないから。」
麗図社長は、ついに堪忍袋の緒を切らせ、矢良たちに命じた。
「この子をあの塩風呂に入れてあげな!」
「し、塩風呂?・・・・」 わたしは朦朧とする目で麗図社長が指し示す前方の浴槽に目を向けた。
            
「あなたの背中、まるで皮をむかれた稲葉の白兎よ。おほほほほほ・・・。今からしっかり消毒してあげるわ。塩風呂は新陳代謝を
促進し体中の毒素を出してくれる自然治癒の力があるのをご存知?」 麗図社長は無気味な笑みを浮かべながら恐怖におののく
わたしを見ながらうんちくを語り始めた。
(こ、こんな体で塩風呂なんかに入れられたら・・・・・激痛で気が狂ってしまうに違いない・・・・)
イヤァァァァァァァ! ヤメテェーーーーーーーーーーッ!!!!
矢良たち3人は、全身で抵抗するわたしの両腕をしっかり左右から握り締め、ズルズルと塩風呂の縁まで引きずっていく。
「はははは、うちの社長の本当の怖さを思い知ったでしょ。さあ、言うことを聞くの?どうするの?!」 矢良が迫る。
絶体絶命のピンチ!!でも、握馬の連中に屈するのだけは、絶対にイヤだった。 わたしは覚悟を決め、目をかたくつぶった。
  
「よーし、突き落すわよ。いっせーの・・・・」 矢良が号令をかけた、その時・・・
ビシッ!!ビシッ!!ビシッ!!と鋭い音がして、ギャッ!と3人が悲鳴を上げてわたしの体から手を放した。
3人の足元には飛んできたと思われる石鹸が3個落ちていた。
     
「なに?!どうしたの?!」 麗図社長は驚くと同時に、浴場の入口の湯気の中に立つ一つの影に気づいて叫んだ。
「誰?!何者?!!」
「あんたたち、勝手なマネはさせないわよ!」 影がズシッとした低音で言った。
  
「よくもぉーーーーーっ!!!」 矢良、未鱈、笛羅の3人は拳を振りかざし影に向って突進した。
ドスッ!バスッ!ガツーーン!! 目にも見えない速さで3人が弾き飛ばされる。
そして湯気の中から影がゆっくりと正体を現した。
「あぁっ! ぶ、部長!!」 わたしは思わず叫んだ。
なんとそこには全裸のままこちらにゆっくりと歩いてくる佐渡部長の姿があった。
                     
「麗図 美杏。私の明日香に手を出すとは、どうしようもないサディストババアめ!」
「サ、サディストババア・・・ですって!? キィィィィィィィーーーーッ!!その言葉そっくりあんたに返すわ!佐渡 美奈!」
温泉も沸騰するくらいのもの凄い殺気が二人の間に漂う。 そして両者睨み合ったまま、しばらくの沈黙が続く。
    
「じゃかぁしぃぃぃぃぃぃ!!!!」最初に動いたのは麗図社長だった。
「やるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」佐渡部長がダッと突進する。
浴場の湯気をかき分けて、両者が猛スピードで激突した。
わたしはもちろん、矢良たち3人までも、ただただこのふたりの妖艶女性の対決を唖然として見守った。
              
しかし勝負は一瞬でついた。 
ザブーーーーン!!!麗図社長の体が大きな水飛沫をあげて塩風呂の中に落っこちた。
「ああああっ!しゃ、社長!!!」 矢良が驚いて叫ぶ。
      
「くっそぉ!!この勝負、お預けよ! あんたたち、行くよ!」 麗図社長は塩風呂から這い出ると浴場からさっさと出て行った。
「あっ・・・社長!!待ってくださーーーい!」 矢良たち3人も慌ててそのあとを追って姿を消した。

「明日香さん。それにしても、本当にひどい目にあったわね。」 と佐渡部長がわたしのそばに来て言った。
「部長・・・危ういところを助けていただいて・・・ありがとうございます。」
           
「安心して。私の部屋で傷の手当てをしてあげるわ。」 部長はわたしを抱きかかえるようにして部屋へ連れて行った。
案の定、不本意ながら、わたしは夜通し部長のするがままにされてしまった。 やむを得ない、ピンチを助けてもらったんだから。
でも、心までは決して部長の意のままになるつもりはない。絶対に。
わたし、負けないわ!
  

 

※この物語はすべてフィクションであり、登場人物および団体は実在しないものであります。

 

 

 

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