「あーーっ、遅刻遅刻ーー!!」 
今朝は珍しく寝坊して、朝食をとる間もなく家を飛び出し、今会社のエレベーターに飛び乗ったところだ。
   
「チーーン 4階です。」到着を知らせるエレベーターの機械音声も今朝はやたらのんびり聞こえ、わたしにはじれったく思えた。
スゥーーーー ドアが開く。
「おはようございま・・・・・」 元気にあいさつしようとして、わたしは途中で言葉を失ってしまった。
エレベーターを降りると目の前にわたしの所属する営業1部のオフィスの入口がある・・・・はずだったが、
え、ええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!! わたしは後頭部を鈍器で思いっきり殴られたような強烈な衝撃を受けた。
                                                  
な、なんと、目の前には無残に焼け焦げた瓦礫の山が散乱しているではないか!
コンクリートの壁は打ち砕かれ、デスクと椅子はぶっ飛んでいて、そこらじゅうに書類や事務用品が散らばっている。
おまけにあたり一面もうもうと煙っていて、焦げたような臭いがオフィス中に充満している。
「い、いったい・・・・なにが起きたの?!」
        
わたしが呆然と立ちすくんでいると、かすかに瓦礫の下から声が聞こえてきた。
「は、針筵くん・・・・ここだ、ここだ・・・」 「あ、あの声は・・・・瀬久原課長?」
声がする方を目を凝らして見てみると、横倒しになった机とコンクリート片の下から一本手が出ていて、こっちこっちと招いている。
わたしは夢中で瓦礫の山を取り除き倒れた机を起き上がらせた。
「ひゃぁ~、えれぇ目にあったぜ!」 瀬久原課長はやっとの思いで這い出てくると、ボロボロになったスーツの埃を払いながら言った。
「か、課長!大丈夫ですか!お怪我は?」
                      
「なぁに、こう見えても学生時代に鍛えてるから、これくらい屁でもないさ。」 課長がすすけた顔に笑みを浮かべて言ったので、
わたしは少しホッとした。 (ん、でも待てよ。課長、学生時代、手芸部だったはず・・・・ま、いっか、無事だったんだから)
「ところで、課長。いったい、なにがあったんですか?まさか某国のミサイルでも打ち込まれたとか?」
「おっ、いいカンしてるじゃないか。ま、そんなとこだ。」
「ヘェッ!わたし冗談で言ったのに・・・・・」
「落ち着いて聞けよ。とても重要な話だ。」 課長は急に神妙な顔つきになって説明をしはじめた。
                                                         
「あの憎きライバル会社の握馬物産が最近M&Aしたのは知ってるな。」
「は、はい・・・・たしか黒穴商会とかいう企業を買収したと聞いてますけど。」
「そう、その黒穴商会ってやつが、実はフツーの企業じゃなかったんだ。」
「ってことは、やっぱりどこか外国の軍需産業だったとか?」
「それならまだいい。外国どころか、黒穴商会の正体は・・・・なんと地球外生命だったんだ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ い、いま、なんと?」
「地球外生命、つまりエイリアンさ!! 遠い宇宙の果てでブラックホールを運営してる企業で、それはそれは高度な科学技術を
持った恐ろしいやつらだそうだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
                   
「麗図のババア社長め、とんでもねぇ野郎だ!で、真っ先にライバル会社のうちに標的を定め、攻撃してきやがったんだ。」
わたしはまだ課長の話がよく呑み込めず、ただただ我が耳を疑うばかりだった。
と、その時、
ドドドドドドドドドドドドドドド!!!!ダダァーーーーーン!!!
もの凄い衝撃波が通り過ぎ、爆発音とともにわたしたちのうしろのエレベーターが木っ端微塵に吹き飛んだ。
                             
「オイ、伏せろ!また攻撃がはじまったぞ!」 課長はわたしの背後に素早く身を隠した。
やがて、ものの見事に破壊されポッカリ穴の空いたオフィスの外壁に、目もくらむほどの眩しい光が出現したかと思うと、銀色の乗り
物が外の空間に浮かび上がった。
「ゆ、UFO?!!」 わたしは金縛りにあったように足がすくんでその場に仁王立ちになってしまった。
                                          
そのUFOの上部がパカッと開き、中から緑の顔をしたヘンなおやじが現れた。明らかに地球人じゃない!と、驚いていると、その
横に最新の宇宙ファッション?に身を固めた麗図社長が緑のおやじに寄り添うように現れたではないか!!
「おほほほほほ・・・・豪紋商事さん、我が社の威力を思い知ったかしら!とどめ行くわよ!」麗図社長が大声で叫ぶとUFOの正面
の砲口とおぼしき丸い穴がわたしの方に向かって照準を定めた。
     
その時、わたしのうしろに隠れていた課長が叫んだ。
「針筵!おまえの両胸を力いっぱい揉んで、乳首をひねるんだーーーーっ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ い、いま、なんと?」 わたしがキョトンとしていると、課長が再度叫ぶ。
「いいから、やれ!これは業務命令だーーー!」
「は、は、はい!!」 わたしは何が何だかわからず、とっさに課長の言うとおりにした。
すると・・・・
ビビビビビビビビビビビーーーー!!!!
強烈なスパークが発生し、わたしは全身に電流が走ったような衝撃を受け、一瞬目の前が真っ白になった。
                          
ハッと我に返ると、UFOの砲口から発射された巨大な火の玉が目前に迫ってきている!
わぁーーっ!と大声を上げながらわたしは反射的に両腕を前でクロスし体を守ろうとした。
ドドォォォォォォォォーーーン!!! 
火の玉が激突する衝撃に、「あぁやられたぁーー!」と思ったが、気がつくとなぜか無傷のままわたしは同じ場所に立ち続けていた。
「おお!成功だ!!」 わたしの背後から課長の歓喜の声があがる。
それとは対照的に、目の前の緑色のエイリアンが目を皿のようにして驚いた表情でわたしを見つめている。
 
どうやら火の玉攻撃をわたしの体が跳ね返したらしい。
「針筵!よく自分の体を見てみろ!」 課長が大声で叫ぶ。
わたしはその言葉どおり自分の体をあらためて見てビックリした!
なんと、いつの間にやら見慣れないコスチュームに身を固めているではないか! 「な、なに?これ?!」
                                   

わたしがただただ驚いていると、目の前のエイリアンが猛烈に怒りだし、わけのわからない宇宙語で叫んだ。「*★◇◎▲<<#!!」
するとドシン!ドシン!ドシン!と立て続けにフロアの床を振動させながら3体のロボットが突如出現し、わたしに向かって突進してきた。
    
わたしはまたまたビックリしたが、次の瞬間わたしの体の中で何かのスイッチがONになった気がした。
と同時に、わたしは猛然とダッシュして、ロボットたちの群の中に飛び込んでいった。
不思議とロボットの素早いはずの動きがまるでスローモーション映像を見るようにゆっくりに見える。
すかさず、わたしはロボットたちにパンチとキックを連続であびせ、瞬く間に3体とも破壊し尽くしてしまった。
 
「あらゆるリスクから企業を守るOL戦士ハイパーASUKA参上! 経営を圧迫する諸悪の根源よ、勝手なマネは許さないわ!」
気がつくと自分でも聞いたことないセリフを堂々としゃべっている!
                                            
「想定外の事態だ!ひとまず撤収ーーっ!!」 エイリアンはそう叫ぶとUFOのハッチを閉め、どこかへ飛び去って行ってしまった。

とりあえず危機は去ったようだ。 わたしは冷静さを取り戻すと、課長の方をゆっくり振り返った。
課長は、「大いに質問あり!」という表情のわたしの顔を見てドキッとして、言葉を選びながら話しはじめた。
「は、針筵くん。キ、キミが抱えている疑問にちゃんと答えるから、どうか取り乱さずに聞いてくれ!」
課長が恐る恐る言うところをみると、よほどショッキングな内容なのかもしれない。直感的にわたしはそう思った。
                          
「ライバルの握馬物産が買収した企業が異星の知的生命体だという情報をキャッチした我が社は、緊急役員会を招集した。
喧々諤々の大討論の末、“これに対抗する手段は一つしかない!”という判断を社長が下したんだ。名づけてハイパーロイド作戦。」
「ハ?ハイパーロイド?・・・・なんですか、それ?」
「早い話が、改造人間。社員をサイボーグ化して会社をヤツらの襲撃から守る作戦さ。」
「か、改造人間?!サイボーグ?!!・・・・・・ってことは、わたし、改造されちゃったんですか!!」 わたしは驚きを隠せず叫んだ。
    
「そのとおり。キミは超人体に改造されたんだ。」
「で、で、で、で、でも、いったい、どうしてわたしなんですかぁ?!」
「先週、健康診断があったろう。全社員の診断データの中で、キミが最適だったんだ。」
「だ、だ、だ、だ、だけど、いったい、いつの間に?????!」
「昨日の午後一の会議でキミは居眠りをしてたろう。」
「はっ、バレてましたか。すみません・・・・・」
「実はあれは昼食に睡眠薬を混ぜてたからなんだ。で、キミが会議で寝込んだ隙に宇袖(うそで)博士の研究所に連れ込んで、改造
手術を施してもらったんだ。」
 
「宇袖博士? って、あのインチキタイムマシーンの変態科学者、宇袖 翔(うそで しょう)博士ですか?!」
「そのとおり、あの宇袖博士だ。あのあと博士とは我が社の技術顧問として契約を交わしたんだ。」
                
「どうりで・・・この必要以上に露出度が高いコスチューム。博士の趣味なんですね!!」
「なかなか博士もいい趣味してるじゃないか!」
「いずれにせよ、とにかく困ります!そんな勝手なことされたら!」
「オレに文句を言うな!我が社を救う唯一の手段だって社長が言うんだからしょうがないだろ!それに安心しろ。一応、ハイパーロイド
手当てとして、給料に3000円プラスしてもらったから。」
「さ、3000円で命を賭けろっていうんですか!?ヒドーーーーーイ!!!」
そんな会話をしているところへ、伊闇さん、肝井さん、そして坪根さんがボロボロの姿で現れた。
「おおーー!キミたち、無事だったか!!」 バツが悪くなった課長は、突然話題を変えるかのように3人に向かって言った。
    
「は、はい。おかげさんで。 そういう課長もご無事のようで・・・・・」
「ところで、部長は?佐渡部長の姿が見えませんが・・・・・」 わたしは急に心配になってあたりを見回した。
その時、
ゴォォォォーーー!!! 再び轟音とともにあのUFOが現れたかと思うと、スピーカーから大音響で話しはじめた。
「地球人に告ぐ。地球人に告ぐ。無駄な抵抗はやめ、握馬物産の軍門に下るのだ!さもないと、これを見るがいい!」
そう言われてわたしたちはUFOが示す方向に目を向けた。
な、なんとそこには・・・・・・・・十字架に磔にされた佐渡部長の姿があるではないか!!!


※この物語はすべてフィクションであり、登場人物および団体は実在しないものであります。

 

 

 

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