◆◆ファンタジー世界の女兵士総合スレpart4◆◆
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282
名前:
投下準備
[sage] 投稿日:2007/07/18(水) 18:03:48 ID:MyilARbv
リクエストにお答えしてヘタレ書きました。
女兵士モノではないのでご容赦を。
283
名前:
ヘタレな魔王の物語3
[sage] 投稿日:2007/07/18(水) 18:06:19 ID:MyilARbv
「メリー、メリー、メリーのおっぱい可愛いね〜」
その日はこっそり囲っているメリーと遊べて、僕はすっかりごきげんだった。
お城で一緒に暮らしたいのだが、クローディアが許さないので都の郊外に内緒で預けてあるのだ。
鼻歌を歌いながら廻廊を歩いていると、裏庭に何やら不審な物体があった。
(ん、なんで銀貨が落ちてるんだろ?)
むろん、半年前ならともかく今の僕に銀貨程度は何でも無い代物だ。
それよりも重要なのは……
(なんだ? あの籠は?)
銀貨の上につっかえ棒に支えられた大きな籠が準備されている事だ。
籠はかなり大きな代物で、子供一人すっぽり入る位の物だった。
つっかえ棒は紐が括り付けられており、紐は庭の木立に伸びている。
どうも気になって、僕はそちらに引き寄せられた。
あくまでもその仕掛けが気になったからであって、
王様の癖に落ちてるお金は放置できない貧乏性では無いから念のため…… 本当だよ?
さて、銀貨と大籠を目の前にして、僕は右手を一振りする。
「むにゃむにゃ………… ほいっ」
指輪の魔法で引き寄せた一本の杖。
僕はそれを籠の下に差し入れて、紐でつっかえ棒が引っ張られても籠が落ちないようにした。
その上で銀貨を拾えば……
「あーっ、駄目ェー!! 」
大声で静止された。
「つっかえ棒追加するのは反則ー!やり直してよ!」
茂みから、見覚えのない女の子が飛び出して僕の行為を詰った。
背は僕より大分低い。
この辺りの国では見かけない変わった服だし、お城の人間ではなさそうだ。
(まあこんな事をする人間が城勤めをすることも無いだろうが)
どこから忍び込んだのだろうと思いつつ、僕は銀貨を籠の下に戻す。
「うん、じゃあもう一度ねっ」
そう言うと、女の子は茂みの陰に戻った。
何が起きてるかは判らないが、僕はもう一度銀貨に手を伸ばし……
ガ サ ッ !!
紐に引っ張られてつっかえ棒は外れ、支えを失った籠は僕の頭に落ちてきた。
284
名前:
ヘタレな魔王の物語3
[sage] 投稿日:2007/07/18(水) 18:07:19 ID:MyilARbv
「やったー! つーかまえたーっ!!」
大喜びで、さっきの女の子が飛び出してきた。
籠の編み目の隙間から、その子の方をもう一度見る。
顔の作りも身体つきも、普通よりちょっと小さい。
でも栗色の髪の毛をした、くりくりと大きな目をした可愛い女の子だ。
ぴょんぴょんと跳ね回るたびに、三つ編みにしたお下げが頭の横でひょこひょこ踊っていた。
「さあっ、捕まえたわよ。この泥棒め〜!」
「?」
「出して欲しかったら、盗んだ物を返しなさいっ」
「??」
話がいまいち繋がらない。
一つ、僕はこの娘からナニか盗んだ憶えは無い。
二つ、この籠から出ようと思えば、この娘に頼むまでも無い。
「ほいっ」
こうやって籠を退かせば十分だ。
「へ? 何で出れるのよ?」
何でといわれても、こんなので出れなくなるのは鳥さんぐらいだ。
「『籠を被せられたら、そこから出ちゃいけない』って事も知らないの?
もう一度被りなさいよ〜!」
(……初めて聞いたよ、そんな事)
でも僕が知らないだけで、ひょっとして世間ではそんな決まりやしきたりがあったりするんだろうか?
うん、なら試して見るべきだよね。
「えいっ」
僕は籠を目の前で騒いでいる女の子に被せた。
僕を収めるには小さかったけど、この娘はすっぽり入る。
「えっ? ……ええ〜っ? 何で私が被せられちゃったのぉ!?」
そんな事、僕に聞かれても困る。
そもそも何で僕に籠を被せようとしたのか知りたいよ。
「ちょっと、出られないじゃないのよ!」
「籠を持ち上げて隙間から出てくれば?」
「ばっ、バカな事を言わないでよ!? そんな事出来ないわよ!」
……やっぱりどうも話が通じない。
ここは一から相互の理解を探るべきだろう。
「えーっと、君の名前は? ここにはどこから入ってきたの?」
「私? 私はグレダよ。地上へはトンネルを掘って来たの」
トンネル?そんなのあったかなあ?
「歳は幾つ? ここは子供が入ってきていい場所じゃないんだよ」
「むう、子供呼ばわりしないでよ! 十年に一度生える『お化け茸』をもう三回は食べてるんだからっ」
えっ、信じられないがこのコは僕よりも大分年上なのか。
可愛らしい顔立ちや肌の艶、そして発育が悪そうな身体の所為でそうは見えないけど。
十年に一度しか生えない茸を三回食べてるという事は、少なくとも………… えーっと、計算できない。
自分で飼ってた羊よりも大きな数を数える必要がなかったから、僕は算数が苦手だ。
まあ年齢なんてどうでもいいか。
285
名前:
ヘタレな魔王の物語3
[sage] 投稿日:2007/07/18(水) 18:08:09 ID:MyilARbv
「ここに何しに来たの? さっき僕に盗んだ物を返しなさいって言ってたけど」
「そうっ、そうよ! そのために来たのよ。
アンタが持ってる指輪は私たち大地の小人が持つべきものなの」
「指輪?」
「その指輪は、今は亡きうちのおじーちゃんが河の精霊から魔法の黄金を盗み出したモノなのよ。
意地汚い神々に取られちゃったけど、正式な持主はおじーちゃんなの」
そこら辺の話は僕も昔話で知ってる。
いろんな持主の元を変遷した魔法の指輪は、最後は河の精霊の元に還されたのだ。
神様や巨人や英雄達も、結構えげつない真似するんだよなあ。
「……盗み出したという時点で、正式も何も無いと思うんだけど」
「うっ、それはえーっと、『運命は持つべき者の手にそれを与える』ってヤツよ!」
その伝で言うと、河の底で指輪を手に入れた僕が新しい正式な持主じゃあなかろうか?
こちらも『勝手に持ち出した』と言われても仕方ないのだが、
少なくともそれは河の精霊たちが主張するべき事であって、
この小人娘さんに言われる筋合いはない。
「かえせ〜、かえせ〜! ここから出せ〜!」
「指輪は還せないけど、籠から出る分には構わないってば」
「も〜、アンタ何にも知らないのね……
籠を被せられたら、出ちゃいけないって決まりが土小人にあるんだってば!」
なるほど、それで僕を閉じ込めて指輪を取り戻そうとした訳か。
話が大分判ってきたぞ。
つまり、籠に閉じ込めて僕に言う事を聞かせようとしてたんだ。
でも僕は小人族ではないので、籠を被せられても何の意味も無いけどね。
「卑怯者!ドロボー!バカー!変態!ろくでなし!不能!ドアホー!ミミズー!!」
思いっきり罵声を浴びせかけてくるグレダだけど、決まりに従って籠から出ようとはしない。
でもミミズって小人族にとって悪口なのか。
「はいはい、何とでも言ってくれよ。出して欲しい?」
「当たり前でしょ!」
「じゃあ、僕の言う事を何でも聞いてくれる?」
「へ?」
「さっき出して欲しければ指輪を寄越せっていってたでしょ。
そういう交換条件は成立するんだよね?」
「わわわ。ずるいわよ、そんなの!」
「ずるいも何も、最初にそっちから仕掛けてきたんじゃないか」
「うぐぐぐ…… どうすればいいのよ」
「僕の指輪のことを言いふらさない事、書いたり身振り手振りでも人に悟らせちゃ駄目だよ」
あんまり指輪のことが大っぴらになると、僕から奪い取ろうとする輩が出てくるからね。
「判ったわよ。誰にも言わなきゃいいんでしょ」
「約束だよ」
「くどいわよ! 人間や神と違って小人は嘘を付かないんだから」
286
名前:
ヘタレな魔王の物語3
[sage] 投稿日:2007/07/18(水) 18:09:10 ID:MyilARbv
このまま閉じ込めておいてもしょうがないので、僕は籠を持ち上げてグレダを出してやる。
「はいよ、もう僕に籠を被せようとしないでよね……」
その言葉が終わらないうちに、グレダは隙間からスルリと抜け出し、茂みの奥に消えしまった。
「やーい、バーカバーカ!抜け出しちゃえばこっちのモノよ!
絶対指輪は取り返すんだからっ。月の無い夜は背後に気をつけなさいよねー」
物騒な捨て台詞と共に、小人娘は居なくなってしまった。
茂みを掻き分けて見ると、底には大きな穴がぽっかりと開いていた。
どうやらここから地上に出てきたらしい。
「……」
あの娘の頭の程度では、ほっといても大した事なかったかもしれないけど、
誰かに背中を狙われるというのは気持ちのいいものじゃない。
僕は指輪の魔力を開放する。
『大地の霊よ。お前の胎の中に小人娘のグレダがいるのなら、彼女を吐き出しておくれ!』
呪文を唱え軽く地面を踏みしめると、穴から女の子が飛び出してきた。
「きゃわんっ!?」
確認するまでも無く、さっきのグレダだ。
飛び出た拍子に尻餅をついた彼女の襟首を捕まえる。
「あわわわわ……」
何が起こったのか、いまいち把握出来ていないようだ。
「で、月の無い夜は何だっけ?」
「ひええっ」
慌て怯えた様子で、グレダは僕の言葉に縮みあがる。
それを見て、僕の中で悪戯心がむらむらと沸き起こった。
この木立の中なら、誰かに覗かれる心配はなさそうだ。
「人を後ろから刺そうとするなんて、許せないな」
「あわわ、あれはうそ!うそウソ嘘です〜!」
「ん〜、大地の小人は人間と違ってウソを吐かないんじゃなかったかな?」
「ひゃわわぁ! あれも嘘です〜、ウソを吐く時はウソを言います〜!」
手足をジタバタさせる小人娘を、僕は地面に押し倒した。
(しかし、小さい身体だなあ。小さいから小人なんだろうけど)
「なっ、何をするつもり?」
「嘘つきの悪い小人を懲らしめるためのお仕置き」
「わわわ! そんな必要ありません!
私はすっかり改心いたしましたっ、もう指輪を狙ったりしませーんっ!」
「小人はときどきウソを吐くんだろ?
今度僕のモノを狙ったらどうなるか、身体に思い知らせてあげないとね」
287
名前:
ヘタレな魔王の物語3
[sage] 投稿日:2007/07/18(水) 18:09:59 ID:MyilARbv
出来るだけ悪そうな作り笑いを浮かべ、僕はそう宣言する。
実のところ、僕は悪そうな顔が下手だ。
『それじゃあ田舎の小悪党だってビビらないわよ? もっとあくどい顔をして』と
クローディアに指摘され、ショックを受けた事がある)
「うぎゃーっ、悪い人間に犯される! 殺される! 喰べられちゃうーーーっ!!」
でもグレダには十分通用してくれたようだ。
その反応が嬉しくなって、僕の調子も上がってくる。
「えーっと、『ぐへへっ。大人しくしてろよ、お嬢ちゃん』」
「あーれーっ」
んー、実に悪っぽいね。
こんなに悪っぽいのは久しぶりだ。
「えいっ……」
ちゅっ、
「む、ふむむむむぅー」
小人娘の小さな唇に、僕の唇が重なる。
うーん、柔らかい。
味わうように小人娘の口を堪能しながら、相手が大人しくなるまで唇を貪る。
(舌はまだ入れないけどね)
グレダは僕の身体を押しのけようと頑張ったけれど、体格の違いは如何ともしがたい。
圧し掛かった僕を重みに負け、腕に力を込めるのにも疲れたのか、とうとう抵抗が止んだ。
これ位なら大丈夫かなと思い、一寸だけ舌を挿れてみた。
「むに?」
噛まれるかと心配だったけど大丈夫みたいだ。
小さなグレダの頭を抱き締めるように引き寄せて、暫くの間彼女と深いキスを交わした。
「ふみぃ…………」
散々口の中を堪能した後で僕が顔を離しても、グレダはまだ放心状態だった。
「ひょっとして、初めてだった?」
「……ひょっとしなくても初めてなのよぅ」
うっすらと涙が浮かんだ瞳を見て、ちょっとだけ罪悪感が浮かぶ。
グレダの柔らかいほっぺに、僕はもう一度僕はキスをする。
「あんっ、駄目よっ、くすぐったいじゃないの」
可愛らしい声で抗議されたが、それを無視して僕は頬から首筋、鎖骨へとキスを続ける。
(………)
そんななか、僕はグレダの身体にとっても懐かしい感想を覚えた。
最初は何でだか判らなかったけど、唇を這わせるうちに次第にその理由が明らかになる。
「うーん、くんくん」
「なっ、何を嗅いでるのよ?」
(そうだ、この子の身体からは土の匂いがするんだ)
クローディアはお姫様だし、グロリア殿は王太后さまだ。
王様になって手を付けた女官たちもそこそこの身分の女の子で、みんな香水や脂粉の薫りがした。
こんな化粧っ気のない女の子は初めてだし、僕にとっては故郷の懐かしい思い出が胸に蘇ってきた。
「懐かしい匂いだなぁ。ふるさとの平原を思い出すよ」
僕は小人娘の真っ平な胸に頬擦りしながら郷愁にふける……
「ばっ、バカバカバカーっ! 平らで悪かったわね!! 他の種族は膨らみ過ぎなのよ!!」
怒られた。
288
名前:
フィリオとティラナ
[sage] 投稿日:2007/07/18(水) 18:12:01 ID:MyilARbv
最初はこれ以上するつもりは無かったんだけど、グレダの身体に色々しているうちに
下半身がかなりやる気を出してしまった。
『野外で』『無理矢理』『年端もいかない女の子(外見のみ)を』という状況が、
普段より興奮度を増しているのだろうか。
充血した僕のモノが、ズボンを押し上げて山を作っている。
「きゃわーっ!? 止めてぇー!!」
小さい腕で妨害されるのを振り払い、僕はグレダの服を解く。
ベルトを外し、ブーツと脚衣きを引っぺがすと、初々しい乙女の秘め所があらわになった。
「ひっ、ひやぅ……」
「大丈夫、優しくするから(多分)」
生娘の貝の様に閉じた裂け目に、いきなり僕のモノを入れるような真似はしない。
(そんな高等技術は僕には出来ないし)
まずぴったり合わさった外側の花びらを、なるべく優しく触ってみる。
触った瞬間、むずかるようにグレダが震えた。
皮を被ったままの突起から、お尻の谷間に至るまでを裂け目に沿って撫でていった。
約束どおり優しくしていくつもりなので、花蕊を強引に剥いて弄るのは止めておいた。
僕は何度か割れ目を往復して、その弾力の有る肉感を楽しんだ。
そして逃れようともがく彼女を押さえつけたまま、花弁を割ってその中へと指を侵入させる。
「あぁん」
(狭いなぁ……)
その小ささに僕はビックリすると同時に、心配になってしまう。
奥まで入れるのも苦労するほど、グレダのそこはきつかった。
僕のもそんなに立派な物ではないけど、これだけ狭いと大変そうだ。
けど、とりあえず今は指でアソコをほぐしてあげないと。
後から思えば、指か股をよく舐めて、少し濡らしておいた方が彼女の負担が軽くなっただろうと思う。
僕もまだまだ女体の扱いが下手だなあ。
ちょっと、いや大分反省しないと。
そうしてきつい膣道を指でかき回すうちに、少しずつそこが潤いを帯びてきた。
その頃には喚き疲れたのか、丁度グレダも大人しくなってきた。
(そろそろ良いかな?)
グレダの胎内から指を抜いて、僕は小人娘の細い足を開かせる。
彼女は脚を閉じようとしたけれど、何とか僕は股の間に身体を入り込ませた。
「いやぁん、それだけは駄目ーっ!!」
最後の力を振り絞ってか、この期に及んでグレダは暴れだした。
手で引っ掻き、脚で僕を撥ね退けようとする。
(お陰で僕の顔や手に、幾つも爪の跡がついてしまった)
必死の抵抗を受けながらも、僕は彼女の小さな裂け目にいきり立つ物を宛がい、
その中へと挿入しようと試みる。
「いぎ、痛いっ!痛い痛いーっ」
さらに大きな声でグレダは絶叫する。
身を割かれる激痛が彼女に襲い掛かっているのだから、その叫びも当然だ。
だけど、こっちだって負けずに痛い。
狭い肉の環の中に自分の肉体の一部を捻り込もうというのだから、
気持ち良さより締め付けられる痛みの方が強い位だ。
289
名前:
ヘタレな魔王の物語3
[sage] 投稿日:2007/07/18(水) 18:12:54 ID:MyilARbv
それでも、ここまで来て止めるわけにはいかない。
片手でグレダを押さえ込みながら、もう一方の手で狙いが逸れないように位置を定め、
少しずつその小さな隙間を押し広げていった。
「いーっ、痛いっ、痛すぎるってばっ!死ぬっ、痛すぎて死んじゃうよぉ!!」
「だっ、大丈夫だよ。えーっと…… 大きく息を吐いて、力を抜いて」
「そんな大きいの入るわけないわよぉ!
抜いてっ、抜いてちょうだいっ、抜きなさいよぉ!」
まだ先っぽしか入っていないのにこの痛がり様。
(やっぱサイズが合わないのかな)
と思った矢先、前進を阻んでいた抵抗が急に弱くなった。
(あっ?)
「ぴぎぃっ!!?」
大きく瞳を見開いて、グレダは奇妙な呻き声を上げた。
(破けたんだ……)
肉のきつさは変わらないけど、僕のモノがそれまでより深く入っていった。
「あうう……」
小さなグレダの身体は、あまり奥行きが深くなかった。
絞られるような痛さにも慣れてくると、少しだけ冷静さを取り戻す事ができた。
僕の身体の下でいたいけな女の子(に見える小人娘)が破瓜の痛みに涙を溢している。
思わず僕は『痛かった?大丈夫?』なんて馬鹿なことを口走りそうになってしまった。
言うまでもなく痛いし大丈夫じゃないに決まってるだろうに。
(うっ、お仕置きといってもやり過ぎかな)
今更ながら後悔にも似た苦い思いが沸き起こる。
こうして思い切りの悪い所が、僕の欠点なのだ。
「よいしょ、っと」
「ぁぅ……」
とりあえず、この行為に区切りをつけるため、僕は腰を進める。
最大の難関を破ってしまうと、少女の身体からは力が抜け、突き当たりまでなんとか貫けた。
一度筋道を通してしまえば、次からは簡単だ。
なるべく痛みを与えないようにゆっくりと戻し、そしてまた奥まで突き入れる。
「ああぁん!!」
僕が動くたびに、グレダの喉から叫び声が上がる。
いつの間にか、彼女の手は僕の服にしがみ付いていた。
痛みを堪えるため、何かに縋り付きたい一心なのだろう。
無茶な動かし方も出来ず、前に後ろに単調に腰を動かす僕。
そんな僕に圧し掛かられて、もはや抗うことも出来ずに終わるのを待っているグレダ。
「もっ、もう直ぐ終わるから。あとちょっとだけ我慢して……」
そう言って、僕は彼女の頭を軽く撫で、頬にキスをした。
気休めにもならない言葉だけど、もう直ぐ終わりそうだというのは本心だ。
グレダの中はきつ過ぎて、いくら優しく動かしているとはいえ
正直我慢が出来そうにないほどだったのだ。
290
名前:
ヘタレな魔王の物語3
[sage] 投稿日:2007/07/18(水) 18:13:44 ID:MyilARbv
「あうっ……」
「きゃっ!?」
何度彼女の中を往復したか判らないけど、繰り返して出し入れするうちに不意に僕の物から
迸るように体液が吐き出された。
どくどくと脈動する射精感が堪らずに心地よい。
「はぁ〜〜〜っ」
僕は思わずため息を漏らした。
そして脱力感のあまり、そのまま地面に倒れ伏したくなってしまい……
「ぷぐっ!?」
あっ、まずい!
危うくグレダを押し潰してしまうところだった……
「ごっご免! 大丈夫?」
「……大丈夫じゃなわけないでしょお!
乙女の純潔を無理矢理散らした挙句、終わったとたん押し殺そうとするなんて……」
非難の意志が篭った瞳で睨まれ、僕は思わずたじろいでしまう。
「えーっとその、何だ、押し潰そうと云う訳じゃなくって、その……」
「酷いーっ、地上の人間なんかに手篭めにされちゃったーっ!!
もう絶対お嫁にいけないわよぉ! ううん、それどころか地中の国に戻れなーい!! うわぁ〜ん!!」
えーっとえーっと……
どうしよう?
・・・・・・・・・
291
名前:
ヘタレな魔王の物語3
[sage] 投稿日:2007/07/18(水) 18:14:40 ID:MyilARbv
「メリー、メリー、メリーはとっても可愛いね〜」
藁と動物の匂いのする家畜小屋で、僕はメリーのおっぱいを搾った。
「ほれ、王様や。手が開いたらマキを運んでおくれ」
「はーい」
小屋の外からお婆さんの声がする。
ここは僕がメリーを預けている家だ。
ちゃんと王様だという事を打ち明けて、僕が居ない間メリーの世話を頼んだのだけど、
どうも僕の事を『王様を自称するほら吹き青年』としか見ていない節が有る。
(まあこんなに家畜の世話や薪割りが上手な王様なんて、ちょっと考えられないんだろうな)
メリーを預けた時に謝礼は渡してあるのだが、こうしてそれ以外にも色々使われている次第だ。
「それにしても王様や、メリーの世話をお願いされた時も金貨渡されてびっくりしたけど、
今度の子はどっから攫ってきたんだい?」
「攫ってきたなんて人聞きの悪い…… そこら辺はちょっと話しづらい事情があるんだよ」
「まあねえ、そりゃあんたが人攫いだなんて思ってはいないけどねえ」
そんな会話をしている間に、元気な声が響いてきた。
「お婆さ〜ん。繕い物終わったよ〜」
「あらあら、仕事の速いこと。じゃあそろそろ昼食の支度をしようかね」
「はーい」
「ふふふ、ちょっと変わってるけど、働き者のいい娘だね。
私もそろそろ針仕事がしんどくなってきたから、ありがたい事さ……
あんな良い娘に惚れられて、アンタも幸せモンだ」
「へっ?」
「ほほほ、婆の目はごまかせないよ?
あの子があんたを好いているってことはちゃーんと判るんだ」
……お婆さん、高齢の所為でかなり目が悪くなってきるんじゃ?
「どうせ親御に反対されて、駆け落ちかなんかしてきたんだろう。
いいねえ若いモンは」
「あのね、お婆さん。グレダと僕の関係はそんなものじゃなくって……」
「おやおや、この期に及んでまだあの子と懇ろになってないって言うのかい?」
「それは……」
「ほほほ、恥ずかしがらなくってもいいじゃないか。
そりゃちょっとあの子が幼すぎるけど、もう四五年もすればあの子も大人になるさ。
したらアンタとも釣り合いが取れた、いい夫婦になるってものだよ」
(……あの子は外見は子供ですが、実は僕よりはるかに年上なんですよ?)
292
名前:
ヘタレな魔王の物語3
[sage] 投稿日:2007/07/18(水) 18:16:07 ID:MyilARbv
本当のことを言ってしまいたい気もするが、どうせ信じてもらえまい。
「はあっ……」
僕は事の成り行きに思いを馳せつつ、軽いため息をついた。
あの時、怪しい銀貨に手を伸ばしたのがいけなかったのか。
それより挿れたのが拙かったのか。
いや、そもそも国に戻れないと泣くグレダを放って、やり逃げしてしまえば良かったのだろうか。
悪になりきれないのに、下手に情をかけるもんじゃないなぁ。
「ん?」
「……」
「はいはい、お前の事を忘れてたわけじゃないよ?」
放っておかれたメリーが不機嫌そうに僕を覗き込むので、白くて可愛いお尻を撫でてあげる。
そういえば、今回の件がクローデイアにバレたらどうなっちゃうんだろ?
結構やきもち焼きだからなぁ。
若干心配になってきたが、とりあえずその事は忘れておくことにする。
僕は再び歌い出す。
「メリー、メリー、メリーだけは僕の味方だよね〜……」
メ゙ ェ ーー
ちなみにメリーとは雌山羊の名前だ。
時々無性に乳搾りや毛刈りが懐かしくなるんだけど、
『国王が山羊の乳搾りなんてみっともない』とクローディアに叱られたので、
一人暮らしのお婆さんに飼ってもらっているのだった。
(終わり)
293
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/18(水) 22:15:26 ID:+oPyz5kD
GJ!であります。
どっちも素晴らしい文章ですな。
294
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/19(木) 11:39:15 ID:dOgxF7lD
素晴らしい!!
笑って和んで萌え萌えしたよ。
ヘタレ魔王も小人たんもヘタレすぎなんだぜ。
だが、それがいい……
しかし掛け算がまともに出来ないとか、相変わらず神を細部に宿してますな。
GJ!!!
295
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/19(木) 20:32:36 ID:f1mvASkM
おお!大好きなへたれ魔王来たGJ!
296
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/19(木) 21:48:22 ID:UJAPASWe
へたれ魔王GJです!
しかしクローディアさんの嫉妬は怖そうだなあwww
297
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/19(木) 23:13:14 ID:RBHL71vn
そろそろ来そうな圧縮。
回避のためにsageほしゅ。
298
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/20(金) 23:23:27 ID:X9MV7ycg
ほっしゅ
299
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/22(日) 03:12:22 ID:l5fb6RRm
神待ち
300
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/23(月) 02:08:55 ID:vFev3cE5
アビゲイル、突然途切れてしまって蛇の生殺し状態。
作者さんが書く気が無くなってるならしょうがないけど、
病気でもなっているのではないかと密かに心配している。
301
名前:
名無しさん@ピンキー
[age] 投稿日:2007/07/24(火) 19:12:35 ID:VGDeH8OV
下から十番目という微妙な位置なので浮上。
折角夏なんだから、職人諸氏には
「汗ばむ陽気のせいで甲冑姿の女戦士が匂いを気にして水浴び。
しかし、川辺の茂みにはその引き締まった肢体を覗く不埒な瞳が・・・」
とかいう作品を書いてもらいたいな。
302
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/24(火) 22:53:55 ID:fFoEtKzF
お約束だが、
そこまで出ているなら是非書いてくれ
303
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/25(水) 00:16:02 ID:FFIRqvFX
最近知って保管庫読みあさってハァハァしてきたんだが
アビゲイルの人の続き欲しいな…
あと騎士と生意気な魔法使いの人のが好きなんだが
この人ももう投下はないのかな…
304
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/25(水) 10:56:30 ID:mfQT90T1
>>300
>>303
悲観的レス、催促レスは程ほどにね。
305
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/25(水) 17:49:19 ID:lkEkOihQ
催促スレというか、リクエストは書き手さんの励みになるだろうけど
途中で放棄して、何ヶ月も音沙汰がない人のはそろそろ察してやれ、
とは確かに思うな
あの人は書き逃げなんてしない!きっと病気なんだと思いたいのかもしれんが
書きかけのまま放置というのはこの板にはよくあることだよ
306
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/25(水) 18:47:40 ID:WfuEx+Gj
そうそう。
お前らこの板初めてか。まとめて力抜けよ。
つかなんか最近○○から来ました!とか保管庫全部見ました!とか多いね。
はやってんのか?
307
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/25(水) 18:54:33 ID:fhkF5tal
305訂正
×催促スレ
○催促レス
308
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/25(水) 20:58:29 ID:M3bcDD+2
夏だから……かな。
309
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/25(水) 21:39:24 ID:mfQT90T1
"アビゲイル"で検索すればわかるが、昔からの人だろう。
ただ、それを待っているのはお前さんだけじゃないこと、
催促すれば続きが投下されるというわけではないことに
いい加減気付いてほしい。
310
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/27(金) 06:30:49 ID:4g7ALTZT
>306
ほらほら、若者は夏休み入った頃だから仕方ないんじゃない?
311
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/27(金) 09:09:55 ID:t8IrCMBc
書けなくなってFO状態の作品に「続きを待ってます」ってレスがつくことで
書けるようになる、とか結構あると思うけどな。それが数ヵ月経った作品ならなおさら。
まあその逆で、書こうとしてるとこに水さされちゃうこともよくあるんだが。
312
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/27(金) 10:20:55 ID:JL0jLkPV
しつこいな311w
313
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/27(金) 21:15:11 ID:z+SFzzbC
うざいならスルーすればヨシ!イラカリすんなよ
314
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/28(土) 14:56:17 ID:ea7DdVSB
カリカリするよりカリを……
しゃぶれよ
315
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/07/28(土) 23:40:02 ID:8nmGVIHZ
圧縮避け保守
316
名前:
名無しさん@そうだ選挙に行こう
[sage] 投稿日:2007/07/29(日) 01:26:01 ID:1fwVdNR6
俺はアリューシアもアビゲイルも待ってるよ。
神作品だし続きあるなら是非読みたいと思う。
勿論今リアルに投下してくれてるシリーズも首を長くして待ってるし、
新しい作品との出会いも待ってる。
317
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/01(水) 00:22:34 ID:/UXmKF6p
夢見つつ、ホッシュ
318
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 02:04:16 ID:zAM27VBh
>>301
を見て、この連日の暑さでは
確かに女兵士には水浴びをして欲しいものだと思いながら
書いたものを投下。
とりあえず前半を投下します。エロは後半。
319
名前:
水の神殿
[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 02:06:11 ID:zAM27VBh
太古、水の神の一族が住んだという神殿群は、回廊を縦横無尽に水路が
巡らされている。
不思議なことに、どの神殿も中央の塔からは廃墟となった今も枯れることなく豊富に
水が湧き出て、壁のいたるところを滝となって流れている。
流れ出た水は水路を伝い、中庭にある人工の泉に注ぎ込まれていた。
その泉に、たった一人で水浴びをする娘がいる。
「気持ちいい……」
フィアは背中の、丁寧に組まれた石のなだらかな傾斜に寄りかかり、
水に浸かったまま空を仰いで、うっとりと呟いた。
山頂の主神殿から切り立った崖を下り、チカル山の一番下の第五神殿に到着する頃には
灼熱の太陽がすっかりと頭上高くに昇っていた。
水面にせり出すように枝を伸ばす樹木は凶暴な日差しを遮り、良いぐあいに陰を作る。
木漏れ日がフィアの顔の上でちらちらと踊っている。
枝葉の隙間から見上げる空は何処までも青い。
泉には水の流れ込む水路はいくつもあるのに、流れ出す水路は一つも無い。
どんな不思議な力が働いているのだろうかと思うが、神殿兵士のフィアにも
太古の遺跡の仕組みはよく分からない。
第四神殿までは神の住む聖域だが、此処はもともと神に仕える人間達の神殿だったと聞く。
透き通った水をなみなみとたたえる、見るからに涼しげな泉に身を浸して、
フィアが炎熱による疲労を癒し、汚れた体を清めても、ここでなら許されるだろう。
もっとも、この廃墟に彼女を見咎める者など、今はもう誰も居ないのであるが。
水は刺すように冷たい。
しかし、焼き焦がされるような日差しに晒された体に篭った熱を冷ますには丁度よかった。
「………ふう」
こうして水の中をたゆたっていると、乾ききっていた細胞の一つ一つが
じんわり潤っていくのがわかるようである。
褐色の肌にまつわりついた長い黒髪を後ろに流し、咽を反らして息をはく。
すらりとのびた肢体は、清らかな水の中で存分に伸ばされている。
腕を掬い上げると、汗と埃が綺麗に流された滑らかな肌を水滴が伝い落ちた。
320
名前:
水の神殿
[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 02:08:26 ID:zAM27VBh
立ち上がり、一段深くなっている所めがけて水飛沫を上げて飛び込み、
魚のように潜水する。
魔物の住む森に囲まれた山中に建つ神殿群。
廃墟となった今は人はおろか、獣さえも魔獣を恐れて此処には脚を踏み入れない。
誰にも見られる心配は無い。
形の良い豊かな乳房や、丸みのあるくびれた腰を惜しげもなく白昼の元にさらし、
フィアは存分に水のなかで戯れた。
(辛い旅だったけれど、こうしているとその苦労が吹きとぶようね)
気の済むまで泳いだあと、フィアは岩に寄りかかりそう一人ごちた。
* * *
王都の神殿では、先日、先代の巫女が亡くなり、新しい巫女が後を引き継いだ。
神殿兵士のフィアはその巫女の番い(つがい)の相手となる水の神を
この遺跡に求めに来ていたのである。
言い伝えによると、水の神とは、或る竜の一族を指している。その竜は縄張り意識が強く
番いになった雌の住む土地を病魔や魔物、様々な厄災から守る習性があるという。
チユタ国では昔から、五穀豊穣をつかさどる大地の神の代理人である巫女が
この竜の番いの相手となり、国を守っていた。
巫女が世を去ると、その番いの竜も後を追うかのように姿を消してしまうので、
新しい巫女のためには、新たな竜が必要になる。
竜は病気や寿命で命が尽きかけると、この神殿の石の中に篭り、しばらく水に沈んだ後、
再び蘇るのだという。
竜が自分から人里に姿を見せることはまず無い。だから、チユタの民は竜を望んだ時は、
この太古の神殿に『竜の入った石』を拾いに来るのである。
新しい巫女の従姉妹にあたるフィアは、巫女の縁あるものとしてその大役を
神殿から仰せつかっていた。
321
名前:
水の神殿
[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 02:12:44 ID:zAM27VBh
* * *
いくつもの野山を越え、孤独と炎熱に耐えながらの苦しい旅の果てにたどり着いた
神殿の内部の光景は、実に不思議なものであった。
主神殿の奥の洞窟にはどこからか水が流れ込み、やはりどこか分からぬ所へ
流れ去っていく。
その常に流れのある水に浸り、いくつかの石の球体が静かに床に点在していた。
そのなかの一つが、今フィアの背負い袋の中に入っている。
フィアはちらりと泉の縁に置いた袋に目をやった。
いくつかあった石のなかの、一番目に付いたものを選んで持ってきたが、
それでよかったのだろうか。
竜が中に入っているのなら何か反応があるはずと思い、神殿で教わった呪文を
何度も唱えてみたが、予想に反して石は何の反応も示さなかった。
過去の遺跡や伝承に詳しい神官たちに見せるまでは確信がもてないのは、
なんとも不安なものである。
「…………一応、あれも綺麗に洗っておこう」
フィアは立ち上がり、袋を探り、中から石を取り出した。
片手に乗るくらいの大きさの石は、水面から出ていた部分にびっしり緑のコケが
生えている。
暗い洞窟内では仄かに青白く輝き、幻想的でさえあったが、こうしてじっくりと日の下で
見てみると完全な球であるという事をのぞけば、変哲の無いただの汚れた石だ。
「………………」
「─────お前、女だったんだな」
「きゃあっ?!」
突然石から低い声が聞こえ、フィアは驚きのあまりそれを取り落としそうになった。
「おい、気をつけろ。石が割れたらどうする」
「……………み、水の神?」
フィアはしっかりと石を掌に包み込み、恐る恐る問いかけた。
322
名前:
水の神殿
[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 02:15:18 ID:zAM27VBh
「ああ、お前たちはそう呼んでるな」
「…………口がきけるのね」
「当然だ」
「昨日私が呼びかけたときは、ちっとも反応が無かったわ」
「そりゃ、お前があんな格好をしていたからだ。
むさくるしいマントとフードで顔と体型すっぽり隠して、
てっきり野郎が来たんだと思ってた。
今みたいな格好で呼びかけられてたら、昨日の段階で応えてやってたぞ」
裸を晒していることを指摘された形となり、フィアは体を隠すように、だぶん、と
水の中にしゃがみこんだ
「今更何を恥らう。良い目の保養をさせてもらった。
………ふむ。こうやって真上から眺めるのも悪くないな。
押しつぶされた胸の谷間のむっちり感がなんともいえん」
しゃがみこみ片手で胸を押さえ、できる限り自分の体から離そうと、石を持った手を
頭上にあげていたフィアの顔が沸騰したように赤くなった。
「くうぅ〜〜」
怒りのままに渾身の力を込めて投げ捨ててしまいたいのを何とかこらえ、
フィアは石の視界を遮るように両手ですっぽりと包み込んだまま、袋を引き寄せた。
「なんだ。ヌードショーはもうおしまいか?」
「ヘンな事いわないで!」
柳眉を逆立て、フィアは石を袋の中に放り込んだ。
「まあ、待て。少し落ち着け。周りを見てみろ。気が付かないのか」
「えっ……」
何を、と言おうとした次の瞬間、フィアはすっと表情を引き締めた。
石柱の影、茂みの中、そして、泉の底にも。
いたるところにこちらを窺う異様な気配があった。
フィアは袋の横に置いてあった剣に素早く手を伸ばした。
(獣か魔物か、どちらかは分からないが、狙いは私……)
323
名前:
水の神殿
[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 02:17:08 ID:zAM27VBh
山に入る前に、呪術師に魔よけの文様を体に入れてもらってある。
今まではそれが効いていたはずであった。
何故急に魔よけが効かなくなってしまったのだろう。
「ここを流れる水はすべて聖なる水だ。何でも洗い流されて、清められてしまうんだ。
魔よけの文様も然り」
彼の言うとおり、汗や水では消えることの無い文様が手足からきれいさっぱり消えている。
おそらくは背中に付けてあった文様も流されてしまっているであろう。
迂闊だった。ただの水だと思っていたのに。
「こいつらお前を食う気らしいぞ。どうする」
「どうするも何も、片付けるしかないじゃない」
フィアは鋭い目付きで辺りを窺った。
一糸纏わぬ姿で(しかもこんな助平そうな奴に見られながら)魔獣退治など出来るだけ
避けたいことだが、そうも言っていられない。
フィアは闘志をむき出しにして、剣を構えた。
引き締まった小麦色の裸体に水の珠が伝い、ぽたぽたと雫が水面にこぼれ落ちていく。
「おい、神殿の中で流血沙汰は勘弁してくれ。こんなやつら俺が追っ払ってやる。
石から出るから、力を貸せ」
「えっ」
「え、じゃないだろ。俺をなんだと思っている。どうせ魔よけにするつもりなんだろ。
ヌードショーの礼に、いっぺん実力を見せてやろう」
「…………なんだか少し納得できない部分もあるけど、わかった」
フィアは周囲に隙を見せずに、袋から再び石を取り出した。
「よし、今から教えてやるから、俺の名を呼ぶんだ。
充分な眠りの後に、聖なる乙女の呼びかけがあれば俺は石から生まれ出ることが出来る」
「聖なる乙女?私は巫女じゃないわよ」
獲物をしとめようと、異形の獣達がじりじりと近づいてきている。
それを気にしながら片手に剣、片手に石を持ちフィアは答えた。
「処女のことだ、処女」
「処女でもない」
「え──────────────────」
「何その落胆ぶりは。で、どうするの?やはり私が倒そうか?」
324
名前:
水の神殿
[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 02:19:40 ID:zAM27VBh
「…………………じゃあ、女だ、女」
「結局なんでも良いってわけね」
「むむ………いいか、こう呼ぶんだ。
レルモス・レルモフィリア・シム・ラウル・リカーテ」
「レルモス・レルモフィリア・シム、えっと?…」
「ラウル・リカーテ」
「ラウル・リカーテ!」
フィアがそう呼んだ瞬間、轟音と共に水面から一斉に勢い良く水柱が上がった。
水は人ならざる力によって空高く突き上げられ、うねり、碧空を覆い、
絶え間なく地に降り注ぐ。
白い水の飛沫が、水煙となって辺り一帯に舞い上がる。
スコールのように落ちる大粒の水が激しく全身を叩き、フィアは堪えきれず
目を瞑った。
息も出来ないほどの凄まじい水流が、怒涛のようにフィアの周りで渦巻き、荒れ狂う。
激流に脚を取られ、よろめいたフィアの腕を何者かが力強く掴んだ。
* * *
水の勢いが徐々に弱まってきた。
フィアが目を開けると、目の前には彼女の腕を掴む若い男が立っている。
視線が会うと、男はにやりと口の端を吊り上げた。
「…………」
空に打ち上げられた水の残片が雨のように降り注ぐなか、フィアは目を眇めた。
「…………あなたが?」
「そうだ」
初めて水の神と対面したフィアは、目の前に立つ逞しい風貌の若者を呆然と眺めた。
(これが水の神……)
325
名前:
水の神殿
[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 02:22:59 ID:zAM27VBh
驚きのあまり、言葉も出ない。
竜、と言うから、鱗を持った4本足の獣を想像していたのに……人間と変わらないでは
ないか。
たしかに、灰色とも違う暗い銀色の髪はチユタの民には見慣れぬものであった。
だが、力強いまなざしが印象的な風格の漂う顔も、隆々たる筋肉のつく均整のとれた体も、
まさしく若い人間の──青年のそれだ。
青年の……当然のことなのだが、彼は何も身につけていない。
フィアが目のやり場に困って、顔をそむけながら後ずさろうとすると、ぐいと強い力で
体を引かれた。
「きゃあっ!」
大きな水音をたててフィアはその場に倒れこんだ。
はっと我に返った時には、息のかかりそうなほど近くに美しい男の顔がある。
その髪の先から、ぽたぽたと水の珠が零れ、フィアの頬にかかった。
自分の上に覆いかぶさるように男がいる、という事を理解するのに時間はかからなかった。
「ちょっと、なにをするの!」
「ああ?」
「私を襲ってどうするの!あなたが襲うのはあっちでしょ!」
「さっきの魔獣か?よく見てみろ。もうそんなのは何処にもいないぞ」
「えっ」
「あんな雑魚どもなら、俺が姿を見せただけで恐れをなしてどこかに消える。安心しろ」
「………」
すばやく男の体の隙間から周囲を窺うと、確かに、先程までの飢えた獣の禍々しい気配は
すっかり無くなっていた。
フィアは信じられない、と言った面持ちで男を見あげた。
男はその端整な顔にニヤニヤとした笑みを浮かべている。
「………なぁ」
男がへんな猫なで声を出した。
「お前の身を守ってやったぞ。我が番いの相手よ。これからここで、自己紹介がてら
じっくりと互いを知り合うことにしようじゃないか」
326
名前:
水の神殿
[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 02:25:02 ID:zAM27VBh
「つがい……」
ただならぬ男の気配を察し、フィアは震え上がり、慌ててかぶりを振った。
「違うわ。私はあなたの番いの相手じゃない。あなたの相手は王都の神殿にいるの。
今から連れて行ってあげるから、勘違いしないで」
「それまで大人しく待てというのか。無理だな」
そう言いながら、股間の硬いものが恥ずかしげも無くフィアの脚に擦り付けられる。
「もうお前でいい」
馴れ馴れしい仕草で、男はフィアの頬に手をのばしていった。
{つづく}
327
名前:
水の神殿
[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 02:26:16 ID:zAM27VBh
後半へ続く。
世間が夏休みの間には投下する予定。
ほかの職人様、どうかこちらを気にせずに投下なさってください。
328
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 07:41:37 ID:pi3OUlcb
職人様キテタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
竜のわがままっぷりに噴いたw
しかし番になっちゃったら、フィアが巫女になっちまうのか?
なんにせよwktkしつつ続きを全裸で待ってます
329
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 10:52:17 ID:wdYTvaiZ
すげえ萌えたw
特に落胆シーンw
って続きが、夏休み中…っ!
ヘタすると後ひと月近く!?
そ、そんな待てないよ!
330
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 19:47:32 ID:75iatcCc
イイヨイイヨー(・∀・)
331
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 21:43:40 ID:1+5pIJaJ
文章もうまいし、構成もうまい!
楽しみにしてるよー。
332
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 23:22:49 ID:wXCfXoQW
ktkr!!!!
もっともっとキボン!
333
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/03(金) 02:08:33 ID:oBnL1cYe
禿しく萌えたw神ありがとう!
竜面白いよ竜www
続きwktk!
334
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/03(金) 20:57:30 ID:KYa6Xuhl
激しくGJ!
続きお待ちしてます
335
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/05(日) 00:43:26 ID:eeuhhzUV
GJ!気の強い神殿兵士もエロ神もいいよ。
ところでこのスレの住人に聞きたいのだが、
何か女兵士モノでオススメの小説、漫画はないだろうか?
この際エロ無しでもいいから萌えるやつを頼む。
336
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/05(日) 01:15:59 ID:icZa+yJY
「ばいばい、アース」はどうだろう?
作者はうぶかたとう(変換できねえ)
ラノベっぽい萌えではないけど
337
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/08(水) 09:35:16 ID:4ghW0Rli
>女兵士モノでオススメの小説、漫画
脇役では無くてはならないものだけど、それが主役のものって少ないのかね
自分も良いものがあれば、知りたいんだけど
ファンタジー世界の女兵士、では無いのかもしれないけど
自分は未来少年コナンに出てたモンスリーという女船長が好きだ
行動的で、凛々しくて、時々ちらりと少女っぽい一面もあって
子供心に萌え萌えした
思えばあれが自分の女兵士萌えの第一歩かもしれん
338
名前:
名無しさん@ピンキー
[期待あげ] 投稿日:2007/08/08(水) 14:42:43 ID:rXz2q2hi
期待あげ
339
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/08(水) 15:48:53 ID:zlEIgcU1
>>337
ダイス船長とのからみでは古典的なツンデレでもあった
あの「バカねえ」というセリフがたまらん
340
名前:
名無しさん@ピンキー
[] 投稿日:2007/08/08(水) 16:21:25 ID:AJEpHB8C
デルフィニア戦記おすすめ。
341
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 00:21:04 ID:o7R0Flzb
神よ・・・カモン!
342
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/12(日) 21:16:14 ID:3Hq68oOs
ほしゅほしゅ
343
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/12(日) 23:02:19 ID:w7J9vmla
萌えるのは田中芳樹のアルスラーン戦記かな。
タイプの違う強い女性がいろいろ出てくるので楽しめると思う。
第二部からgdgdになるので、第一部だけ読むと吉。
344
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/12(日) 23:59:08 ID:9iIg6K3a
ファンタジー世界の女兵士とは少し違うかもしれないけど竹宮恵子のファラオの墓に出てくるアウラ姫は結構好きだな
登場するのは物語中盤以降だけど
345
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 07:54:13 ID:cKUDSS7w
>343
エロスラーンですか?
偶然ですが中世ペルシャを舞台にして構想を練ってまして、
現在王書と七王妃物語を読んで勉強をしてるところです。
ただ、魔王の話が進まないうちに別の話を平行して始めるのもどうかと思うので
あちらが一区切りするまでお待ち下さい。
346
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 10:51:53 ID:ySKJAtiS
停滞してるみたいなんで案だけ書き込ませてもらうけど、このスレ的には銃兵隊の話もOK?
自動小銃だのリボルバーだのの近代連発銃じゃなく、マスケット銃なんかの先込単発銃を扱う話。
歩兵、騎兵、砲兵の三兵撰述の世界観ぐらいとか。
剣と魔法の……ってテンプレにあるからダメかな?
347
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 14:23:03 ID:4mbj6eG4
銃の登場する県と魔法の話ってラノベに結構あるから(オーフェンとかゼロ魔とか)
ありじゃないかな。
348
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 00:53:46 ID:VwoUpH3Y
個人的にはベルばらくらいの時代までならOK。
女海賊だと大砲使うだろうし。
ちなみに仮想戦記でエロパロってスレもあるよ。
349
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 01:02:08 ID:Pq0A5YcT
三銃士の時代ならわりとイメージわきやすい人も多いのでは?
あれに魔法が入ったと思えば。
350
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 06:54:52 ID:CG7W9NQF
>>345
に驚きの単語があって感動している
あなたの文章は大好きなので自分個人としては好きに書いてもらいたいと思っている
351
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 14:21:32 ID:A22KvvqS
アビゲイル放置申し訳ないm(−_−;)m
もう書きあがってたので、すっかり忘れておりました・・・
ちょろりっと投下しまする
352
名前:
邂逅X1/4
[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 14:22:13 ID:A22KvvqS
タイロンは丁寧にアビゲイルの陰部を辿り、その造形を確かめる。
アビゲイルの喘ぎ声は高さを変えて、タイロンの耳を喜ばせた。
両足を閉じたせまい状態で股間を弄るのがまどろっこしくなり、左手でアビゲイルの左膝の裏を高々と抱え上げた。
やわらかい彼女の股関節は軽々と開脚し、身体の中心が露になる。
アビゲイルの身体の中心は濡れ光っていた。
下草は髪よりやや暗いとはいえ色素の薄い栗色であるので、花弁を隠すことなく縁取っている。
花弁はタイロンが与え続けた刺激で充血し、赤く膨らむ。
中心の核は完全に姿を現し、南海で取れる真珠のような輝きを見せた。
そして、その最奥はとめどなく湧く泉と化していた。
353
名前:
邂逅X2/4
[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 14:22:58 ID:A22KvvqS
鏡に映ったその光景にタイロンは時を忘れた。手が完全に止まっていることも意識していない。
朦朧としていたアビゲイルがタイロンを伺い見て、その視線を追い、鏡にさらされた自分に気が付く。
「ぃやあぁ・・・」
アビゲイルは痺れているように儘ならない肢体をそれでも必死に動かして、本来外気にさらされるべきでない女の部分を隠そうと悶えた。
タイロンも我にかえり押さえにかかる。
抵抗むなしく、前よりも身体を開かされ、おまけに足を抱え込んだ左手に右胸を弄ばれるような体勢を取らされて、アビゲイルは唇をかみ、天を仰ぐしかない。
「だめだ、アビゲイル。ちゃんと鏡をみて。」
ありありと情欲を湛える自分を認めたくなかった。弱弱しく首をふる。
「じっと おとなしくして」
「ちゃんと おれが することを みるんだ」
アビゲイルは、普段より低く抑えられたタイロンの声に抵抗できない。
視線は誘導されるように鏡に、自分の秘部に向けられる。
354
名前:
邂逅X3/4
[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 14:24:02 ID:A22KvvqS
タイロンはわざとゆっくりと右手で中心核にふれ、円を描くように刺激をはじめた。
「ぁぁ」止め処なく口の端から艶かしい声が漏れる。「・・・ぅん」
身体の隅々が熱い。特にタイロンの指が触れる場所は燃え上がるようだ。
つつ、と中指が奥の泉へ移動していった。
入口を数回なぞると、泉は決壊して零れ落ちたものが右足を伝い落ち始める。「あぁ・・・」
「すごいな」感嘆するタイロンの声は耳に入らなかった。
タイロンの中指が胎内へ埋め込まれるさまを、アビゲイルは自分の目でみた。
熱い異物感を感じる。
腰のあたりから眉間にむけて震えのような快感が駆け抜けていった
視覚と触覚ともたらされる快楽にタイムラグが生じているようで、自分が正気を保っているのか自信がない。
「こ、わ・・・い」
「アビゲイル、何が?」応えるタイロンも余裕などないのだが。
アビゲイルは気が付かないが、額の天眼は全開である。
両手はアビゲイルを愛でることに忙しく、開眼するままになっている。
従って、タイロンの男根も着物の中で硬く熱く勃起しており、快楽を通り過ぎ痛い、という状態である。
355
名前:
邂逅X4/4
[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 14:25:12 ID:A22KvvqS
「なにが、こわい?俺か?」
「・・・わから、な、いぃっ・・くぅ」
いつのまにか差し込まれる指の本数が増えている。既に熱いのはタイロンの指なのか自分の体なのか判別がつかなくなっていた。
二本に増えた指を胎内へ吸い込むように入口が蠢くことを自覚した。
指が出し入れされるたび、露が伝い落ち、とうとうその先端が踵から床の絨毯に到達したのが見えた。
爪先から細かい漣のような快楽が徐々に大きなうねりに変化しながら露のつけた道をせり上がる。
「あびげいる おまえを まっていた」
快楽が爆発した刹那、鏡に写りこむタイロンの額に金の真円を認めて、アビゲイルは混乱のまま意識を手放した。
356
名前:
邂逅X
[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 14:26:29 ID:A22KvvqS
つづきはまた〜
暑気払い。
357
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 14:38:53 ID:7vcMTTi+
おお、私達もアビゲイル待っていたよ。
358
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 15:49:55 ID:XLImWkYp
アビゲイルキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!キタタキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
このときをぜんらでせいざしてまっていました。GJ!
359
名前:
邂逅Y 1
[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 20:05:29 ID:A22KvvqS
ぐったりとしたアビゲイルを広い寝台に横たえる。
アビゲイルの呼吸を確かめ、乱れた額の髪を撫でながら、タイロンはいとおしげに溜息をついた。
「・・・説明しがたいよなぁ」
鏡を振返り、金の天眼と大きく勃起したままの男根を認め、また一つ溜息。
「とりあえず一つ仕事を終わらせようか」立ち上がり、鏡へ歩み寄る。
タイロンは躊躇なく枠に手をかけ、仕掛け扉をひらいた。
・・・鏡の裏から赤銅色の髪と髯をもつ、かつての偉丈夫が転がり出る。
着物の前をみっともなく開き、股間から髪と同じように赤銅色に変色し、はちきれんばかりに大きくなった股間を露出させたままだ。
「汚いなぁ・・・」
360
名前:
邂逅Y 2/6
[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 20:06:20 ID:A22KvvqS
姿見は、裏から透けて見える細工がしてあり、裏にはこの偉丈夫の男根が吐瀉したと思われる、白い残滓が床にたれていた。
「・・・覗き見のうえ、自慰ですか」溜息まじりにつぶやく。
「しかもアビゲイルにかけた言霊に縛られて身動きがとれないなんて、少々情けなくおもいませんか。」
痛烈なタイロンの言葉に男が赤面しつつも反応した。「お前は・・・何だ?」
「お初にお目にかかります、大叔父殿」
儀礼にのっとり、完璧な立礼を施す。「トトクが3子ツバイ・イエ、王命を拝し北城にまかりこしまして」
驚愕に、かつては赤鬼と呼ばれ、いまは見る影もなく醜く肥え、老いた男の目が見開かれる。「・・・まさか」
「父と同じ金の真円眼では納得いただけませんかね。」
タイロンは顔をしかめつつ、へたり込んでいる男の着物を調えてやった。
「最近のご城主の仕事振りに対して、父がひどく怒っておりまして・・・」
クンツ・イエの男根は着物に隠れてもなお、自己主張をする。
「手を抜きすぎですよ、ご城主。北と東北東を結ぶ結界はがたがたでした。」
タイロンの表情は心底残念そうにみえる。が、額の天眼は怒りを映しクンツを睨みつけていた。
「国主が異国のものに国土を犯されていることに気付かないとでも?」
クンツは弁明することもできないようだ。額に汗が玉を結び、全身に鳥肌を浮かべて震える。
361
名前:
邂逅Y 3/6
[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 20:07:18 ID:A22KvvqS
「・・・王都にお戻りください。」
任を解く、といわれてクンツが慌てて立ち上がろうともがくが、儘ならなかった。
無様に尻をついたまま、呻く。「しかし、この地の守り石はどうなる・・・石がいなければ結界は・・・」
王の息子は屈託のない笑顔を前城主にむける。
「引継ぎし宝玉が到着するまで、私の天眼がこの地を鎮護いたしましょう。多少バランスが悪いですが。」
クンツ前城主はがっくりと、首を垂れた。
「王都へのご帰還、快く承知していただき、ありがとうございます。」丁重な声が、最期通告となった。
362
名前:
邂逅Y 4/6
[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 20:08:12 ID:A22KvvqS
「不服で ある」
363
名前:
邂逅Y 5/6
[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 20:09:13 ID:A22KvvqS
その声は玲瓏と響いた。むろんクンツの声ではない。
「我には 納得が いかぬ」
声はタイロン・ツバイ・イエの真後ろから発せられた。
タイロンは咄嗟に体をかわし、クンツの後ろに回りこんだ。
暗い室内に浮かび上がったのは・・・一糸まとわぬアビゲイル、だった。
「2人とも 久方ぶりである」
艶然と微笑む佇まいはアビゲイルのものではない。
「・・・母なる大地よ」
「・・・わが女神」
同時に漏れたつぶやきは、両方ともかすれており、2人の王族のどちらが発したか、判別できなかった。
364
名前:
邂逅Y 6/6
[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 20:10:04 ID:A22KvvqS
2人が注視するなか、アビゲイルの形をした女は優雅に歩みを進める。
ゆっくりと確実にクンツ・イエの正面に移動した。
「我は そちを 慈しんだというのに」左手でクンツの顎をつまみ、上を向かせた。
「交わした 約定を たがえ」右手がクンツの額に開く赤銅を撫でた。
「我を よそものが 犯すに まかせるなど」クンツに恐怖の表情が浮かぶ。
なんの抵抗もなく右の指が額に吸いこまれる。「許すことなど できぬ」
「おおおおおおおお」激痛にクンツの口からはとめどなく、呻き声と泡が流れ出す。
女の指は赤銅色の眼球をつまみ、引き抜いた。「すぐ 死に 至ることは ないわ」
わざと天眼をクンツの眼前にかざす。それはみるみる結晶し、美しい楕円の宝玉に変じた。
「史書には 病死と 記される だろうよ」
クンツは昏倒した。
365
名前:
邂逅Y
[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 20:11:32 ID:A22KvvqS
きょうはおしまいで〜
本当に放置申し訳ありません;
366
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 22:45:40 ID:2/ORSmSg
ちょ!神!全裸どころか骨でお待ちしてました!
続きが!続きが!
GJすぎます
367
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/15(水) 14:24:10 ID:Ec+bl0pH
書きあがったってどこまでなんだろうか。
しかしGJです。アビゲイル続き全裸でお待ちしてます
368
名前:
邂逅Z
[sage] 投稿日:2007/08/15(水) 22:46:17 ID:a71q5FjC
本日の分でござる。
369
名前:
邂逅Z1/5
[sage] 投稿日:2007/08/15(水) 22:47:59 ID:a71q5FjC
本来、神と人は完全に存在する次元がちがう。
天眼を持つ者のみが、神と呼ばれる存在と対話する能力を持っていた。
供物を差し出すかわりに安寧を。
侵入者から国土を守るかわりに豊饒を。
人と神との間に、保守と豊饒を約束する基本的な契約関係が出来上がったのは遠い昔のことだ。
神と対話できる一部の者が、特権階級となるのは自然なことだ。
人と神との接触は、一種のトランス状態で得られる。
王の始祖達は手っ取り早い方法を発見した。
誰にでも訪れる忘我の境地・・・有態にいえば、依代との性行為である。
神の依代として無垢なるもの、それはたとえば童貞であったり、処女であったりするのであるが、を得るため神婚というシステムが長い時間をかけて発達し、定着した。
大いなる存在は気まぐれであり、出会うことすら稀であり、接触があるからといって、毎回契約が交わされるわけではない。
一生なんの契約もない王族も存在するのだ。
むろん一般の民は知らない理である。
370
名前:
邂逅Z2/5
[sage] 投稿日:2007/08/15(水) 22:48:52 ID:a71q5FjC
タイロン・ツバイ自身は初体験のおり、父王の耳目となり王都に生じた不具合を正すという契約を神と交わし、天眼を閉じても言霊を結ぶことのできる力を神から与えられた。
その後3年ほどは神婚に女神が降臨することもなく、契約の履行に励みつつ、大過なくすごす。
王都での役目と生活、義務として行われる性行為に倦怠を覚えた頃、久々に彼を性行為に没頭させた処女が現れた。
神婚の相手とは二度と会うことはないことは知っていたものの、タイロン・ツバイは執着を感じた。
その交歓の末期に女神と2度目の邂逅を果たしたのだ。
地母神はあきらかに王の子の執着をおもしろがっており、乙女の素性を餌に契約更新をもちかけたのだ。
王の子は国土の隅々まで愛撫することを女神に誓わされ、かわりに乙女を得た、筈であった。
性行為の終末、絶頂を迎えたタイロンは無意識に言霊をつむぎ、相手の女に呪をかけて縛ろうとした。
紡いだ言葉は「わがものとなれ」であったが、驚いたことに返しをうけた。
「そのまなこにのみわがみをゆるす」・・・言葉面のみ追えば求愛と返事だ。
しかし儀式の終了後、タイロン・ツバイは新婚時以外他の女に興味を示すことができない上、天眼者であることを隠しての生活をしているので、当のアビゲイルには正体を明かすわけにいかず、悶々と過ごすことになった。
縛った言葉以上に自分が縛りとらわれた、典型的倍返し。
ちなみに、呪と呪返のやりとりに地母神のいたずら心が動いたものとタイロンは信じている。
371
名前:
邂逅Z3/5
[sage] 投稿日:2007/08/15(水) 22:50:02 ID:a71q5FjC
「さて 吾子よ」
アビゲイルの姿をした高次の者は、アビゲイルが浮かべたことのないなまめかしい笑みを嫣然と浮べ、タイロンを手招きする。
タイロンには抗う術もない。吸い寄せられるように、足元に膝を折った。
その顎を前城主にしたのと同じように左手でつまみあげ、顔を正面から見て目を細めた。
「ずいぶんと 逞しく なったものだ」
ほほほ、と満足げに笑う。
両手で男のの頬を固定し、まず額の天眼に唇を落とした。
ぴしり、と楔のようにタイロン・ツバイに快感が打ち込まれる。
「そちは よく働いてくれる」小指がからかうように耳たぶを弄る。
触られているところからじわりと快楽が広がり、タイロンの眉間に皺が浮かぶ。
「この娘は 意外と 役に立つ」女神がにんまりと笑う。
「卑怯・・・」抗議のために開いたタイロン・ツバイの口に、女神の唇が重なった。
372
名前:
邂逅Z4/5
[sage] 投稿日:2007/08/15(水) 22:54:21 ID:a71q5FjC
ちゅ、ちゅと水気がたっぷりとつまった音が室内に響き渡っていた。
女のくちびるは貪欲で、男の咥内を蹂躙し、舌を吸い出し、唇を弄ぶことに飽きなかった。
タイロン・ツバイは口付けを中心にあふれる快楽でからめとられ、身動きが取れなくなっていた。
快楽のもたらす欲情に理性を押し流されまいと、やっと開放された唇をかみ締める。
その様子を見て、ほほほと女が艶やかに笑った。
「人とは 知恵がある分 少々 面倒な いきものよ」
するり、と右手を動かしタイロン・ツバイの股間を着物のうえから一撫でする。
ぴくり、とタイロン・ツバイの腰がはねる。
「身体は 素直であるが」
ほほほ、と高らかに笑うアビゲイルの姿に、タイロン・ツバイは眩暈を覚えた。
373
名前:
邂逅Z5/5
[sage] 投稿日:2007/08/15(水) 22:55:13 ID:a71q5FjC
よろける男の身体を支え、立たせる。男と女の顔の位置関係が変わった。
「我は 交わりが 好きだ」
上目使いで挑むような表情は本来、アビゲルがよくタイロン・ツバイに見せる。
いきいきと動く大きな目が印象に残り、アビゲイルを美しく見せる表情だと思っていた。
その顔が目線を絡めたまま、上唇をゆっくりと舐める。
欲情を隠さない表情のアビゲイルの顔も、気が遠くなるほど淫蕩で、やはり美しい。
ふいに目の前にあった顔が消え、爆発的な快楽がタイロン・ツバイの股間に生まれた。
両膝をついたアビゲイルの手のなかに、タイロン・ツバイの男根が囚われている。
硬目の布越しに女の手に包み込まれているだけで、彼方から射精感がやってくるのを、懸命に耐える。
女神は遠慮なくタイロン・ツバイの着物を引き摺り下ろし、躊躇いなく股間に顔を寄せた。
「生きとし 生けるモノはみな 交わり 生みだし 増え 満ちる ものだ」
374
名前:
邂逅Zおしまい
[sage] 投稿日:2007/08/15(水) 22:59:39 ID:a71q5FjC
人大杉でどうしようかと・・・
ちゃんと貼れてほっとしました。
お話は「邂逅」が書き終わってます。
375
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/15(水) 23:34:59 ID:iOgH7hqI
構成もエロも素晴らしかったです。
書いてくれて本当にありがとう。
続きも待ってます。
376
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 05:04:45 ID:abGm4yNk
生きててよかった気がします
早く続きを…
377
名前:
邂逅[
[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 21:13:03 ID:W4SUAeFa
こんばんわー
本日の分でござる。
378
名前:
邂逅[1/4
[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 21:14:14 ID:W4SUAeFa
ぬるり、とした感触が男根の先にきた。
ちゅちゅ、とわざと音を立てながら、タイロン・ツバイの先端から滲み出たものを口先だけで女が吸取る。
男根がぴくぴくと痙攣し硬度を増す様子を、楽しげに眺めたあと、おもむろに女は先端を口に含んだ。
丹念に舌で口の中の物を確かめていく。硬く尖らせた舌先を筒先にねじ込み、吸い上げる。
幹に添えた手がゆっくりと上下し、快楽に加速度をつける。
あいた左手も下草を弄ったり、男根から続く袋を撫で摩り、じっとしていることがない。
与えられる刺激に耐えられず、タイロン・ツバイは女の栗色の髪に指を絡めて自分の身体を支えた。
快楽のさなか、娼婦のような真似はやめてくれと思う反面、その先の快楽を求める自分を感じる。
蛇が大きな鳥の卵を呑むように、自分の男根がアビゲイルの口にのみこまれていく光景を、タイロン・ツバイは見ているしかなかった。
いいように弄ばれている羞恥、恋焦がれていた女への執着・・・狂おしい欲情の渦の中、自分の男根を咥える女と目があう。
潤んだ瞳が、口元から伝う唾液が、絡みつく舌先が、情欲の出口へタイロン・ツバイを追い込んだ。
379
名前:
邂逅[2/4
[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 21:15:01 ID:W4SUAeFa
南海の大波のように、尽きることなく射精感があった。
アビゲイルの細い喉がこくり、こくりと動き、自分が施寫したものを嚥下するのがはっきりと見える。
やがて、女の口からゆっくりと男根が引き出された。勃起は収まっていない。
男根と口が離れた瞬間、もう一度痙攣し、残滓がアビゲイルの顔に散った。
口元のそれを舐め取りながら見上げる女の方が、絶頂にたどりつき立ち尽くす男より満足げに見えるのは気のせいか。
「先の そちの 行いを 真似て みた」
ぺろり、と上唇を舌でぬぐった。美しいが人の悪い笑顔が浮かぶ。
「羞恥は 快楽を 煽るであろう?」
くすくすと笑う吐息にタイロンは眩暈を覚え、耐え切れず、膝を折る。
380
名前:
邂逅[3/4
[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 21:16:06 ID:W4SUAeFa
がくり、と崩れたタイロン・ツバイを女が鏡扉に持たせかけた。
タイロン・ツバイの疲弊した様子などお構いないしに、馬乗りになり腰元の衣服をすべて剥ぐ。
ひんやりとした鏡の感触が火照った背中に心地よい。両目を閉じ天眼を細めて、上がった息が落ち着くのを待つ。
「さて。」張りを失っていない男根に、女神が手を差し伸べた。
突き上げる快楽に、思わずのけぞり、したたか鏡の枠に頭を打ち付ける。
「おちつけ、吾子」ふふ、と笑いながらタイロンの男根をアビゲイルの内側へと導く。
男根の再先端を泉の滴りが出迎える。これから訪れる快楽に、タイロンは身震いした。
「愛おしい 吾子よ」
ほんのすこし、触れ合った状態で、女神は行為を止めた。
タイロン・ツバイの腰が無意識にアビゲイルを求めてうねった。
両腕が密着を求めて女の腰に伸びたが、それをやんわりと受け止め巧みに自由を奪う。
脱がせた衣で束ね、鏡の枠の飾りに引っ掛けてしまった。
381
名前:
邂逅[4/4
[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 21:17:01 ID:W4SUAeFa
「みたび 契り 交わそうか」
限りなく優美に微笑む女に、吊り下げられたタイロンはなすすべもない。
爆発しそうな熱を抱え、それでも判断力を失うまいとタイロン・ツバイが首を振った。
「なにが望みだ」掠れた声に、力はない。
ほほほ、と無邪気に女が笑う。
笑いながら、ゆっくりと男根の上に腰を下ろしはじめる。
包み込まれ、締め付けられる快楽に、タイロン・ツバイは気が遠くなる。
時間をかけて、女が胎内にタイロン・ツバイを納めた。
どちらからともなく、満足の吐息が口の端からもれた。
382
名前:
邂逅[おしまい
[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 21:19:12 ID:W4SUAeFa
読み返すと雑になってんな・・・
]はもうちょっと濃厚に書き換えたいので、ちょっと時間ください。
383
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 01:28:09 ID:ZFuPI9mf
いつも乙です!
とゆー事は、9は時間を置かずに読めるということですか?
個人的にはアビゲイルの幸せを祈るばかりであります
384
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/18(土) 01:53:58 ID:e+91R6MF
GJGJGJ!!
女神のエロさがたまらん。
385
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/21(火) 13:45:47 ID:HfXYvigQ
保守
386
名前:
投下準備
[sage] 投稿日:2007/08/21(火) 22:44:07 ID:N1cPXdYd
魔王の物語、今回は光側の幕間劇的な話です。
これまで登場した人物達はみんな強かったり芯のしっかりしたキャラでした。
しかし、世の中そんな人ばっかりじゃない……と思って書いたのですが、
読む前に以下の点にご注意を。
・女兵士非登場
・ダメ人間系の話に嫌悪感を抱く方は断固スルー推奨(ヘタレですら無い屑です)
では『クルガン王とヘルミオーネ』です。
387
名前:
クルガン王とヘルミオーネ
[sage] 投稿日:2007/08/21(火) 22:44:58 ID:N1cPXdYd
クルガンは憤怒を鎮めようと杯をあおったが、酒は心中に渦巻く炎を鎮めはしなかった。
もとより味わうつもりも無く、ただ酔うためだけに飲む酒である。
酒で癒されるどころか、鬱々とした表情は益々険しくなっていた。
彼は大魔王を滅ぼした英雄ラルゴンの末裔にしてこの国の王。
そして本来ならば光の陣営の盟主たる筈の男である。
だが、今の宮廷において彼を正当に遇する者はいない。
少なくとも、クルガンはそう思っている。
今日の御前会議においても、彼が主張した積極策は言下に否定された。
魔王軍はエルフ族の居住区を攻撃している。
ならば、我々がその後背を襲えば一定の戦果は得られるのではないだろうか……
昨年の大敗で失われた主導権を取り戻すためにも、光の軍勢は今こそ動くべきだ。
そうなれば、先に大攻勢を主張した自分の権威も復活するというのに。
だが、王国元帥は一家臣に過ぎぬ身分でありながら、彼の発言を一蹴した。
『闇の軍勢の数を僅かに減らすなどという事は、戦略的に何の意味も無い。
それどころか、反撃を受けて希少な味方に損害を被る事の方が重大である』
廷臣たちの前で元帥にそう言われた時、怒りで爪が食い込むほど王座の手すりを握り締めた。
これは臣が主に言う言葉だろうか。
元帥は家臣でありながら王の威信に全く敬意を抱いていない。
臣下であるならば、主君の言葉に少しは配慮するべきではなかろうか?
いや、真の臣下ならば命令に従って、自分の意図することを実現するよう命を賭して働くべきなのだ。
再び杯をあおり、クルガンはそう思った。
宮廷には彼の言う『真の臣下』は誰一人いない。
少なくとも昨年までは彼にそう思わせる者はいたし、王の味方と呼べる者が多かった。
だが、今宮廷に居るのは本性を現した逆臣と不心得者の集団だ。
国王の忠実な臣下たちは、去年の大会戦で勇敢に戦った末に死に絶えてしまったのだ。
生き残り達は掌を返して責任を自分に押しつけ、信頼に値する家臣を失脚させてしまった。
あろうことか、彼は周囲からの突き上げに耐えかねて
彼が敬遠し宮廷から排除した老元帥を復帰させざるを得なかった。
王であるにもかかわらず、彼のなす事は全てがままならない。
抑え切れぬ憤懣が、私室に戻った国王を酒に向かわせている。
388
名前:
クルガン王とヘルミオーネ
[sage] 投稿日:2007/08/21(火) 22:46:39 ID:N1cPXdYd
「……どうした? 注がぬか」
「陛下、そろそろお控えになられた方が……」
王の傍らに座る女性が哀しそうな顔で言った。
彼女はクルガンの王妃、ヘルミオーネである。
国王に見初められて十年間、彼と連れ添ってきた。
「酒が過ぎるというのか」
「どうぞご自愛のほどを」
「お前までっ、余の行いに口出しをする気か!」
杯を床に叩き付け、クルガンはいきり立った。
酒の勢いもあったか、妻の言葉にクルガンは激昂した。
宮廷は彼の敵ばかりであるが、おのれの伴侶までが自分に逆らおうとするのが我慢できなかった。
「余は国王なるぞっ! 神君ラルゴンの嫡流にして聖庁の擁護者、この国の統治者なのだぞっ」
「それでも陛下、荒んだ心で飲む酒は身体に悪いと申します……」
「黙れいっ!」
クルガンの掌が妻の顔をぶった。
躊躇なき一撃に、ヘルミオーネは椅子から転げ落ちる。
「あぅっ」
「余は王なのだっ! どれほど酒を飲もうと勝手なのだ! 誰も余に逆らう事は許されぬのだ」
荒い息を吐きながら、王は床に崩れ落ちた妻の姿を見下ろした。
夫に叩かれた頬を彼女は辛そうに押さえる。
それを見て、激情に駆られて王妃を殴ったクルガンにも悔恨が沸き起こった。
「……済まぬ」
「お気になさらずに…… 私も確かに口が過ぎました」
「いや、悪いのは余だっ」
クルガンは突然妻の傍らに跪き、彼女の身体にすがりついた。
「ヘルミオーネ…… 余が不甲斐ないばかりに、お前たちに辛い目を合わせてしまうのだ!
お前は余の身体を慮って呉れたのにな……」
389
名前:
クルガン王とヘルミオーネ
[sage] 投稿日:2007/08/21(火) 22:48:35 ID:N1cPXdYd
王妃の胸に顔を埋め、クルガンは己の無力を嘆いた。
すすり泣き、嗚咽すら混じるその声を聞き、彼女は人払いをしておいて正解だったと思った。
一国の王が、いや四十を前にした一人前の男が、
かように泣き哭く様など余人に見せられるものではない。
無様な姿を晒す良人を、ヘルミオーネは包み込むように優しく抱き締めた。
「お前だけだ、本当の余の味方は……」
彼女は夫が暴君だとは思っていない。
感情の振幅と好悪の情が激しすぎるだけだと思っている。
おまけに気が弱く、寂しがり屋なのだ。
だが、どんなに頼りなくとも、この弱弱しい男が彼女の夫である。
王妃は胸の中で泣きじゃくる夫に、囁くように言葉をかけた。
「陛下、お案じ召されますな…… 私めはずっと貴方の側におります」
「ヘルミオーネ……」
「私は貴方の妻でございます。たとえ王宮中を敵に回したとしても、最後まで貴方の味方ですよ」
「おお……」
満面に笑みを溢れさせながら、クルガン王は先程より力を込めて王妃を抱き締めた。
王妃の豊かな胸乳に顔を埋め、ここに味方が存在しているということを確かめるかの如く、
王はひしとしがみ付く。
(可哀想な人……)
今更ながら、ヘルミオーネはそう思う。
少なくとも国王でなければ、夫の生涯は違ったものになっただろう。
その弱さも、判断の甘さも、庶人であればここまで自分を追い詰める事には至らぬはずだった。
しかし、彼は英雄王の嫡流であり、彼は王位を継がざるを得ない身であったのだ。
それは数多の民衆と廷臣たち、なにより本人自身にとって悲劇的なことであったが。
390
名前:
クルガン王とヘルミオーネ
[sage] 投稿日:2007/08/21(火) 22:49:49 ID:N1cPXdYd
「ヘルミオーネ、ヘルミオーネ……」
顔を胸の谷間に押し付けたまま、クルガンは妻の名を繰り返し呼んだ。
「あっ……」
「ヘルミオーネ、お前だけは何処にも行かないでくれ。ずっと余の側に居てくれ……」
王妃を抱き締めていたクルガンの手が、いつのまにか彼女の臀部へ降りていた。
なだらかな膨らみをドレスの上から撫でる。
「しょうがない方……」
ヘルミオーネは夫の行為を咎める事はなかった。
自分まで拒めば、唯でさえ傷つき易い彼の心が微塵に砕けてしまうだろう。
誰かがこの弱い王を救ってやらなければならないのだ。
許容の言葉を聞いて、クルガンの愛撫は大胆になった。
熟れた果実の如く柔らかく張りのある乳房に、額や頬を擦り付けてその感触を楽しむ。
芳しい香水の匂い混じって薫る妃の仄かな体臭が、クルガンをさらに興奮させていった。
遠慮がちに愛撫していた彼の手は、衣装を捲り上げ直に肌に触れた。
瑞々しいその肌は、娶ってから十年を経ても若い頃と遜色無い。
むしろ女として成熟した肉置きになり、しっとりとした艶を帯びた現在の方が
より触れた男の淫心をくすぐる。
(うふふ……)
微笑を浮かべ、ヘルミオーネは胸の間に挟まった夫の頭を優しく撫でる。
それはまるで駄々っ子をあやす慈母の様だった。
妻の身体から伝わるいたわりの心に触れ、王はまさに救われる思いがした。
まさに彼女はささくれ立った己の精神を癒す女神だ。
今の彼には、妃の存在が世界でたった一人の味方に思えた。
もはやベッドへ行くのさえもどかしく、妻の身体を絨毯の上に押し倒す。
「やっ……、こんな所で」
「駄目だ。余はもう我慢できぬ」
夫の性急さに僅かに抗議の声を上げつつも、ヘルミオーネは受け入れた。
彼の身勝手は今に始まった事ではない。
クルガンは王妃に脚を広げさせ、寝そべった身体に覆い被さるように乗った。
下穿きから出された男根が、まだ潤いを帯びていない秘裂へとねじ込まれる。
「あぅ……」
ヘルミオーネは自分の中に強引に異物が挿入されるのを耐えた。
彼女の夫はいつもこうだ。
その気になれば、相手の気持ちなど構わなくなってしまう。
恐らくこれまで関係を持った(あるいは持たされた)女達は、
彼に男女で情感を高め合う事を教えなかったのだろう。
それが国王という身分に配慮してなのか、それとも愛を深めようと思わせる魅力が
欠けていたからなのかは定かではない。
とまれ、クルガンの不器用さを受け入れてしまうヘルミオーネも責の一旦は有る。
彼女は夫の振る舞いを咎める事も、詰る事もしなかった。
夫婦というものはこういう物だと、彼女なりに諦めてしまっていた。
ただし、貴婦人や女官達の噂する色恋話と違い、現実は随分味気ないものだと思ったものである。
391
名前:
クルガン王とヘルミオーネ
[sage] 投稿日:2007/08/21(火) 22:50:52 ID:N1cPXdYd
「ちゅっ、」
酒臭い口付けが強引さを詫びるように与えられると、それを合図にクルガンは腰を揺すり始めた。
工夫の無い、単調な動きであったが、突き込まれるたびにヘルミオーネの乳房が上下に振られる。
クルガンはその様子を楽しみつつ、潤い始めた秘所と己が亀頭が擦れ合う快感を味わう。
若い頃の絞られるようなきつさは無いが、暖かく包み込み、そして絡みつく感触に酔い痴れた。
「おおう、良いぞ……」
クルガンは呻くような声を上げた。
ただ、彼の行為は相方を悦ばせる事に無頓着としか言い様がなかった。
ヘルミオーネも子供ではなく、三十路を前にした一人前の女である。
抽送に愉悦を感じない訳では無いが、快感が燃え上がって来た頃には、夫が終わってしまうのだった。
彼女は未だ、交合によってもたらされる弾けるような絶頂を感じた事が無かった。
豪華なドレスが立てる衣擦れに混じり、クルガンの腹が王妃の臀部を打つ音が部屋に響く。
それがどれほどの間続いただろうか。
快楽に耐え切れなくなった王の顔が歪む。
妻の腰を抱える腕に力が込められ、打ちつける拍子が次第に早くなっていった。
「うっ、ヘルミオーネ…… 余は、もう……」
「……」
「おぅっ、うっ…… 出る、出すぞっ……おおぅ!」
下卑た喘ぎ声と共に夫が胎内に精を吐き出すのを、ヘルミオーネは黙って受け止めた。
自分だけが満足する一方的な交わりであったが、彼女が不平を漏らす事も無い。
それが彼女のやり方だった。
自分には、夫に生き方を変えさせるだけの知恵も力もなく、
かといって見捨てる事も出来ない事を、彼女は知っているのだ。
「はあ、はあ…… はあ……」
クルガンが荒い吐息を漏らし、萎えた性器を妻の股から抜こうとした時だった。
「えっ!?」
ヘルミオーネは思わず声を上げた。
彼女は気が付いた。
いつの間にか、部屋の片隅に白い光を放つ霞が顕れ、次第に人の形を取り始めた事に。
392
名前:
クルガン王とヘルミオーネ
[sage] 投稿日:2007/08/21(火) 22:51:51 ID:N1cPXdYd
「うあっ、な……何者だ!?」
「……我が末裔クルガンよ、驚く事はない」
「何と?」
「余は汝の祖にしてこの国が初代の王、ラルゴンなり。
今、光の軍勢の窮状を見かねて、現世に顕現したるぞ……」
光と共に、神々しい霊気が部屋中に満ち溢れた。
白い靄は輝く豪奢なマントを羽織り、王冠を被った老人の姿になる。
ラルゴン王の霊は、慈愛に満ちた微笑を二人に向けた。
「おお……、真に我が神祖ラルゴン王にあらせられますのか?」
「然り、我が裔よ。この身朽ちたりとはいえども、我が血脈の苦衷を如何に見捨てて置けようか」
「ああっ! 夢ではなかろうか? こうして英雄王のご託宣を頂けるとは!
よもや元帥めは御神祖のご顕現を仰いだ事はあるまいっ!
やはり、やはり余こそ英雄王の血筋であり、光の陣営を束ねる身なのですね?」
クルガンは、突如己の祖先を名乗る霊体が出現したことになんら疑いを持たず、
歓喜の声を上げてそれを迎えた。
心の底に眠っていた彼の最後の自負、自分が英雄王の血を継ぐ者であるという事実が、
王の理性を封じ込めていた。
否、彼は心のどこかで偉大なる先祖が子孫の為に現れ、彼の王位を肯定してくれる事を
望んでいたのかもしれない。
「まさに闇が世界を覆いつくさんとせり。
今こそ光の陣営は奮い立ち、最後の戦いを挑まねば」
「はい、まさしく……」
「魔王は古く深き森を攻め、大いに兵と魔力を費やしておる。
これこそ千載一遇の好機なり! この時を逃してはならぬ」
「おおっ! では余が出陣を主張したのは、誤りではなかったのですね!?」
「誤りであるものか。お主の言こそ正しい」
英雄王の霊体に賞賛され、クルガンは狂喜した。
先の軍議で臣下に否定された自説が、あろうことか救世主たる聖王ラルゴンに認められるとは。
だが、この光景を目の当たりにしたヘルミオーネは、どこか言葉にならない違和感を覚えていた。
圧倒的な光の波動が感じ取れ、この霊体が闇の存在とは信じられないにしても、
なにか胸騒ぎが止まらなかった。
(私が英雄王の血を引く人間ではないからかしら……?)
それは、夫を案じる妻の勘とでも云うものだったかもしれない。
「世界を救うため、余は一人の勇者を選び、聖別したるぞ。
その娘の名はアデラ……
光の代表者として、余に代わりて救世の功を立てるべき定めを負う者なり。
クルガンよ、かの者に神剣を委ね、魔王征伐に向かわしめよ……」
(終わり)
393
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/21(火) 23:43:11 ID:reyFVkSc
GJ
クルガン王はヘタレだ屑だと思う前に哀れみが…
ところで保管庫がエラー出るのは自分だけだろうか
394
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/22(水) 02:56:43 ID:LijHDRG5
魔王の人、あいかわらずGJ!
>>393
姫スレから、報告ページへのリンク有り。HDDクラッシュだとか。
395
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/22(水) 03:10:17 ID:F6uy4AeU
な なんだと・・・
魔王シリーズ全部見てないのに・・・
396
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/22(水) 06:53:00 ID:sfQaNCIZ
魔王の人GJ!!
こういう暗愚な王も人間くさくてイイ!
次回も期待しております
397
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/24(金) 01:50:49 ID:7azS5Nrw
「水の神殿」の残り半分を投下します。
前回感想ありがとうございました。
398
名前:
水の神殿(後半)
[sage] 投稿日:2007/08/24(金) 01:53:20 ID:7azS5Nrw
「お前『で』いいって…」
フィアがむっとして男を睨みつけると、
「む、言い方が悪かった。お前『が』いい」
男はすぐさま屈託も無くそう言い直した。
フィアはそんな男を呆れ顔で見上げたが、やがて宥めるような眼差しを向け、
子供に言い含めるように静かに話し始めた。
「…………私は巫女の資格を持たないただの神殿兵士だわ」
倒れた自分の体を囲むようにして両手両膝をつく男から、少しずつ体を横にずらしていく。
「神の番いの相手になる事は許されないの」
何とかこの体勢から抜け出そうと隙を探りながら。
それと悟られぬように。
少しずつ。
「神殿では、あなたにふさわしい女性が巫女として選ばれて、あなたが来るのを
待っているのよ。私みたいな女じゃなくて、誰が見ても神の花嫁にふさわしいと讃える、
富貴な家柄の、清らかで、とても美しい女性が」
「……ほう」
金属のような不思議な光沢を持つ男の目が、すいと細められた。
フィアがぴくりと身を強張らせるのにも構わず、ひと房、その漆黒の髪をすくい取る。
「では訊こう。許されないとは、『誰に』許されないのだ?
誰が、何の権限を持ってそれを決める。
神を差し置く傲慢な者がいるというのなら、その者の名を挙げてみよ。
────許されないだの、ふさわしくないだの、そんなくだらぬ取り決めは人間供が
俺の知らぬところで勝手に作り、勝手に守っているものであろう。
俺がそんなものに縛られる理由は無い」
「そんな………」
「お前はなかなか弁の立つ女のようだな、娘」
男は大きな掌でフィアの肩を掴むと、体をぐいと引き寄せた。
自分との間にじわじわと作られた隙間を一気に狭める。
「だか、詭弁はどんなに弄しても真理には勝てん。
俺のことは俺が決める。それが一番理にかなっているからだ」
そう言うと、目を爛々とさせフィアに体をすり寄せた。
「──な? だから、いいだろ? とりあえず一回」
399
名前:
水の神殿(後半)
[sage] 投稿日:2007/08/24(金) 01:54:58 ID:7azS5Nrw
言っている事は真理をついているのかもしれないが、
説得力が皆無なのは何故だろう。
神に向けるべき畏敬の念がまったく湧かないのも、いっそ清々しいくらいだ。
御託を述べつつやらせろやらせろと鼻息も荒く迫り来る男を、フィアは愕然と眺めた。
冗談ではない。
なにが水の神だ。
最初に水の中から出現した時の、荘厳なあの神神しさは何処へやら。
これではただの盛りのついたケダモノだ。
もしかしたら、自分は魔獣よりもたちが悪いものを相手にしてしまったのか。
フィアは何とか男から離れようと硬い胸板を手で押した。
「なんと言われようと、駄目なものは駄目よ。それに、私にだって婚約者が………」
「婚約者?」
眉目麗しいケダモノ…もとい、水の神の顔が不愉快そうにしかめられた。
「番いになる約束をした相手のことだな。そいつのことを気に入っているのか?」
「気に入っている……もなにも」
単刀直入に尋ねられ、フィアは言いよどんだ。
一度しか会ったことが無い相手で、顔もはっきりと覚えていない。
「……親の決めた相手だし」
「俺はお前が気に入った」
力強い眼差しでフィアの目を捕らえ、男はきっぱりと言い切った。
「そんな、はっきりと気に入ってると言えないような奴は止めとけ。俺に決めろ」
「そんな、無茶よ──」
歯切れの悪いフィアの耳朶に、男が素早く噛み付いた。
ふんわりと、ごく柔らかく。
400
名前:
水の神殿(後半)
[sage] 投稿日:2007/08/24(金) 01:57:24 ID:7azS5Nrw
「あっ……」
「感度が良さそうだな」
ちゅっと音を立てて耳朶を口に含み、舌で舐める。
男の片手がフィアの胸を無遠慮に掴んだ。
「や! ……んっ、やめて」
「言っておくが、最初に俺をその気にさせたのはお前のほうだからな、そんな姿で」
たっぷりとした柔らかな胸を揉みしだき、男はフィアの身体の自由を奪ったまま、
耳元に色気づいた声で甘く囁く。
「とりあえず、体の相性を調べよう。俺を拒む理由を考えるならそれからだって
遅くはないと思うぞ」
「…………早くやりたいだけにしか見えないんだけど」
「…………鋭いな。だが、察しの良い女も俺は好きだ」
咽元に喰らいつかれた男の唇が熱い。
自分の体がかなり冷たくなっているのだ。
拒む言葉を捜しながら、フィアの手は迷いをあらわすかのように、男のわき腹辺りを
彷徨った。
そもそも、ふたりとも既に裸で、この体勢。
拒むにしても、これでは分が悪すぎる。
性格はやや難有り──いや、かなり問題がありそうだが、姿を現しただけで魔獣を
追い払ってしまえるのだから、話に聞く通り、相当な力を持っているのだろう。
都から何日も掛けてたどり着いた遺跡で、苦労してようやく手にした水の神。
これから都の神殿に届けなければ。
下手な拒み方をして、機嫌を損ねるのは避けたい。
………違う。そんな計算などではなくて。
突然現れたくせに、俺に決めろといって迫る彼をどういうわけか強く拒否できない。
口説いてくる男など、普段なら簡単に撥ね付けてしまえる。それなのに……
冷えた素肌に、彼の熱い体は気持ちが良い。
401
名前:
水の神殿(後半)
[sage] 投稿日:2007/08/24(金) 01:58:32 ID:7azS5Nrw
「………ぅうん」
鼻にかかったような自分の甘い声に、フィアははっと我に返った。
「その気になってきたか? いいぞ」
「やっ。……あ」
フィアは絡みつく快楽から逃れようと、褐色の艶やかな身体を力なく捩じらせた。
黒い瞳は蕩けたように潤み始めている。
背中の大きな石に身を預けたまま、困惑を露にフィアは顔を赤らめた。
男の熱い吐息が肌にかかる。
指で乳房を弄び、ぬめった熱い舌がもう一方の胸の丸みに纏わりつく。
硬くなった桃色の小さな頂を舌先でくすぐられる。
その度に、甘い痺れがフィアの体を駆け巡った。
「───おい」
一心に胸を弄んでいた男がふいに顔をあげたので、フィアはようやく
快感からひと時開放された。
男がフィアの顔を覗き込む。
「そういえば、まだ名前を聞いていなかった」
「……名前」
「そうだ、名前」
弾力のある乳房を掌で包んでゆっくりと撫で、男はフィアに囁いた。
「教えてくれ。お前の名前」
「フィア……」
肩で息をしてフィアが呟く。
「フィア?フィアか…………フィア」
男はかみ締めるように何度もその名前を繰り返した。
「フィア」
そう呼びながら、フィアの濡れた小麦色の肌を撫で、味わうように身体中に口付けを
施していく。
水の中で足が絡み合う。
脚の間に男の体が割り込まれていて、時折見なくてもそれと分かる
熱を持つ張り詰めたものが身体にあたる。
男が動くたびに、フィアが愛撫に体を震わすたびに、腰の高さの水面が音を立てて
大きく波打った。
402
名前:
水の神殿(後半)
[sage] 投稿日:2007/08/24(金) 02:01:10 ID:7azS5Nrw
男は脚の間に手を伸ばした。
その腕をフィアは慌てて掴み、首を横に振った。
「ね、いや……こんな事、やっぱり駄目よ」
「………駄目か?こんなふうになっているのに?」
フィアの小さな悲鳴をよそに、蜜でぬめる花弁を指で確かめる。
指の腹でゆっくりと嬲るように擦り上げると、フィアの身体が小魚のように跳ねた。
「ぁあっ!…や…、いやぁ……んっ………」
「こんなに反応がいいんじゃ、俺は励みがいがある」
興奮をその顔に隠すことなく、男は屹立したものの先端を
劣情をそそる色と形の肉の入り口にあてがった。
脚の間に膝をつき、フィアの腰を掴むとぐいと高く持ち上げ、自分の腰に
一気に押しつけた。
「あっ───ああっ!」
「…………おぉ」
フィアの胎内に根元まで納めて、男が熱い息を吐く。
「悪くない。いや…………良いな」
厚みのある肉は男の焼け付くような昂ぶりを優しく包み込む。
だが、同時に中を雄雄しく荒らされるのをねだるかのように、ひくひくと切なげに
男のものに吸い付いた。
中の具合を確かめるようにしばらく動きを止めた後、男はゆっくりと
抜き差しをはじめた。
「体は冷たいが、中は暖かいんだな」
硬いもので、ずるり、ずるりと繰り返し内壁を擦られ、
成すすべも無くフィアは息を乱した。
腰を高く持ち上げられているのを支えるのは浮力があるとはいえ苦しく、
フィアが苦痛に顔を歪めたのに男は気付き、動きを止めた。
「これはすこし無理があるか。すまなかった」
男はフィアの背中に腕をまわすと、彼女の体を易々と抱き起こした。
水の中に座り、フィアに自分の体を跨らせる。
「この方が良いか?」
問いかけるような口調だが、承諾を得るために聞いているのではないらしい。
フィアがなにも答えないうちに男は彼女の腰を掴み、その体を下ろしていく。
硬く隆起したものがゆっくりとフィアの中にめり込んでいった。
403
名前:
水の神殿(後半)
[sage] 投稿日:2007/08/24(金) 02:02:49 ID:7azS5Nrw
「あっ……ん……」
身体はしっかりと男を受け入れているというのに、男の胸板に手をやり
フィアは体の密着を避けようとする。
そのフィアの手を掴み、男は自分の首に廻した。
「ほら、俺にしっかりしがみ付け。遠慮はいらんぞ」
遠慮とか、そう言うことじゃなくて……そう反論させる余裕も与えずに
自分に縋りつかせ、男は大きな揺さぶりで下からフィアを突き上げた。
ずしりとした逞しい質感が、狭い肉の壁を押し広げつつフィアの胎内を往復する。
「ふっ………。はぁ…ん」
「───ぅおぅ」
フィアが耐え切れずに息を漏らすと、耳元に甘い息の吹きかかった男が身震いをした。
「いいぞ、フィア」
そう言いながらフィアの身体を抱えなおし、くしゃくしゃと頭を撫でる。
「気持ち良いか? もっと声を出せ」
遠慮のかけらも無く腰をぶつけられ、フィアは思わず男の躯に抱きついた。
ずっと男のペースに乗せられたままである。
これが当然のことであるかのような。
もう何度も肌を重ねてきた恋人同士のような。
そんな口調と態度に、まるで躊躇いのある自分のほうが間違っているのではないかとさえ
錯覚してしまう。
「……や、ん………あっ…、そんなに、したら、…ぁ…だめ……」
自分がどんどんどこかに押しやられていく感覚のなかでフィアは頬を紅潮させ、
ただ虚ろに喘ぎをあげるしかない。
「イきそうか?」
息を弾ませ、男はフィアに尋ねた。
「ほら、イっていいぞ。──顔をこっちに向けろ。おまえのイくところを見せるんだ」
激しい水音を立てながら、しっかりと掴んだフィアの体を勢い良く突き上げる。
404
名前:
水の神殿(後半)
[sage] 投稿日:2007/08/24(金) 02:03:50 ID:7azS5Nrw
フィアに最善の策を探す間を与えず、
苛めるように激しい快楽を送り込む動きを緩めるつもりも無いようだ。
突き上げにあわせて、フィアはすすり泣くかのような甘く切ない声を上げた。
無意識のうちに、柔らかな内腿が男のわき腹を挟み込むように絡められている。
水の中、水とは違うぬめりが下腹や腰に触れる。
それがフィアがあふれさせた蜜だと気付き、男は口の端を吊り上げる。
張りのある豊かな胸の丸みに唇を彷徨わせ、好きなように押し付ける。
淫らな摩擦を楽しみながら、男はフィアのきつい締め付けの中を存分に往復した。
「あ!…ああっ……いやっ!…いやぁっ。………あああああっ!」
快感の潮が一気にせり上がり、満ち溢れる。
激しい絶頂に襲われ、フィアは男にしがみ付いた。
身体はいやがうえにも歓喜に震え、包み込んでいたものを本能的に絞り上げる。
「フィア!」
男は強い力でフィアを抱きしめた。
フィアの身体の一番奥深くでひときわ硬くなったものを脈打たせる。
しっかりと腰を押さえ込み、男はフィアの中に熱い迸りを注ぎ込んだ。
* * *
石壁を撫でて水が流れていく音が聞こえる。
自分達さえ大人しくしていれば、此処は本当に静かな空間だ。
そう実感する。
水辺でフィアはくったりと仰向けに寝そべっていた。
男は彼女にぴったり寄り添うように横たわり、頬杖をついている。
彼の太く逞しい片腕はフィアが離れないよう、抜け目無く彼女の身体をしっかりと
押さえ付けていた。
「………よかったな。俺たちの相性はなかなか良さそうだ」
静寂を破って、満足げに男が言う。
「なにも問題は無い。そうだろう?」
問題……大有りだわ────そう思いながら、フィアは重くため息をついた。
405
名前:
水の神殿(後半)
[sage] 投稿日:2007/08/24(金) 02:06:13 ID:7azS5Nrw
あまりにも急な、予想外の展開。
しかし、彼に迫られて、わずかにでも迷った時点で
もう結論は出てしまっていたのだろうか。
「神官様にはなんて報告しよう……」
フィアはぽつりと、それだけを言葉にした。
「そんなの気にするな。神殿の勝手な都合など俺は知らん」
男はフィアの胸に頬をのせ、たっぷりとした乳房を押しつぶすように頬擦りをした。
実に楽しそうに。
「……とにかく、あなたを王都の神殿にまで連れて行くわ。きちんと私についてきて。
いいわね」
「うむ、いいだろう。
お前の行く所なら、何処にでもついていってやるぞ。我が番いの相手よ」
「番いの相手じゃないってば…………」
自分の顔のすぐ下に男の頭がある。
そのほとんど乾ききったさらさらな銀色の髪を、フィアはぼんやりといじった。
本当は、この寝そべり方は男女の位置が逆転しているんじゃないか、とひとこと
言いたかったのだが、番いどころか親しい恋人同士という間柄でもないので、
フィアはあえて突っ込まないことにした。
{おわり}
406
名前:
水の神殿(後半)
[sage] 投稿日:2007/08/24(金) 02:07:33 ID:7azS5Nrw
以上です。
読んでくれた方、どうもありがとう。
407
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/24(金) 07:42:56 ID:5yjVhyqs
GJです!
素晴らしく萌えさせていただきました。ご馳走様でした
続き、ありますか?
408
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/24(金) 15:21:43 ID:Q4oUsvgp
GJ―!!!!!!
文章が綺麗で読んでて楽しかったです。
もし続きを考えてるなら是非!
待ってます。
409
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/24(金) 21:07:21 ID:3qgkdmvq
よかったよ。
この後のふたりも気になるな
410
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/24(金) 23:02:40 ID:3zLK7Oy7
待ってました!
恋人同士というわけでもないのにこの二人すごいいいな
GJです
411
名前:
投下準備
[sage] 投稿日:2007/08/25(土) 12:47:53 ID:+Frqk+ER
保管庫がイってしまいましたか。
続き物で書かせて頂いてる身としては厳しいし残念です。
今回のはエロお休みです。
王都編中篇『閲兵式』をどうぞ。
412
名前:
閲兵式
[sage] 投稿日:2007/08/25(土) 12:49:10 ID:+Frqk+ER
狂騒の中で、閲兵式が始まろうとしていた。
喇叭を吹き鳴らし、軍鼓が打ち鳴らされる。
再編成された光の軍勢が旗を高々と掲げ、王が観閲する前を行進していく。
バルコニーの上から、クルガン王は上機嫌で彼らの敬礼を受けた。
見物する民衆達も熱狂していた。
闇の軍勢の攻勢に押され、冬の食糧難にも耐え続けた民衆にとって、
魔王を倒す光の勇者が現れたという知らせは、久しぶりの明るい報せであったのだ。
その様を見るため、マリガンも普段暮らしている裏路地から、都大路まで出張っていた。
彼女にとって、兵士や将官どもがいかに着飾っていても見る価値は無い。
その目に納めるべきものは、己が友、そして心を寄せたりもする娘、
さらに彼女の大望の鍵を握る閲兵式の主役、光の勇者アデラの姿に他ならなかった。
軍旗を先頭に、軍隊が整然と行進する。
勇者アデラはこの行列の目玉であり、行列の真中で現れるはずだ。
群集のなかで、マリガンはそれを心待ちにしていた。
それは、何の気配も感じさせなかった。
「あ奴が、先の遠征で余の軍勢を押し止めおった将帥か?」
突然隣から覚えのある声で囁かれ、マリガンは驚いて顔を向けた。
「魔──」
思わず叫びそうになったが、言葉途中で彼女の声は消えた。
口は開けども声は空気を震わせなかった。
(……沈黙の術?)
呪文を唱える暇は無かった筈だが、現に喉から音は発せられない。
「忍びだ」
漆黒のローブに身を纏った男は、それだけ言うと袖の中で指を鳴らす。
「あっ……」
マリガンの唇に言葉が戻る。
そして、驚きの余り口走りそうになったが、まさに敵陣の中枢たる王都で、
魔王の存在を明かしかけた愚を悟った。
「陛……、いえ大師」
悩んだ末、ようやくこの場で呼ぶに相応しい尊称を見つけ出す。
「こたびのお出ましは、何の目的で御座いますか?」
「そなたと同じだ。アデラの晴れ姿を一目見るためよ」
413
名前:
閲兵式
[sage] 投稿日:2007/08/25(土) 12:50:06 ID:+Frqk+ER
戦の最中、それだけの為に魔王が微行に訪れるとはマリガンも思わなかったが、
生半にこの相手に真意を語らせるのは難しい事は分かっている。
それでも、言葉の端々から手がかりを掴もうと話しかけた時、
魔王のさらに隣より発せられた少女の声に阻まれた。
「なんじゃ? あれは先に妾が喰い損ねた騎士娘ではないか。
あ奴が光の勇者だと云うのか?」
見れば、この王都でも珍しい程に見事な金髪をした女の子である。
可憐な顔立ちに愛らしい声。
その険の強そうな眉目を差し引いても、驚く位の美少女だ。
西国風の服も良く似合っているのだが、ただ首元に巻いた布が不自然であった。
行列の目玉となる部分は、未だここからゆうに五百歩は離れている。
しかし、一人と一匹の目には、その姿をしかと捉えることが出来るらしい。
「……大師、こちらは?」
「連れだ。この風体で一人は怪しまれようが」
魔王の言葉に一理有ると、マリガンは思った。
雑多な人間達が暮らすこの王都だが、同時に光の勢力の中枢でもある。
パレードを見物するため、彼女の様な裏路地の住人達も大路に繰り出して来ているとはいえ、
昼間からその漆黒ローブは少々不審だ。
だが、この可愛らしい少女を連れた男が闇の最高権力者だとは、誰一人として思うまい。
「おい、赤毛の小娘。
あそこの露台に立って、酔っ払った猿の如くはしゃいで手を振っておる
身なりだけは豪勢な間抜け面…… ありゃ何じゃ? 新手の道化か?」
「いえ、あの方はこの国の王、クルガン陛下であらせられます」
「なんと、そりゃ何の冗談じゃ? あれはどう見ても人の上に立つ顔では無いぞ。
せいぜい豚飼いがいい所だろうに」
バルコニーを指差した少女は、呆れたように目を丸くして言い放った。
その声があまりに大きかったので、二人と一匹の周りに居た者達の耳にも自ずと聞こえた。
けれど、少女の愉快な指摘は皆を苦笑いさせるだけだった。
「むう、隣の女子は脂が乗って旨そうだが…… あれは如何に妾でも食指が動かぬ」
「ティラナ、少し静かにせよ」
可愛らしい少女の奇矯な発言のお陰で、漆黒のローブを纏った連れの訝しさが些か軽減されていた。
この金髪金瞳の少女が、一度牙を剥けば殺戮を欲しいままにする魔獣だとは、
周りは気付きもしない。
414
名前:
閲兵式
[sage] 投稿日:2007/08/25(土) 12:51:00 ID:+Frqk+ER
そうして二人と一匹が他愛無い言葉を交わすうちに、周囲の歓声が一際高くなる。
「元帥閣下バンザーイ!」
光の軍勢の要とも言うべき老齢の将帥に、都の住人は絶大な信頼を寄せていた。
今回の閲兵式では主役をアデラに譲っていたが、彼の人気は衰えていない。
その人気が宮廷の一部で反感を買い、クルガン王の嫉妬を煽る原因にもなっているのだが。
「なかなか骨のありそうな奴じゃ…… ちと筋張っていそうだが」
ティラナは元帥をそう評した。
鞍上の彼だけは、周りの騎士達とは空気が違う。
七十を越えているはずの身体から、溢れるような精気が感じられた。
浴びせかけられる歓呼に愛想を振り撒かず、背筋を伸ばし正面を見据えている。
それでいて尚且つ、左右の観衆を睥睨するかのような威厳がある。
王と元帥を見比べれば、初見の者であってさえ器量の違いという物を納得するに相違ない。
元帥を乗せた軍馬が、一歩一歩進み、近付いてくる。
そして、漆黒のローブを纏った魔王の前を通り過ぎた時、僅かに元帥は目線を動かした。
魔王もケープの奥から元帥を見つめていた。
ごく短い間であったが、確かに二人の視線が絡まる。
元帥は何事も無かったかの様に進んでだが、しばらくの後に脇に控える従兵に何やら囁くと、
その兵士は即座に行列を離れて消えていった。
「目ざとい奴…… 余の存在に気が付きおった」
「えっ?」
「素性まで見抜けはせんだろうが、捕り物騒ぎは無粋よな……
ティラナ、去るぞ」
振り向きざまにそう言うと、まるで川面に浮かぶ木の葉が渓流を下る様に、
瞬く間に人込みを縫い掻き分け、その場を離れてゆく。
「待て、待たぬかっ! 待てというにっ」
一足離れて、ティラナはその姿を追う。
彼女の動きも、猫が地を駆けるが如きすばしこさであったが、それでも魔王には追いつけない。
「これっ、あいつはどうするつもりじゃ? 置いて行くのか!?」
その問いに、黒い影から応えは無かった。
・・・・・・・・・
415
名前:
閲兵式
[sage] 投稿日:2007/08/25(土) 12:51:53 ID:+Frqk+ER
元帥よりもやや遅れ、今回の閲兵式の主役が現れた。
銀の鎧に陽光を浴びて、白馬に跨ったアデラは都大路を練り歩く。
「ワーッ、勇者万歳!!」
「勇者アデラ万歳!」
「クルガン王陛下万歳!」
「アデラ!アデラ!」
「光の軍旗に栄光あれーー!」
「アデラさまーっ!」
「王国万歳!英雄王ラルゴン万歳!!」
光の勇者を加えた軍勢を、道の左右に集まった民が様々に讃える。
『威厳を保ちつつ、かつ澄ました顔をして反感を買わぬ様に』と指導されたが、
一週間前まで聖騎士団のただの前衛隊長の身であったアデラには、それは容易い事ではない。
これほど多くの視線と歓呼を一身に集めるなど、これまでの人生で経験が無い。
そればかりか、彼らが自分にかける期待…… それが重く圧し掛かった。
(勇者とは、かように万民の運命を担わなければならないのだ)
自分が勇者という身分に憧れた事が無いと言えば、それは嘘だ。
だが、実際にそう扱われれば、かっての願望など甘い妄想であった事が身に染みる。
少なくとも顔が引き攣らない様に心がけていたアデラに、
どこか聞き覚えの有る東国訛りの声が道の脇から掛けられた。
「アデラさまーー! こっちを見てくださーい!」
「……なっ?」
一瞬、『自分の目がどうにかなったのか』とさえ思った。
亜麻色の髪を項で短く切り落とした少女の姿は、忘れたくても忘れられるものではない。
多くの見物人の中から目を留めて貰うべく、ぴょこぴょこと跳ねつつ手を振っている。
行進が乱れるにもかかわらず、アデラは短髪の少女の前で馬を止めた。
「フィリオ!? 何で王都に?」
「良かった。気が付いて下さったんですね!」
その邪気のない笑顔は、まぎれもなくあの魔王の陣営に居た風呂係の少女だった。
「アデラ様が勇者に叙任されるというので、見届けさせて頂きたく参りました!」
「そ……、そうか?」
屈託のない言い様に、アデラは拍子抜けしかけた…… が、瞬間、驚愕すべき事実が脳裏を奔る。
『魔王の端女であるこの少女が、自分の意志で王都に来れる訳が無い!』
それに気が付いた刹那、アデラは事態をほぼ正確に見抜いた。
「まさかっ、奴もここに来ているのかっ!」
「はい。だけどいつの間にか、はぐれてしまって……」
相変わらずフィリオは笑みを絶やさない。
対照的に、アデラの顔はこれまでになく厳しくなっていた。
(魔王め、何処に居るっ…… そして何を企んでここに来たっ!)
だが、アデラが辺りを見渡したとき、既に魔王は大路を離れていた。
そして、これは彼女がこの日遭遇すべき事件の、ほんの前触れに過ぎなかった。
(続く)
416
名前:
投下完了
[sage] 投稿日:2007/08/25(土) 12:54:41 ID:+Frqk+ER
本来マリガンは「尊師」と呼ぶべきなのですが、
大事件を起こした輩のイメージと重ねないために「大師」となっております。
417
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/25(土) 14:52:56 ID:H2lQPaIT
>>416
確かにあの「尊師」のイメージじゃ小物過ぎますなw
418
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/25(土) 18:27:40 ID:QrSsxWyS
今回もGJです!
初登場の元帥キター
そして続き物っぽい雰囲気にwktk
419
名前:
邂逅\はじまり
[sage] 投稿日:2007/08/25(土) 23:03:01 ID:XjOMY/uz
んばんわ〜
いっぱい神が光臨中でうれしい限り。
続きの投下をしまする。
420
名前:
邂逅\1/5
[sage] 投稿日:2007/08/25(土) 23:04:47 ID:XjOMY/uz
「きつい・・・な」口にしたのは、女のほうだった。「この娘の 身体」
女の手のひらが自身の乳房を掬い上げる。しばらくじっと見つめた後、ゆっくりとこね始めた。
みるみる先端が硬くしこり、唇から吐息が押し出された。
「あ・・・あぁっ」乳房の自撫に応えて声が上がるのはタイロン・ツバイのほうだ。
乳房や頂に与えられる刺激に反応して、アビゲイルの内膜がよじれ、より男根を奥にいざなう。
女も湧き上がる快楽に目を細め、満足げである。「様々 依代は 借りたものだが・・・」
そのまま右手が下がり、痙攣するわき腹をなでまわした。
「絶品よのぉ」女の内部がざわめき、締め上げる。
うっとりと自らを愛撫する女を下から眺めるだけだというのに、タイロン・ツバイは確実に追い詰められていく。
421
名前:
邂逅\2/5
[sage] 投稿日:2007/08/25(土) 23:05:31 ID:XjOMY/uz
抜いて、挿す。
暖かい女の胎内とひんやりとした外気。
先程の施射のせいか、凄まじい刺激が駆け抜けるのに射精に至らない。
女が完全に男根を引き抜き、ひざ立ちでにんまりと笑う。
先程までの狂おしい快楽を求めて、男根がびく、と大きく脈打った。
すぐその先にあるのに、届かない。泉を求めて、抑えてけられている腰を動かそうとあがく。
「契約を かわそうか」
この熱を開放してくれるのなら、何でも承諾してしまいそうな自分が恐ろしい。
・・・もっとも、承諾以外に道はないのだが。
422
名前:
邂逅\3/5
[sage] 投稿日:2007/08/25(土) 23:06:27 ID:XjOMY/uz
「少々 西が きなくさい」
ささやく声と、タイロン・ツバイをまっすぐ射抜く目は真剣そのものだ。
しかし、反り返った幹の上を女の泉がゆっくりと行き来する。・・・飴と鞭
「戦か」やっとタイロン・ツバイが絞り出す声は掠れて、快楽の吐息に聞こえる。
女神の表情が憂いに曇った。「吾子」
「血は 流したく ないのお」女のため息は快楽ではない。
両手を男の顔に添え、天眼に口をつける。「砂漠の 国の 言葉を 与えよう」
次は右の瞼に口付けた。「凋落して みよ」
左の目にも接吻。
「御意」とタイロン・ツバイの口元が動いた。声は出なかった。
女神はついっと眼を細めて、満足げに微笑んだ。
「契約は 立てられた」ささやくと同時に、引き締まった腰を勢いよく男根の上に落とした。
423
名前:
邂逅\4/5
[sage] 投稿日:2007/08/25(土) 23:07:27 ID:XjOMY/uz
包み込まれ、吸い込まれる感覚。その快楽。
「戦など」今度は勢いよく引き抜く。密着したまま引きずり出される快さ、苦しさ・・・
「我の 大地には」悦楽が大波のように押し寄せる。
今度は引き潮。「いらぬわ」締め上げるような圧迫感と唐突な開放。
女の泉門が閉じる、ぴちゃり、という音が聞こえた。
2度目の開放の刺激に、タイロン・ツバイは耐えられなかった。
何一つ自由にならない体に湧き上がる射精感。あっけなく、獣じみた声を上げて果てる。
勢いよく飛び出した飛沫がアビゲイルの下腹に散り、自らの腹に落ちてくるのを、放心して見ているしかなかった。
424
名前:
邂逅\5/5
[sage] 投稿日:2007/08/25(土) 23:08:36 ID:XjOMY/uz
くぼみに溜まった残滓を、女が親指で掬う。
「おまえを 頼りにして おるのだ 吾子」
躊躇なく口元に運びぺろりとなめるしぐさのなまめかしさに、タイロン・ツバイは釘付けである。
荒い息のまま、タイロンが声を絞り出す。「仰せのままに」
アビゲイルの身体を借りた女神は満足げに眼を細めて、男の耳元に唇を寄せた。
「おまえは 本当に よく 働いて くれること」
耳たぶを甘く噛み、舌でもてあそびはじめ、十指は男の脇腹を行きつ戻りつ、撫で回す。
タイロン・ツバイは再び勃然した自分に唖然としつつ、くすぐったいような甘美な刺激をなすがままに享受する。
425
名前:
邂逅\おしまい
[sage] 投稿日:2007/08/25(土) 23:09:49 ID:XjOMY/uz
今日はおしまい。
426
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/27(月) 00:37:38 ID:h68pkeD8
神だ!GJ!!
427
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/27(月) 09:18:10 ID:TWBe+ffq
GJ!
ところで、
保管庫、一個一個に説明書き付けてくれたりと丁寧な作りだっただけに、
管理人さんのショックもいかばかりか、と思うよ。
量もかなりあったしね。
個人的には保管庫復活してほしいんだが・・・・どうなるんだろ
428
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/27(月) 19:32:22 ID:Zeyi1KMR
しかし、保管庫の更新も四月ごろから止まっていたからね。管理人さんはかなり長い間はなれていたと思われる。
429
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/27(月) 22:40:00 ID:otfFtM3h
少し前に更新があった気がするんだが、あぼんですかorz
430
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/28(火) 01:51:11 ID:3gjBHcm4
お、保管庫復旧してる
431
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/29(水) 15:48:23 ID:vz/X0amZ
姫スレに保管庫の中の人のコメントあった。
ざっとだが復活してるらしい。
中の人が超絶忙しいために、格的に戻るのは9月ごろになるらしい。
良かった良かった。
432
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/08/31(金) 22:13:10 ID:VpxPwd8Q
保守
433
名前:
投下準備
[sage] 投稿日:2007/09/01(土) 19:55:16 ID:ScDEhAPl
王都編三作の最後、『魔王とヘルミオーネ』です。
※注意
・今回も女兵士との濡れ場がなくて反省
・タイトルどおりNT
・相変わらずエロ以外がやたら長い(読み飛ばし可)
・三連作の最後だが、先の二作を足したより長い。これまでで一番長いかも
・でも前の二作と直接繋がっているので、
>>387-392
『クルガン王とヘルミオーネ』、
>>412-415
『閲兵式』を先にお読み下さい
434
名前:
魔王とヘルミオーネ
[sage] 投稿日:2007/09/01(土) 19:56:27 ID:ScDEhAPl
元帥府の一室で、老人の前に二人の男が畏まっていた。
「取り逃がしたと云うのか」
「面目次第もございませぬ……
閣下のご下命により黒装束の男を追いましたが、追者の内四名と連絡が取れぬ有様で……」
「消されたか」
「恐らくは。あの群集の中で胡乱な者を見抜かれた閣下のご慧眼、
感服の至りでございます」
「世辞はいい。重大なのは盗賊ギルド、魔道士ギルドの追跡を躱してのける曲者が侵入し、
今も行方が知れぬと云う事だ」
「真に、その通りで」
昼間の行進の中、老人は群集の中に立つ黒衣の男に気を引かれた。
それは、ただの直感であった。
大路に集まり、行進を見物していた人間など数え切れぬ程居た。
だが、あの男と視線が交わった瞬間だけは、背筋に稲妻が走った。
これまでの長い軍歴の中で、あのような感覚は初めてだった。
「引き続き探索を行え。同時に新手の間諜の侵入は見逃すな」
「承知しました」
命を受けた二人が部屋を辞すと、老人は窓の外を眺めた。
勇者の叙任という一大セレモニーの熱気が今も続いている。
否、上の熱病が下々にも伝染したのかも知れない。
思わず、老人はため息を漏らした。
昨年からこの方、殊にため息をつく事が多くなった。
この歳になっても、まだ彼は王国の兵事を双肩に支えなければならないのだ。
435
名前:
魔王とヘルミオーネ
[sage] 投稿日:2007/09/01(土) 19:57:07 ID:ScDEhAPl
(魔王現れる時に勇者現る、勇者は魔王を倒して光と正義を取り戻す…… か)
光の王国の誰もが、子供の時分より教えられる詩の一節である。
一週間前の事だった。
朝議の場で、突如国王が『ラルゴン王の霊告により、光の勇者が選抜された』と言い出したのは。
初めは誰もが信じなかった。
しかし、王が聖庁及び聖騎士団の幹部を問い詰めて、
『神剣を抜いた聖騎士が居る』事を白状させると、失笑はどよめきに変わった。
件の聖騎士が召喚され、廷臣が見守る前で神剣がその騎士に渡された時、
英雄王の没後以来、誰も鞘から抜けなかった神器は、その娘の手によって解き放たれたのだ。
剣身から発せられる神々しい霊気は、それが小細工や贋物の類ではない事を証明していた。
もはや、その場の誰も王の主張に疑いを差し挟まなかった。
この国では、救世主である神君ラルゴンの権威は最も重い。
五十年に渡って王国の軍事を司ってきた老元帥でさえ、それにだけは勝てない。
そして神君の勅令として、クルガン王は闇の軍勢への再攻勢を命令したのだった。
確かに勇者が魔王を倒せば、戦いは決着する。
だが、老人は伝説を鵜呑みにするほど甘くなかった。
戦場において『勝てる』と『勝ちたい』の違いを混同した場合どういう目に会うか、
彼ほど熟知している人間は居ない。
なるほど、国王と英雄王の神霊が言うとおり、現在は千載一遇の好機に見える。
勇者という切り札が加わった今、そこを突けば光の陣営の大逆転は起こしうるだろう。
それでもなお、老元帥の心に引っかかる物があった。
雪解けの後に、魔王は王都へ直進しなかった。
そして『古く深き森』を攻める為に、その力を減らしている。
そんな時、丁度良く神君ラルゴンに認められた勇者が現れた。
彼女の働きによっては、戦局に光明が見出される……
(……出来すぎているな。
どうして、ここまで都合の良い話があるものか)
老将には、この一連の出来事が受け入れがたかった。
もちろんこれらは全て事実であるが、戦場での甘い話は十中九まで嘘と罠だ。
根拠は無いが、老人の長い戦歴で鍛えられた勘が告げている。
『魔王は誘っている……
我らが勇者を陣営に加えて攻勢に出る事こそが、魔王の目論見ではなかろうか?』
松明を掲げ、お祭騒ぎに浮かれる市街の様子が窓から眺め、老人はもう一度ため息をついた。
・・・・・・・・・
436
名前:
魔王とヘルミオーネ
[sage] 投稿日:2007/09/01(土) 19:59:07 ID:ScDEhAPl
備蓄を放出し、民草にも光の勇者の出現を祝福させよと命じた国王だが、
彼自身もかなりその恩恵に与っていた。
「うぃ〜〜……」
「陛下、大丈夫でございますか?」
「……ん? この位、何でもないぞ…… 愛しきヘルミオーネよ……」
聖騎士アデラに自ら神剣を授け、正式に光の勇者と認定する儀式を執り行い、
クルガン王は非常に上機嫌だった。
この儀式こそ、彼が英雄王の末裔であり、光の陣営の盟主であることを証明するものなのだ。
不遜な元帥など、今日は単なる一老臣に過ぎない。
「ヘルミオーネ、奴は一日中浮かない顔をしていたぞ……」
「奴とは?」
「元帥よ……! 勇者に主役を奪われて不満なのだろう…… いい気味だなぁ」
叙任式の後に行われた宴で、クルガンは大いに酒盃を傾けた。
これほど陽気な酒はしばらく無かっただろう。
宴の後、飲みすぎて足元も定かではなくなった夫を連れて行くため、
妃のヘルミオーネは自ら肩を貸さねばならなかった。
クルガンは酒癖が良い方ではない。
扱い方を間違えれば、近臣にでも当り散らす人物だ。
なるべく醜態を晒させたくないので、王妃直々に夫に手を貸す。
機嫌の良いまま寝付いてもらおうと寝室へ入った時、
夜の暗闇を繰り抜いたような、漆黒のローブを纏う者がそこに居た。
「な、何だぁ貴様は?」
「さし当たって、お前に用は無い……」
「……へっ?」
黒い装束の袖が一振りされる。
すると、クルガンは何が起きたのか判らぬまま、口を開けた姿で立ち尽くした。
437
名前:
魔王とヘルミオーネ
[sage] 投稿日:2007/09/01(土) 20:00:42 ID:ScDEhAPl
「えっ…… へ、陛下!?」
ヘルミオーネが叫んでも、王はもう微動だにしなかった。
その装束も硬直し、しなやかさの欠片すら失って固まっている。
王妃は夫の変わり果てた肌触りに驚愕した。
「石に!?」
「驚くほどの事もあるまい。石化術如き、見習いでも使う」
低く、冷たい声で語りながら、男はケープを後ろにずらした。
色の薄い頭髪と真白い素顔が露になる。
顔を見た限りでは、ヘルミオーネよりもやや若い。
だが、この男がいつ何処で生まれたのか、知っている者は誰も居ない。
「ヒッ……」
圧倒的な威圧感で王妃の脚が竦む。
男はゆっくりと近付いてくる。
彫像となった夫に縋りつくことで、彼女はようやく立っている有様だ。
漆黒の装束とは対照的に、驚くほど白い手がヘルミオーネの頤に伸びた。
値踏みするかの如く顎を上げさせられ、視線が交わる。
淡く赤みを帯びた瞳に見つめられたヘルミオーネは、勇気を振り絞って警告の言葉を紡ぎだす。
「わっ、わたくしはこの国の王妃ですよ!?」
「知っている」
「ならば控えなさいっ! わたくしにみだりに触れてはなりません!
王妃たる身に対して、あっ余りに無礼な振る舞いっ」
「王たらずば王妃に触れる事が許されぬと言うなら、余にその資格無しとは言えぬ」
「えっ……?」
「……」
男は何も言わず、ヘルミオーネを石になった王から引き剥がす。
そして片手で彼女の体を掴むと、寝台へと放り投げた。
「きゃあっ!?」
狙いたがわず、彼女は夫と自分のベッドの上に投げ飛ばされた。
柔らかい綿入れが落下の衝撃を吸収したため、怪我はない。
それにしても、人を一人軽々と投げて見せた黒衣の男の膂力は尋常ではなかった。
装束の上から見ても、筋骨逞しいとは見えない。
そして、寝台へ歩み寄る男の足音は、異常なほど静かなものだった。
438
名前:
魔王とヘルミオーネ
[sage] 投稿日:2007/09/01(土) 20:03:07 ID:ScDEhAPl
「そ…… そなたは何者ですか!?」
「名乗るべき名は既に持たぬ。
『黒檀の玉座に坐る者』『闇の律法者』『混沌の淵より湧き出でし泡』『至邪の存在』……
好きなように呼ぶがいい」
「まさか……!」
背筋が凍りついた。
最も忌まわしく、かつ恐ろしい名の為に、容易に口からその言葉が出ない。
「ま、魔王……」
最も多くの者が呼ぶ名で、ヘルミオーネは呼んだ。
男は小さく頷くと、再び王妃に手を伸ばす。
ただし、今度は彼女の頤にではない。
細い指がドレスの襟にかけられると、魔王は下着や装身具ごとそれを引き裂いた。
「!?、ヤァーーーッ!!!」
絹の裂ける音に続いて、王妃の悲鳴が響いた。
必死に男の手を押しのけようとするが、か弱い腕での抵抗など魔王には無意味であった。
「やっ、止めなさい! 止めてっ、」
胸元を裂かれたに留まらず、相手の手は彼女の身体に残る布地を力ずくで剥ぎ取っていく。
何とかそれを食い止めようとヘルミオーネは手足を暴れさせ、必死に寝台から逃げようとした。
しかし、魔王は王妃を逃さなかった。
女の身体を覆うように圧し掛かると、その両手首を掴んで動きを封じる。
押さえ込まれた身体が、柔らかいベッドに沈む。
「っ…… はむっ、むむぅ……」
怯える王妃の唇に、魔王は己の唇を重ねた。
夫以外に初めて奪われた唇は、限りなく柔らかかった。
そして、ただ触れ合うだけではない。
唇自身が交わるように相手の唇は蠢き、自分の口中を啜り上げてくる。
舌で口中が舐められ、唇に吸い付かれる。
水音を立てつつ、王妃の口は貪られ続けた。
439
名前:
魔王とヘルミオーネ
[sage] 投稿日:2007/09/01(土) 20:04:24 ID:ScDEhAPl
不自然な事だが、ここに至っても衛兵の一人も来ない。
平常ならば、先程の悲鳴を聞きつけて衛兵が乗り込んでくるべきであったが、
兵士どころか侍従すら現れなかった。
ただし、それを疑問に思うほどルミオーネに余裕はなかった。
許されざる行為に震える王妃の身体に跨り、魔王は女を見下ろしていた。
「……」
黒い装束が、誰の力も借りずに魔王の身体から脱げた。
蝋燭の炎に照らされて、贅肉のかけらさえない白い痩身が露になる。
「あっ、ああ……」
己の身体に与えられる陵辱を予感して、王妃は恐怖のあまり呻き声を漏らした。
「……」
「いっ、イヤぁ!!」
手首を離し、魔王の手は女の胸へ移る。
熟れた果実の如き膨らみをたたえた王妃の乳房を、白い指が握り締めるように掴む。
指先が柔肉の中に沈むように埋まり、形を歪める。
だが、押し潰される痛みと同時に、今まで味わった事の無い感覚が王妃の脳裏を貫いていた。
指の動きは、握り締めただけでは終わらない。
尖端にある突起を摘み、捻り上げる。
「っ、ぁぅ……ん」
その感触は痛いだけではない。
無理矢理に、乱暴に扱われながらも甘い歓びが身体の底から湧き上がる、そんな抓り方であった。
普段、国王はこのように自分を扱いはしない。
夫はいつも自分のやりたい様に、妻の身体を弄り廻す。
だが、今乳房を嬲るこの指は、身体の芯に眠っていた衝動を揺り動かすが如く優しく、
そして力強く食い込んでくるのだった。
痛覚と快楽の境界が曖昧に思えるほど巧みな愛撫を受けて、
王妃の脳裏に激しく警鐘が鳴り響いた。
(ダ…… このままでは駄目っ)
かすかに残った理性が、直ぐにこの男から離れるべきだと告げる。
何故逃げなくてはいけないのか、それは夫ある身として言葉に出来ない理由だ。
440
名前:
魔王とヘルミオーネ
[sage] 投稿日:2007/09/01(土) 20:04:59 ID:ScDEhAPl
「や、止めて下さい……、お願い……」
己の身体を弄ぶ相手に、ヘルミオーネは哀願の言葉をかけねばならなかった。
だが、当たり前のようにそれは無視され、魔王はさらに甘美な責め苦を王妃に与えていく。
「ぁんっ!」
乳首に歯を立てられ、唇から悲鳴が漏れる。
それだけでなく、舌で転がされ、両手で捏ねるように揉みしだかれる。
しかし、両掌で乳房を嬲られることで、ヘルミオーネの手首は自由になった。
男の身体の下から脱け出そうと、精一杯の力を込めて両手を押し出す。
すると簡単に、相手との間に隙間を作る事が出来た。
急いで逃れようとした王妃だったが、ベッドの縁にたどり着くよりも先に、
魔王は素早く彼女の手首を捕える。
そして再び寝台の上に引きずり倒された。
「や……ぃっ!」
後ろから小手を捻り上げられ、無理に動こうとすれば肩が軋む。
男の片手で、ヘルミオーネは身動きを封じられた。
魔王がその気になれば、肩を外すどころか砕く事も容易だろう。
いや、捩り切る事も出来るかもしれない。
だが、王妃を後ろから取り押さえた魔王は、無用の痛みを与えるつもりはないようだった。
空いた片手で、王妃の白磁のような肌を撫でる。
艶のある、滑らかな肌であった。
魔王の白い指が、王妃の背中からわき腹、そして麗しい曲線を描く臀部へと撫で進む。
「はぅっ……」
肌をかすめる様な、軟らかな愛撫。
時折、悪寒にも似た感覚が背筋を走る。
指先は相手の耐え難い場所を文字通り手探りで探し、
女体が震え、呻き声をもらす箇所は執拗になぞり、いたぶる。
撫でられるだけでこれほどの官能が生まれうるとは、王妃はこれまで誰からも教わらなかった。
未知の歓びにわななく身体を楽しむが如く、五本の指は彼女の身体を丹念に撫で回してゆく。
441
名前:
魔王とヘルミオーネ
[sage] 投稿日:2007/09/01(土) 20:06:39 ID:ScDEhAPl
しかし、指が臀部から太腿へ下り、内腿を経て彼女の体の中心へと目指した時、
にわかに彼女に理性の炎が点る。
「止めてっ…… 後生ですから、これ以上は許してっ」
「……」
「それ以上するなら、わたくしは舌を噛みますっ!」
今更ながら、男の指先が夫以外には決して許してはならない場所へ伸びている事に気が付く。
決死の思いを込めて、王妃は叫んだ。
関節を極められて逃げる方法も見出せぬ王妃には、声で相手に訴えるしかない。
「好きにせよ。舌ぐらい幾らでも繋いでやろう」
その無慈悲な宣告が、王妃の意志を打ち砕いた。
自分は自害によってさえ逃れる事が許されないのだと知り、悲哀の涙が滲んできた。
「っ!!、……あうう」
指が、ヘルミオーネの股間の裂け目に触れる。
茂みを掻き分けて、割れた花弁を丹念に弄っていく。
秘裂の上にある突起を魔王が摘んだ時、ヘルミオーネは鋭い叫び声で応じた。
「ひゃっ……!」
既に、花芯は膨らんでいた。
そこを弄りながら、魔王の指は充血した花弁を割ってヘルミオーネの中へ侵入する。
(いやっ、そんな…… そんな所を触らないでっ)
指が膣中をかき回すように動き、蹂躙していく。
陰核に愛撫を受けながら膣壁を弄られ、堪えようのない官能の昂りが沸き起こる。
いつの間にか、王妃のそこは愛液でしとどに濡れて出していた。
442
名前:
魔王とヘルミオーネ
[sage] 投稿日:2007/09/01(土) 20:08:11 ID:ScDEhAPl
「駄目です…… もう、許して……」
もう何度、彼女はこの行為を止めるよう言っただろうか。
それが無意味だと頭のどこかで悟り、哀願の声は途切れ途切れになりつつも、
王妃は繰り返し魔王に懇願した。
しかし、男の指は止まることはなく、さらに指戯を与える。
「あ……うっ、」
ヘルミオーネの身体が小さく震える。
生まれて初めて、王妃は自分の指以外で達した。
背後から彼女の身体を捕らえていた手がようやく離され、王妃はベッドに倒れ込む。
(あっ、貴方……)
視界の端に、石になった夫の姿が見えた。
殺された訳でもなく、かといって自分の妻が敵の手で嬲られるのを見る事も聞く事も無い彼は、
相変わらず間の抜けた顔で虚空を見ている。
石化してしまった事は、いっそ国王にとって幸いだったのだろう。
けれど、夫が側に居るというのに自分が魔王の手で感じてしまったという事実、
それは罪悪感となって王妃の心を責めるのだった。
つい先刻までは、自分が見知らぬ男性に身体を触られるという事など夢想もしなかった。
頼りないとはいえ夫はこの国の王であり、自分はその貞淑な妻の筈だった。
一国の王妃に乱暴を働く者など、彼女は想像さえできなかったのだ。
同時に、自分の身体が他人の手でここまで快感を覚えたということに驚愕していた。
夫の手では感じられなかった愉悦。
自分で慰めるのとは違った、執拗な愛撫が彼女の肉体を蕩かした。
今それを感じながら、熱い吐息が唇から漏れた。
「ぅ……?」
気が付けば、魔王がこちらを見ている。
目が合った時、にわかに王妃は正気を取り戻し、羞恥心と背徳感に心を苛まれた。
(なっ、なんて事をされてしまったのかしら……)
いつも国王と夜を過ごす寝台で、自分は夫以外の男の手で感じてしまったのだ。
さらに、光の陣営最大の敵とも言うべき魔王の手で。
驚き、後悔、自責…… それらがヘルミオーネの心に渦巻く。
だが、女の心中など気にも留めず、魔王は王妃の腰を抱え上げた。
もちろん王妃も抵抗した。
しかし、魔王の腕力に対抗できるほどの力を、王妃は持たなかった。
443
名前:
魔王とヘルミオーネ
[sage] 投稿日:2007/09/01(土) 20:10:18 ID:ScDEhAPl
尻に熱く硬い肉塊が当たる感触が、ヘルミオーネを震わせる。
その意味を悟り、ヘルミオーネは渾身の力で逃れようと足掻いたが、
男根は容赦なく股間の裂け目に埋められていった。
「いやぁっ!」
寝室に、絶叫が鳴り響く。
抵抗も空しく、王妃の秘所は魔王に貫かれた。
夫以外には許してはならない神聖な場所が穢される。
それも、夫の物とは比較にならないほど膣内が拡げられ、奥まで穿たれた。
(……嫌、こんなに奥までっ!)
己の指も、そこまで到達したことは無い。
今まで味わった事の無い硬さで、文字通り子宮さえ押し上げられる感覚。
(あっ、あの人以外の物が、中で……灼けるように……熱い)
ヘルミオーネは、それをまるで燃える杭が突き刺されたかのように感じていた。
未知の衝撃にわななくヘルミオーネの項に、魔王は舌を這わす。
羞恥と動揺で汗が滲む身体を、味わうように舐める。
背後からぬめる舌で首筋を舐められ、肩口を跡が残るほど吸われた。
貫かれたまま、背後から愛撫を受けるヘルミオーネは、その度に拒絶の声を発する。
ただしその声色は、幾分か喜悦が混じっているような、甘さを帯びた声であった。
まだ、貫いたまま魔王は腰を使わない。
女の物が己の身体に馴染むのを待つかのように、そのままゆっくり口付けを与える。
魔王の責めは唇だけではない。
寝台に這う王妃の乳房を搾るように揉み、かと思えば二人が繋がった場所に手を伸ばし、
花芯と花弁を存分に撫でる。
その手練の巧みさに、再び王妃の吐息は荒くなっていく。
「はあぅ、…… はっ、…………… あっ!、ああんっ!!」
男の手が陰核を摘み上げたのと同時に、二度目の絶頂が王妃に訪れた。
一度ならず二度までも、彼女は達してしまったのだ。
444
名前:
魔王とヘルミオーネ
[sage] 投稿日:2007/09/01(土) 20:12:22 ID:ScDEhAPl
「やめ……、これ以上されたら……」
王妃は男の身体が、自分から離れないことに気付づく。
引き締まった魔王の痩身。
背中に圧し掛かる様に触れる冷たく猛々しい肉体を、ヘルミオーネは肌で感じていた。
自分が感じている事を白状するようで、とても口に出せない言葉が喉に詰まる。
(本当に、身体が蕩けて……どうにかなってしまいそう……)
その言葉に出来ぬ声が聞こえたのか否か、魔王の手はヘルミオーネの腰に移る。
秘裂はすでに潤みきっていた。
ゆっくりと、彼女の中から己の陽根を引き出し、再び突き入れる。
肉と肉がぶつかり合う小気味良い音が立った。
「ぃっ……」
膣壁を掻き出されるような感触が、王妃の快楽を掘り起こそうとする。
初めて男女の交わりの意味を知ってから十年間、未だ味わった事の無い官能。
自分は陵辱されているはずなのに、夫との行為で得られなかった歓びを何故感じてしまうのか?
まして、すぐそこに夫の姿があるというのに。
王妃の頬を涙が伝った。
喘ぎ声に嗚咽が混じる…… いや、嗚咽に喘ぎ声が混じっているのか。
自責の念を憶えつつも、王妃の胎内は交わりを求めている。
うねる膣壁は男根に絡みつき、しとどに溢れてくる愛液は、腿を滴り落ちてベッドを濡らす。
魔王もただ単調に奥まで突き込むのではない。
先に行った指での愛撫によって、特に彼女が反応したところを重点的に擦り上げるように突く。
深く浅く、緩急をつけた交合で、だんだんヘルミオーネは登りつめていった。
「あ、なたっ……!、わたくしをっゆ、許してっ…………」
最後に、かすかな呟きが王妃から洩れた。
寝室に響く肉の衝突音は、次第に速さを増してゆく。
もはや王妃の唇からは、意味を成す言葉は出なかった。
ただ肉の歓びに震える女の喘ぎと呻きを発するのみだった。
かってないほどに高められ、自分が自分でなくなるかのような開放感。
上っていくような、落ちていくような感覚。
「あ、あああああぁぁーーーーーーーっ!!!」
身体の奥底に熱い迸りを受け止めた感触と同時に、王妃はそこに到達したのだった。
法悦の波に揉まれ、獣のような叫び声をあげて王妃は気を失った。
・・・・・・・・・
445
名前:
魔王とヘルミオーネ
[sage] 投稿日:2007/09/01(土) 20:15:28 ID:ScDEhAPl
意識を失ってベッドに横たわるヘルミオーネの横に、魔王は何も言わずに座していた。
そこに、屋外から少女の悲鳴が響いてくる。
耳を澄ませば、それは寝室の上方より王宮の屋根から屋根へ、次第に近付いてくる。
それを聞き、魔王は露台の方へと白い顔を向ける。
程なく、悲鳴の張本人と原因がそこへ現れた。
首筋にしがみ付いた少女を乗せ、金色の毛をした剣牙虎が寝室のベランダに音も無く降り立つ。
「ティラナさま…… もう少し優しく飛び跳ねて頂けませんか!?」
「ぶつくさ抜かすなっ。本来なら妾は、魔王以外の奴を乗っからせたりはせんのじゃぞ!」
「ひゃん!」
ティラナの背から、連れ戻された端女が床にふるい落とされる。
剣牙虎は寝台に坐る魔王と、その横で裸で寝そべる王妃の姿を目にし、
しゃがれた老婆の声で毒づいた。
「まっこと、つくづく王とは良い身分よなっ。
妾にこいつを拾いにやらせて、自分は美女とお愉しみか?」
「無聊を持て余すは性に合わぬ故な」
「けっ、石になった夫の前で妻を組み敷くとは、ご大層な暇つぶしがあったものよ!」
「たまには趣向を変えて契るも一興」
「ぐるるるる、」
不満そうに喉を鳴らすティラナだったが、魔王はまるで意に介さず、黒装束を再び纏う。
その時、石造りの屋根を走る革靴の音が天井を鳴らしたかと思うと、
先に剣牙虎が現れたベランダに、今度は光り輝く剣を携えた女騎士が降り立った。
「魔王っ、やはり貴様の差し金か!?」
「……生身で会うのは久しぶりだな。アデラ」
「ひつこい小娘じゃ。
魔王が戦いを禁じてさえおらねば、その腹噛み割いて五臓を撒き散らしてやったものを」
ティラナは忌々しそうに呟いたが、アデラの眼中には魔王の姿しかなかった。
間合いを確かめつつ、神剣を構える。
そんなアデラを前にしても、魔王は落ち着き払って言った。
「止めておけ。今宵はそなたと刃を交えに来た訳ではない」
「例え貴様にその気が無くとも、見逃せると思うのかっ!?」
「どうしてもと言うのなら、一戦交えても構わぬが……」
グ オ オ ァ ア ア ア ル ル ゥ ー ー ー ー ッ !!
突如、雷鳴にも似た轟きが王宮、そして王都全体を鳴動させる。
「っ、これは!?」
「竜族の始祖が嫡孫にして、今活動期にある竜の中で最も古きドレイク……
『煉獄を運ぶ者』の銘を冠する暗黒龍の嘶きだ」
魔王は窓の外を指差した。
禍々しい光を放つ星が天空を遊弋している。
地上の人間たちが、それが龍の瞳であったと気が付いた時、
ドレイクの大火炎が市街を焼き尽くすために放たれた。
446
名前:
魔王とヘルミオーネ
[sage] 投稿日:2007/09/01(土) 20:17:11 ID:ScDEhAPl
「何だと!?」
「人間族が地上に創られた頃、既にあれは空の王者であった。
その力は、魔王を名乗りし歴代の者どもにおさおさ引けをとらぬ。
先代の魔王でさえ、あれの休眠期を襲ってようやく巣穴から追い払った程だ」
「それは、父上が攻め入った時に偶然奴が休眠期だったのじゃ!」
ティラナが即座に弁解するが、アデラにとってそのような事は少しも重要ではなく、
魔王は全く剣牙虎の言葉を無視した。
「百万の大軍を擁したとしても、雑魚どもでは敵にならぬ。
退ける術があるとしたなら、勇者たるそなたの力が不可欠であろうよ」
「……」
「それでも尚、余との決着を優先したいのならそれも良し。
今宵ここで光の勇者を屠り、王都を灰燼と化し、ラルゴンの王統を絶やし、
光の勢力の命脈全てを断ってくれよう……」
それだけ言うと、剣牙虎の背から振り落とされたフィリオの体を拾い上げる。
静かに、そして無造作に魔王はアデラの横をすり抜けた。
「クッ!」
アデラは歯を噛み締めた。
ドラゴンのことを差し引いても、無謀だとは理解できる。
ここには王妃と国王が居る。
彼らを巻き込まず、魔獣と魔王を相手に戦うのはおそらく無理だ。
さらに剣牙虎を追って屋根を飛び廻ったため、自分は甲冑はおろか盾さえ身に着けていないのだ。
相手の掌の上で好い様に転がされる屈辱に、アデラは歯軋りするのだった。
「では、またの邂逅を楽しみにしているぞ。勇者アデラ」
「がるる」
「アデラさま、どうかお達者でーー……」
主の両腕に抱えられながら、フィリオは手を振ってアデラに別れを告げる。
二人と一匹の姿は、露台からそのまま夜の闇へ消えていった。
・・・・・・・・・
447
名前:
魔王とヘルミオーネ
[sage] 投稿日:2007/09/01(土) 20:22:12 ID:ScDEhAPl
『小癪な地虫風情メガ!!』
ドレイクは怒っていた。
鱗には、十数本の弩の矢が突き刺さっている。
己に歯向かう人間どもに懲罰を喰らわすべく、
喉を駆け上ってくる灼熱の炎を、ドレイクは存分に吹き付けた。
(しまったっ!)
とっさに回避体勢を取るが、炎から逃げるのが一瞬遅れた。
深手を覚悟したアデラであったが、何故か身体に当たる直前で炎が逸れた。
「おおッ! さすが勇者だっ。あの猛火にも焼かれないとはっ!」
「勇者アデラには英雄王ラルゴンのご加護があるのだ!」
「全員ドラゴンなど恐れるな! 我々には勇者が居るぞ……」
王都を囲む胸壁の上より、はるか遠方で繰り広げられる戦闘を眺める二つの影があった。
「今のはお主の仕業か?」
「いや、昼間会った女術師だ」
彼らの周りには、人型の黒い炭跡が点在している。
それらは魔王の呪力によって消滅した、警護魔道士の成れの果てだった。
ドレイクの来襲で手薄になった監視網を、魔王とティラナは易々と抜けた。
「よもやとは思うが、魔王よ。
初めからあの娘に『龍殺し』の武勲を建てさせてやる心算ではなかっただろうな?」
「……」
「神剣を手にしているとはいえ、兵の末端まで心服させた訳ではない。
勇者としての資格に疑いを持つ者も居るだろう。
だが、万民の前であの古龍を倒せば、光の勢力全てをその剣の下に集めうる。
まさか、此度の微行はそれを目論んでではあるまいな?」
金色の瞳が、疑うように漆黒の王を見つめた。
448
名前:
魔王とヘルミオーネ
[sage] 投稿日:2007/09/01(土) 20:22:58 ID:ScDEhAPl
「あれとて神代より生き延びてきた純血の竜族。たとえ勇者だろうと容易く屠れるものではない」
「それはそうじゃが……」
「仮に、『その通り』と言えばどうだというのだ? 」
「ふんっ!」
一瞥さえ与えず、魔王はティラナに冷たく言い放った。
まるで『差し出口を挟むな』と言わんばかりの態度に、剣牙虎はふてくされて顔を背ける。
「……フィリオ」
「は、はいぃっ?」
不意に主君に話しかけられ、フィリオは驚愕して声が上ずった。
「アデラの様子はどうであったか?」
「えっ、その、アデラさまですか……
お食事やお風呂の世話も出来なかったので、よくは判りませんでしたが……」
「……」
「冬の前にお別れした時と、あまりお変わりなかったような……」
「そうか」
それだけ聞くと、再び魔王は沈黙し、竜と勇者の戦いに目を向ける。
その時、風に煽られて漆黒のケープが僅かにたなびいた。
抱きかかえられていたフィリオだけが、偶然主の顔を垣間見た。
だが、彼女が主の表情の意味を知ったのは、魔王と勇者の再戦の後になるのであった。
(終わり)
449
名前:
投下完了
[sage] 投稿日:2007/09/01(土) 20:24:45 ID:ScDEhAPl
保管庫復活ありがとうございいます。
こんな長く一つの話を書いてると、保管庫の存在が非常にありがたいです。
このスレから読み始めた人には、ティラナと剣牙虎の関係が判らなかったりするでしょうから。
450
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/01(土) 20:35:15 ID:76CH0Zkl
リアルタイムでGJ!
451
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/01(土) 20:45:19 ID:jCoQ7YOI
GJ!
駄目男とその奥さんという組み合わせは好きです
452
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/02(日) 00:15:24 ID:kAPnNHr2
GJ!!
魔王テラカッコヨス(`・ω・)
453
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/05(水) 18:17:25 ID:VIzZnuqq
アビゲイル待ち保守
454
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/07(金) 12:26:13 ID:wbSjW8Ld
ヘタレ魔王待ち
455
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/07(金) 19:24:04 ID:X8k6cJVz
アシュレ待ち
456
名前:
名無しさん@ピンキー
[] 投稿日:2007/09/08(土) 01:13:30 ID:x+gebmkW
アリューシア待ち
アリューシアがひょんな事から、慣れない正装(女装)で仕事するハメに…な〜んてシチュをキボーン!
このシチュでの2人の反応を妄想して妄想してたまらんのです(*´Д`)ハァハァ
作者さん、もしこのシチュおkなんて思ってくれたら書いてほしwww!!
いつになってもいいですので。
457
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/09(日) 11:12:36 ID:zxkljDRK
>慣れない正装(女装)で仕事するハメに…
女騎士が女装でする仕事って、例えばどんな仕事がありますかね
458
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/09(日) 11:37:48 ID:0QKZ8q/P
明らかに護衛と分かる者は参加できないお姫様主役の伝統行事とか、
政敵を油断させるために侍女に扮してマルゴット姫に付き添ったりとか・・・?
459
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/09(日) 11:41:17 ID:+LiTODKU
>>457
パーティー(例:グローランサー
460
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/09(日) 14:42:14 ID:h9qG42fl
誰か偉そうな人の婚約者のフリとか。
461
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/09(日) 21:39:33 ID:qPri9AqV
主の婚約者の護衛として侍女となるとか。
婚約者が狙われているとかで。んでその婚約者が一癖あって主従の中に気づいて・・・とか。
462
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/10(月) 00:47:42 ID:WJfiMcsR
>>458-461
なるほど。参考にさせてもらいます。
ただ、きちんとした作品として書けるかどうかはわからないので
待たずに忘れてください、と勝手ながらお願い(申し訳ないです)
とりあえず、レスありがとう。
463
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/10(月) 11:22:50 ID:WJfiMcsR
保守
464
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/12(水) 18:03:28 ID:nBupp+Bh
保守
465
名前:
名無しさん@ピンキー
[] 投稿日:2007/09/13(木) 20:42:36 ID:I5KbEaKK
アリューシアの男友達に焼き餅を焼くグルドフが見たいです
466
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/14(金) 23:33:07 ID:Zdjuo4o5
アリューシアくるー!?のんびりと松
467
名前:
追う一人
[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 11:39:53 ID:+Afonf7L
エロナシ保守ss投下。
騎士VS女騎士のバトル物です。
以前姫スレに投下したssのオチに当たりますが、
今回の主役は女騎士なので他の職人様の投下を待つまでのおつまみにどうぞ。
剣戟が好きな方にオススメ、つーかチャンチャンバラバラが嫌いな人は読まない方が……
チャンバラ 七割
せつなさ 一割
その他諸々二割
エロ 零割
468
名前:
追う一人
[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 11:40:40 ID:+Afonf7L
空気を切り裂く飛来音が国境の峠道に鳴ったと同時に、
突如として男の乗る馬はもんどりうって倒れた。
「うぉ!?」
崩れ落ちる馬体から危うく逃れ降りる。
見事な身ごなしであった。
心得のない者であれば落馬の拍子に身体を打っていただろう。
「レド! 大丈夫ですか!?」
恋人の馬が倒れたのを見て、アイリス姫も鞍から降りて彼の側に駆け寄った。
「怪我はありませんか?」
「ご心配なく…… どこも打っておりません」
主を安心させるため、レドリックは笑いを浮かべてそう答えた。
その笑顔が、倒れた馬の首筋に太矢が突き刺さっているのを見て翳った。
「……」
峠を越える街道の先に目を向けると、岩陰から現れた女が一人、こちらに向かって歩いてきた。
整った顔立ちだが険のある眦をした女だった。
女にしては背が高く、並の男たちと同じ位もある。
長い髪は後ろで束ね、そのしなやかな身体を軍服に包んだその姿は、
美女というより稀代の美丈夫と言った方が相応しいかもしれない。
胸には、かってレドリックが下げていた物と同じ徽章が付けられている。
「遅かったな」
「……お前は速かった、ラーズ」
「馬を七頭ほど乗り潰したよ」
最も会いたくない人物が、二人の目の前に立ちはだかった。
そもそも今回の逃避行の成算は、この女剣士が国内に居ないということが前提だったのだ。
469
名前:
追う一人
[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 11:41:52 ID:+Afonf7L
「ラズリッサ……」
「ジャッロとオランジは死んだ。クラーネスも長くは持たんだろう」
石弓を地に放り、女騎士は腰に下げた曲刀を抜く。
「かって列国を震え上がらせた七剣士のうち、残ったのは私とお前の二人だけになったな」
「……」
「そして、この場で一人になる」
「言い訳になるが、彼ら相手では手加減はできなかった」
レドリックの前に立ちはだかった女は、その瞬間だけ追憶に浸るように瞳を閉じた。
だが、それはほんの僅かな時間であった。
先日までの戦友に剣先を向け、女騎士ラズリッサは宣告する。
「……元近衛騎士団筆頭剣士レドリック。
アイリス王女を宮廷より攫い、多数の将兵を殺傷せし反逆により、この場で貴様を斬る」
「姫、お下がりを……」
「レド……、ラーズ……」
レドリックは剛剣『墓碑銘彫り』を抜くと、王女を背に隠す形で元同輩と対峙した。
この女騎士相手に口舌を尽くしても無意味だという事は、長い付き合いで承知していた。
「裏切り者め…… 貴様が斬った同胞達の血。その命で償え」
「何と罵られようと俺は姫に剣を捧げた身。たとえお前だろうと、邪魔する者は退ける」
厚味の大剣を上段に振りかぶり、レドリックは構えた。
甲冑で全身を固めた戦士ですら、その一撃は両断する。
対するラズリッサの刀は、『墓碑銘彫り』に比べれば針金のように細い。
だが、その威力を一番知っているのはレドリックだった。
その細身の刀は『伊達男』の銘を持つ。
「七剣士」を制定した先代の王は、女騎士の剣にそう名づけた。
由来を知らぬ者が聞けば、騎士の佩刀に相応しくない銘だと思うだろう。
だが、多情な男は多くの女を泣かせる。
この刀も、これまで数知れない女たちを哭かせてきた。
それは愛する者を失って嘆く、遺された妻女の涙を諧謔的に表現した銘なのだ。
動いたのはラズリッサからであった。
飛ぶ鳥のように滑らかに、羽ばたきのように素早い打ち込みがレドリックを襲う。
それも、一撃ではなく三太刀。
アイリス姫は、鋼と鋼がぶつかる音を二度聞いた。
レドリックは初太刀を『墓碑銘彫り』の陰に身を隠して受け、次の崩しの一手は皮一枚の所で躱し、
三撃目は相手の刀を砕き散らさんとばかりに打ち返した。
尋常の相手であれば、ここで武器をへし折られるか飛ばされるかして終わりだ。
だが、彼と並んで七剣士中の双璧と謳われた女剣士は、その一閃に刹那に対応した。
男の意図を悟った瞬間、踏み込みと握りを緩め、『墓碑銘彫り』の一撃を『伊達男』の鎬で受けた。
むろん、渾身の剛剣をただ受けただけでは、細身の刀が折れるか曲がる。
連撃から防御に転じたラズリッサは、敵の攻撃の勢いを殺す最適の位置と角度に
瞬時に愛刀を持ち替えてさえいた。
470
名前:
追う一人
[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 11:42:52 ID:+Afonf7L
衝撃を受け流すために、ラズリッサは数歩飛びずさった。
再び二人の間に間合いが広がる。
「フッ……」
女は笑った。
男は笑わなかった。
互角に見えた先程の応酬だったが、レドリックの背中に寒気が走る。
女剣士のニ撃目を、彼は完全に見切った心算だった。
だが、彼女の太刀は予想を上回って伸び、彼の肌を裂いた。
さらに三撃目に至っては、完全な斬り返しの反撃に絶妙な対応を見せ、余裕を持って退いた。
「……腕を上げたな」
「私も昔のままの私では無い」
レドリックはここに至るまで数多の追手と闘い、手傷を負っていた。
しかし、ラズリッサも一週間昼夜を分かたず馬を駆り続けた疲労がある。
双方とも万全の体勢でなく、不利な要素は五分と五分。
ならば敵に見切りを誤らせた分、ラズリッサがこの時優勢を占めていた。
「いくぞっ」
「っ!」
レドリックはうかつに踏み込めない。
代わりにラズリッサが再び切り込んでいった。
今度は一呼吸のうちに、三太刀どころか七太刀。
「あっ!」
アイリス姫が驚嘆の叫びを上げた瞬間には、既に打ち込みは終わっていた。
一つとして同じ角度で放たれるものは無く、上下左右に敵の意識を振り回しつつ襲い掛かる斬撃。
その内五太刀は受けるか逸らしたものの、残りのニ太刀がレドリックの身体に当たっていた。
「ぐ……」
浅手に終わったが、少し見切りが誤れば致命傷になりかねなぬラズリッサの刀勢。
今度はレドリックが退いて間合いを外す。
七剣士の筆頭騎士が後退するなど、未だかってありえぬ光景であった。
471
名前:
追う一人
[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 11:43:43 ID:+Afonf7L
「殺す前に聞いておく。何故姫と逃げたのだ?」
「……」
「お前が姫に懸想していたのは知っていた。だが所詮は臣下の身。
叶わぬ望みである事は承知してただろうが?」
「俺は騎士として王国に命を捧げると誓ったが、心はアイリス姫に捧げた。
王国への献身と姫への忠誠は矛盾しない……
そう思っていたのだが、運命というものはそう単純ではない」
裏切りの理由を話すレドリックの顔は、誇らしげに微笑でいた。
「俺が諦めてしまった事を、姫は命じて下された。
『王国への忠誠よりも、私を選んで欲しい』と仰ったのだ。
全てを捨ててでも守るべきもの……それが分かたれてしまった時はどうすればいい?
「……」
「俺は気が付いてしまったのだよ。
全てを捧げるべきものは、アイリス姫に他ならぬという事に」
「……我ら将兵が駒として戦場で命を賭すが如く、姫にも王族としての責務が有る。
主が道を誤ろうとしたのなら、お諌めするのが臣の道ではないか」
「人は二つの道を同時に歩めないのだ。選んでしまった以上、俺は姫の想いに殉じる」
「……レド」
主君のために戦うのが騎士の義務、
愛する貴婦人のために戦う事は騎士の本懐。
分かたれた二つの内、レドリックは姫を選んだのだった。
「姫は俺に泣いて縋って下された。
俺は自分が愛し、剣を捧げた方の涙を止める為なら何でもしよう」
「それが……たとえ国を捨て、己の責務を捨てる事になってでもか?」
「そうだ」
「部下を、私……私たち生死を共にした仲間を斬ってでもか!?」
「……ああ、何とでも罵るがいい」
レドリックは剣を構え直した。
己が心中を吐露したその姿からは一切の気負いが消え、静かな殺気が辺りを満たした。
恋人の言葉を聞いた王女の顔に喜色が浮かび、対照的にラズリッサの表情が歪む。
「聞いておくものだな……やはり貴様は生かしておけぬ」
「……」
「国を捨て主家を捨て、同胞を手に掛けて愛に生きるなど、私の道が許さぬ。
もはや貴様が死ぬか、私が死ぬかだっ!」
ただでさえ険しいラズリッサの眼差しが、抑え切れない憤怒に逆立つ。
燃え滾る殺気が剣先から迸った。
472
名前:
追う一人
[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 11:44:41 ID:+Afonf7L
「シャァーーーーーーーーーーーーー!!!」
気合と共に、陽光を浴びて煌く『伊達男』が稲妻の如く宙を裂く。
それを『墓碑銘彫り』はことごとく、しかし辛うじて受け流した。
途切れることなく、斬撃は続く。
一拍子七太刀の紫電の刀勢が幾十度打ち込まれたか、
傍らで愛する男の身を案じて凝視していたアイリスでさえ数える事は出来なかった。
「どうしたっ!?攻め返してみろっ!」
「……」
嘲るように、ラズリッサが咆える。
呼吸を整えるために相手が退いた時でさえ、レドリックは攻撃に転じようとしない。
余りに迅い太刀捌きを前に、成すすべも無い……誰が見てもそう思う状況だった。
だが、一方的に攻勢に出たラズリッサの頬を汗が滴った。
女性らしい膨らみを隠す軍服の奥で、心臓が早鐘のように鳴っている。
これまでの戦歴で、ラズリッサは大抵の敵を一太刀も合わせさせぬまま屠った。
残る敵も、彼女に三太刀使わせる程の猛者は稀であった。
一拍子で七太刀を浴びせる秘剣を一対一で使わせる相手は、同輩である七剣士に限られていた。
それももっぱら模擬刀を用いての稽古だ。
密かに目線を向け、利き手に握る愛刀の状態を確かめる。
亀裂は無い。
ただ、微小な刃毀れが生じていた。
「……小ざかしい真似を」
相手の戦法を悟り、ラズリッサはそう吐き捨てた。
強者ぞろいの七剣士の中でレドリックが筆頭を勤められたのは、
剛剣を時に速く軽く、時には遅く重く、状況に応じて自在に操れるが故である。
大陸に冠絶する神速の太刀でさえも、守勢に徹したレドリックを切り崩せない。
このまま刃を交わし続ければ、細身の『伊達男』の刀身が耐えられなくなるだろう。
レドリックは刀を折って勝つ事が出来るが、ラズリッサには出来ない。
命をかけた戦場では、得物の差で勝つことも卑怯ではないのだ。
ラズリッサが勝つためには、相手の防御を斬り破らなければならない。
それには相当深い踏み込み──
致命傷を与えられなかった時は、反撃を覚悟せねばならない程の踏み込みが必要だ。
その一瞬こそ、レドリックの狙いであった。
「……」
「……」
二人ともそれを承知しているが故に動けない。
ただ、剣気の応酬は続く。
一足一刀の間合いから、誘い、虚勢、擬態、惑わし、晦まし……
高密度な鬩ぎあいが飛び交っていった。
473
名前:
追う一人
[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 11:45:46 ID:+Afonf7L
それを傍から理解することは、例え達人でさえ無理であったろう。
まして、剣の心得のないアイリスには不可能であった。
(何とかしないと、レドが……)
彼女の目には、レドリックが戦略的に五分の状況に持っていった事が見えなかった。
まだレドリックの剣は相手の身体に触れてさえいないのだ。
逆に恋人の身体には無数の切り傷が生じている。
流れ落ちる血の赤さが、王女を怯えさせていた。
かといって、アイリスは加勢できる力を持つ訳ではない。
愛する男に命をかけさせたまま守られるだけの自分が、あまりに不甲斐なく思えた。
(……)
ゆっくりと、ラズリッサは間合いを詰め始める。
摺り足が間合いを縮めるごとに、殺気はいよいよ濃密になってゆく。
必死必殺の一撃を繰り出せる距離にまで、潮が満ちるが如くじわりじわりと進む。
レドリックは動かない。
それをアイリスは『動けない』と見た。
尋常の撃尺を踏み越え、さらに半歩。
不意に、二人の殺気が消失した……昂りで剣先を鈍らせぬ為にだ。
最早アイリスにさえ判った。
(次の一歩で、どちらかが確実に死ぬっ……!)
己の為に全てを捨てた男が、命まで落とそうとしている──
アイリスは鮮血を迸らせて倒れる恋人の姿を想像した途端、
まるで憑かれたかのように奔っていた。
「!!」
「!?」
「レドっ、今ですっ!!」
王女はラズリッサの身体に飛び付いた。
まさに、二人が最後の剣を交えようとしていた一瞬だった。
その瞬間、一方は剣を止め── もう一方は止めなかった。
無我夢中で取ったアイリスの行動が、最強剣士同士の勝敗を決した。
474
名前:
追う一人
[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 11:47:15 ID:+Afonf7L
「ぐァッ……」
鋼鉄が、柔らかい肉を割いた。
ラズリッサが七剣士に任じられたのは、比類なき身ごなしの速さ故である。
しなやかに鍛え上げられ、飛天に準えられる鋭い動きは、戦場で多くの敵を葬り去っていた。
その瞬間、王女に抱きつかれたラズリッサは、間違いなく動きを鈍らされていた。
「……」
「レドリックっ?」
アイリスは愛する男の側に駆け寄る。
レドリックの瞳からは、まだ闘志が消えていない。
仕留め損ねた相手を睨み据え、剣を構え直そうとする。
「……止めておけ、片目では私に勝てん」
レドリックは熱い血潮が顎を伝うのを感じた。
左目を縦に切り裂かれ、滴り落ちる血の雫が地面を濡らす。
勝ちを拾ったのはラズリッサであった。
あの一瞬、愛する女を巻き込むことを恐れ、レドリックは『墓碑銘彫り』を止めた。
『伊達男』は、その隙を見逃さなかった。
躊躇無く、ラズリッサは剣を振るった。
王女の腕で抱き締められた分、致命傷に至る傷は与えられなかったが、
それさえ女騎士は計算して、確実に戦力を奪う一刀に太刀筋を転じていたのだった。
「駄目っ!レドリックを殺させはしません!!」
傷ついた恋人を背に庇う様に、アイリスはラズリッサの前に立ちはだかった。
「どうしてもレドリックを殺すというのなら、まず私を斬ってからになさい!」
「……それでも構いませんよ。
父上からは『たとえ骸に変えてでも連れ戻せ』と勅を得ております」
「くっ……」
「お下がり下さい。まだ俺は負けてはいません」
475
名前:
追う一人
[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 11:48:19 ID:+Afonf7L
愛する王女を守るため、再びレドリックは敵の前に身を晒そうとする。
「駄目ですっ!その傷では……」
「なんの、これしきっ……」
互いに庇いあう恋人達の間を切り裂くように、ラズリッサの太刀は再び煌いた。
「うぉっ……」
「レドっ!?」
死角から繰り出された神速の剣先は、レドリックの右肩を刺していた。
アイリスの金髪が数条、斬られて風に舞う。
ただし、精妙なる太刀筋は、王女の身体には触れさえしなかった。
「色恋に迷って判断力も失ったか?
隻眼で観る鍛錬もせずに、私の太刀が見切れるとでも?」
冷たく、ラズリッサは事実を指摘した。
それでも、レドリックは敵に立ち向かおうとする。
アイリス姫はそれを必死に押し止めた。
先程は敵を止めるために抱きついていた王女が、
皮肉にも今は恋人を死なせないために同じ行為をしているのだった。
「だめっ、だめっ!」
「姫……しかし戦わなければ、俺たちに未来はないのですよ……」
「だめっ、だめっだめっだめぇっ!」
それがどれほど正論であっても届いていない。
彼女の脳裏にあるのは、これ以上恋人を戦わせたくないという一心だった。
「アイリス様、もし貴女が国にお戻りになるのなら、その男を殺さずにおいても構いません」
「っ!?」
「王には『追跡中、レドリックは谷間に落ちた。骸は引き上げられなかった』と報告しましょう。
ただし、貴女が此奴への思いを全て断ち切り、北国への輿入れを承諾するのが条件です」
「……」
「なりませんっ、姫っ…… っぅ!!」
無慈悲な刃が、今度は男の左肩を刺した。
「貴様は黙っていろ。決めるのはアイリス様だ」
「……もし断れば?」
「まずその男を殺します。どうしても国に戻らないとなれば、貴女も殺します。
王は『逃げ切れぬと悟ったレドリックが娘を害した』と公表なさるでしょう」
476
名前:
追う一人
[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 11:50:31 ID:+Afonf7L
しばしの沈黙が三人を覆う。
だが、ついに王女がそれを破った。
「……判りました」
「姫っ!?」
「私が犠牲になれば、レドは見逃すのですね?」
「騎士の名誉にかけて誓いましょう」
「いけませんっ、姫……」
「ごめんなさい、レドリック……私はこれ以上貴方を戦わせることが出来ません」
それは、悲壮なる決意であった。
「貴方は私の為に全てを捨ててくれました。
地位も、名誉も、祖国も……でも、生命だけは捨ててはなりません」
「……」
「心の弱い私を責めても構いません。貴方は私の命よりも大切な人。
例えこの身がどうなろうと、貴方の死よりも辛い事はないのです……」
アイリスは恋人を抱き締める腕に力を込める。
もう二度と、愛しい男と抱き締めあう機会はないだろうと思うと涙がとめどなく流れた。
「もっと早くこの事に気が付いていれば……」
「……アイリス」
どちらからという事も無く、二人はキスを交わした。
何時終わるとも知らぬ、深い口付けだった。
「愁嘆場はその辺にして頂こうか」
「ラーズ……お前との決着は何時の日か必ず付ける」
「こちらは貴様の面なぞ見たくもない。二度とこの国に脚を踏み入れるな」
敵意に満ちた遣り取りの後、レドリックは王女の耳元で囁く。
(必ずお迎えに上がります……どうか、その日まで時間を下さい)
その囁きで、アイリスはようやく涙を止める事が出来た。
そしてそのまま、国境線の向こうを目指して一人歩いていくのだった。
男の背が見えなくなるまで、残された二人の女がそれを見つめ続けていた。
477
名前:
追う一人
[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 11:51:48 ID:+Afonf7L
「さて、そろそろこちらも引き上げるとしましょうか。
どうか約束を違えられませんように。
さもなくば、今からでもあの男を殺しに行きますよ」
「ラーズ、所詮貴女には判らないのでしょうね……
愛する人と引き裂かれ、彼の命を守る為に望まぬ男の元に嫁がねばならぬ女の気持ちなど」
急かす追っ手に皮肉を込めて、アイリスは言った。
その言葉を聞いた瞬間、ラズリッサの表情が変わった。
「貴女こそ……」
「えっ?」
「貴女こそ、お判りになりますまいなっ!
愛した男が別の女の為に裏切り者となり、その手で彼を斬るように命じられた──
そんな女の気持ちなぞっ!!」
「ラ、ラーズ……?」
ラズリッサから伝わるもの、それは憎悪と敵意だった。
今まで誰からも、アイリスはその様な目を直接向けられた事は無かった。
たじろぐ王女に背を向け、ラズリッサは馬を引きにゆく。
「詮無きことを申しました。どうかお忘れ下さい」
「……」
「アイリス様、上手く口裏を合わせて頂きますよ。
もし今日の事が発覚すれば、三人に待つのは破滅です」
もう女騎士は普段の声に戻っていた。
だが、その日ラズリッサは王女と顔を合わせようとしなかった。
逃げた二人も、追った一人も、誰もが心を引き裂かれたまま、この峠道を降りていった。
478
名前:
追う一人
[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 11:52:43 ID:+Afonf7L
追記
アイリス王女
七剣士レドリックの反逆から救出されたアイリス姫は、北国の王子の元へ嫁いで行った。
南北の和解を象徴するその婚儀の盛大さは後世の語り草となった。
輿入れから三年後、夫の即位に伴い王妃に冊立される。
さらに一年後、王位継承者となる男児を生むも直後病に倒れ、生後六ヶ月の息子と共に死去した。
ただし、葬儀に当たって母子共に死体が公開されなかった事が、
宮廷陰謀説等、様々な憶測を生んだ。
また、彼女の死を契機に南北の関係が急速に悪化。
半年後には六年ぶりに国境地帯での紛争が勃発し、
以後十数年にわたる『北方戦役』の引き金となった。
ラズリッサ
レドリックの反逆で崩壊した七剣士は、その後再結成される事は無かった。
だが、王国最強剣士となったラズリッサに国王が寄せる信頼は厚く、
王女救出の功により、王族以外では二例目の女性将軍となる。
『北方戦役』においても活躍し数多の武勲を立てたが、
開戦から六年目の冬、戦傷の悪化が原因で陣没した。
死後、特例として爵位を追贈されるが、生涯未婚であったため七歳になる養子が家門を継いだ。
レドリック
アイリス姫誘拐事件の後、近衛騎士団長レドリックについての記述は両国の正史に登場しない。
ただし、『北方戦役』前後における諸国の野史に、
『隻眼の剛剣士』についての伝承が僅かに散見される。
(終)
479
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 14:42:22 ID:9B03z+am
GJでございます
480
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 15:24:01 ID:pemdSGkZ
オリジナルの方は知りませんが、
チャンバラに血沸き肉踊りましたw GJ!
王女さまと彼女に忠誠を誓った騎士って
ものすごくツボなシチュなのに、このお姫様には
どちらかというとムカついた、かな。
反対に女騎士さんの想いにぐっときた。
ストイックな人が好きなのかも。
481
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 16:43:48 ID:9B03z+am
この話で真っ先に連想したのがアーサー王伝説のランスロットだったりする
主君と貴婦人剣をささげた二人の人間の利害が対立するのは
騎士物語の定番ですね。ラズリッサが養子を迎えるときのエピソードが気になる
482
名前:
名無しさん@ピンキー
[] 投稿日:2007/09/15(土) 23:39:44 ID:WEh4IHSI
確かに愛しの王女はちと身勝手、その女の為にレドリックも同僚殺しすぎ
そのせいで悲劇のカップルに感情移入できなかったなぁ
ラズリッサは文句無しにカッコイイ女
483
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 00:15:48 ID:N7C97SKo
そうだねえ、よく書けてるんだけどなあ。
恋のために全てを犠牲にするってのが…書いたの女の人なのかなあ
484
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 00:49:49 ID:uwAAlroF
まあファンタジーでくらい、いいじゃない
485
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 10:08:51 ID:qGzznNho
アイリス姫とレドリックは評判悪いな。
>>480
まだ保管庫は完全復旧してないようですが、これの前編は読めますよ。
486
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 11:40:28 ID:wpO3ZRZd
>>485
読んできましたありがとう
以下チラシの裏
アイリス姫の方はなんか自分のした事の重大さをわかって無かったというか
レドリックが同僚と殺しあわなくてはいけないもしかしたら殺されるかもしれない
ということを想定してなかったと思うんだ。そう考えてしまうと生死をともにした
同僚すら切り捨てるレドリックのアイリスへの愛>アイリスのレドリックへの愛
なんじゃないかとすら思える。いったん王女のあら捜しを始めると
レドリックを守るために逃亡を諦めた行為でさえ同僚の犬死感を強めて
しまった感じがある。逃げられなくなったら二人で自害しろといってるみたいで
自分でいってても無茶苦茶な意見ではありますが…
487
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 23:00:20 ID:f0o0OlfW
ここは女兵士スレなんだからキャラ立てが成功してると思うよ。
乙
ところでばーさんや、他のおなご兵士はどこに行ったんかのぅ。
488
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 23:11:01 ID:0yTaoNuy
乙!
489
名前:
邂逅]
[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 00:22:04 ID:jsr091sn
んばんわ〜
人大杉で、苦労しております・・・
]投下しますね。
490
名前:
邂逅]1/4
[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 00:26:59 ID:jsr091sn
整わない呼吸にもかかわらず、深く口付けを求める。空気より、女の唇が魅力的で、ひたすらに求める。
唇はタイロン・ツバイの求めるがままに任せて、女が再び男根の上に腰を下ろす。
2回も施寫したにもかかわらす、逞しく脈打つ男根を胎に納め、舌なめずりをして、男の目を覗き込んだ。
三度始まった出口への疾走に、タイロンが身震いする。
ぴたりと密着した結合場所を基点に、女が腰をグラインドさせ始めた。
泉からとめどなく湧く蜜のせいか、先程の残滓のせいか、さざなみの様な音が室内に響く。
491
名前:
邂逅]2/4
[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 00:27:43 ID:jsr091sn
下から見上げる女神の肢体は艶かしく、うっすらと汗をかいてぬれ光る。
絡めとられた腕が使えないのがもどかしい。何とかして、彼女に快楽を打ち込みたいのだが、ままならない。
「・・・ぁぅ」時折もれる女神の吐息さえ、男根に注がれて男の力となり、脈打つ。
うねる腰に合わせてゆれる胸元がめまいを呼び起こす。
二人が繋がっている箇所へ前後から指が這い、くちゅ、くちゅと隠微な音が快楽に加速をつけていく。
「次の 極みで 我は 去る」
女神が恥骨を強くこすりつけ、捻じるように腰を使い、自らを追い込む。
「この娘を 労わって やれ」
タイロン・ツバイが訝しげに女神を仰ぎ見た。
「我は この娘が 気に入った」快楽に眉を寄せ、女神が執着を口にする。
結合部に遊ばせた指を、タイロン・ツバイの鍛えぬいた腹筋の上におき、体制を整えなおす。
「愛おしい 小さきもの」
492
名前:
邂逅]3/4
[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 00:28:18 ID:jsr091sn
一度、大きく息を吸った。締まった下腹が小さく波うち、タイロンをくわえ込んでいる場所も窄まって震えた。
「朝夕 我を 褒め 称える」
腹に置かれた手のひらを支えに、小刻みに上下運動をはじめる。
「・・・はぅ 気分の よいものよ」
自重で沈み込む女の体は容赦なく男をくわえ込み、結合部から露を押し出す。
あふれ出た蜜が、タイロンの体を伝い降りてゆき、床に溜まりはじめた。
徐々に抜き差しのリズムが大きく、深くなる。
快楽の絶頂に向けて、女の体が自ら突き進んでいく。
「あぁ・・・ん」太腿に震えが走り、脇腹が痙攣する。
嬌声を押し出す喉元がしなった。
493
名前:
邂逅]2/4
[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 00:28:59 ID:jsr091sn
闇に慣れた眼には、その体温が徐々に上がり、朝焼けの色に染まるのが透けて見える。
額から流れ落ちた汗が首筋を這い、鎖骨でしばしとどまったあと、吸い込まれるように乳房の間を落ちていく。
震える大腿が硬直してタイロン・ツバイの骨盤を圧迫する。
「・・・あっ ああぁ」
蕩けた泉が入り口から奥に向かって狭まり、タイロン自身を締め上げる。
ぴく、ぴくと腹筋が痙攣する。ぴんと勃起した乳首が痙攣に合わせて天を仰ぐ。
額に浮いた玉の汗に、寄せた眉根と空気を求めて喘ぐ口元・・・
女の体に絶頂の波が押し寄せている。
タイロン・ツバイはなすすべもなく荘厳な儀式を見上げているのみだ。
494
名前:
邂逅]おしまい
[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 00:30:21 ID:jsr091sn
しまった!数字がおかしい・・・
ごめんちゃい
495
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 09:52:01 ID:ptPcTt1H
乙!
エロい喃。
496
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 21:50:29 ID:axoZZ1ko
GJGJ!!!
497
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/23(日) 17:35:20 ID:emKaUIyG
保管庫完全復活したかな?
保守
498
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 01:25:43 ID:HrWIVzwR
>>497
まだ管理BBSが死んでるし、相変わらず四月以降の作品は載ってないね。
本格的復活はここからかな
499
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 09:43:08 ID:3KvW1kg4
保管庫まだ一度も見れたこと無いんだけど
タイミングが悪いのかアク禁くらったか……
何か悪いコトしたかな
500
名前:
投下準備
[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 10:52:37 ID:YIC62Htb
魔王の話が際限なく続きそうで我ながらゲンナリする中、
予告どおり私なりにペルシャ神話伝説等をベースに『王書』を読んでストーリーを作りました。
「アルスラーンと基礎設定が同じやんけ!」と思われるかもしれませんが、
そもそもあっちも『王書』を使ってるのでしゃーないのです。
ちなみにペルシャの神話、歴史に対する賞賛と羨望の気持ちはあっても、
悪い感情は一切持ってないので関係者さまが居たらご容赦を。
高笑いが似合う妖艶な美女が好きな方にオススメ。
Princess of Dark Snake です。
501
名前:
Princess of Dark Snake
[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 10:54:28 ID:YIC62Htb
パルティアという名の国があった。
大陸の中心部にあるこの国は、かって魔物を率いる王が支配していた国である。
だが、全ての物に終わりが訪れる様に、魔物の王の治世はある英雄によって終わる。
そして、英雄は自らパルティアの王となって民を導いたのだ。
この物語は、神話の時代が過ぎ去り、英雄達の時代が終わろうとしていた頃の話である。
・・・・・・・・・
夜の帳が天空を覆い、辺りは闇に包まれた。
満天に煌く星辰図と満月の輝きだけが光源だった。
パルティアの王子、ファルハードは己の部隊とはぐれ、当ても無く荒野で馬を進める。
「チッ……」
自分の不覚に、思わず舌打ちした。
今更ながらに悔やまれる。
気が付いた時は既に夕暮れになっており、そして周りは敵だらけだった。
部下がついて来れない程に、彼は敵中に深入りしていたのだ。
ただし、彼にとって囲まれていた事など大した問題ではない。
味方が居ない事に『気が付いた』だけであり、気が付く前も味方の手を借りてはいなかったのだ。
たかが一騎と侮る身の程知らずを叩き潰し、逃亡した敵将を求めて追撃した。
彼一人の働きで、パルティアの総人口はかなり数を減らしたはずだ。
太陽が姿を隠した時、辺りに彼以外の生きた人間はいなかった。
日没まで生きていた人間はいるが、彼らは味方がどちらにいるか教えてくれない。
戦鎚で頭骨を割られ、頚椎を折られ、軍馬から吹き飛ばされた将兵達の骸が
あちらこちらに転がるだけだ。
彼は屍と会話する技能を持たないので、星の位置から勘で味方を探すしかなかった。
「あたら駿馬に乗るのも考え物だな。ここまで味方と離れてしまうとは……
それとも俺に思慮が足りないのか?」
502
名前:
Princess of Dark Snake
[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 10:55:31 ID:YIC62Htb
ファルハードが乗る馬は、パルティア一の名馬である。
風の様に速く、戦象のように頑健、そして獅子よりも気性が荒い。
この愛馬に跨って戦場に出るのを楽しみにしていたのだが、
かえって勝利の凱歌さえ聞こえないほど戦場から離れてしまったらしい。
それで結局目的を達せられなかったのだから、彼の自嘲も無理からぬ事だった。
だが、恐らく味方は勝っているはずだ。
王子は赤く濡れた戦鎚に手を伸ばした。
自分なりに勝利に貢献した、いや自分の力でこの戦は勝った、ファルハードにはその自負がある。
この戦鎚で、敵方の高名な戦士たちを幾人も屠った。
そして、王位を求めて反乱を起こした叔父にも一撃を見舞ったのだ。
あの時敵方の勇将が割って入っていなかったら、叔父の脳漿は荒野を潤していたに違いない。
部下に抱えられて後退する叔父を仕留めようとしたが、
思いのほか邪魔者を片付けるのに時間を取られ、乱戦の中に獲物を見失ってしまった。
焦って敵陣深くを駆け回っていた挙句が、この有様だ。
『敵味方どちらでもよい、野営の火でも見えないものかな……』
味方に会えれば、王子であり一軍の将たる自分に粗略な扱いをするはずがない。
敵であれば、戦鎚に物を言わせて従えるつもりだった。
(む……)
思いが通じたか、ファルハードは遠方に小さな灯火を見つけた。
「ありがたい、神々は私を見捨て給わなかったな」
その時は、確かに彼はそう感じたのだった。
手綱を操り、灯火へ向かう。
近付くにつれ、ファルハードは気が付いた。
てっきり敵味方どちらかの部隊だと思っていたが、野営をしているのは兵士ではない。
奇妙な事に、焚き火の側に一人の女だけが座っていた。
厚手の絨毯を大地に敷き、火に枯れ枝をくべている。
パルティアの治安は他国に比べて安定しているとはいえ、女が一人旅をするのは危険だ。
おまけに現在は内乱の最中である。
いかにも不審であったが、それでもファルハードの辞書に怯懦の文字は存在しない。
「そこなる娘子よ、火にあたらせて貰いたいのだが?」
「よろこんで…… 私の客になって下さるあなたは、どちらの御方でございますか?」
「我はファルハード。カイクバードの末裔にして、父は『全ての王たちの王』アルダシール」
「おお…… 知らない事とは申しながら、パルティアの王子にとんだご無礼を致しました」
「そう畏まる必要は無い。今の我は、そちらのもてなしを乞うただの客に過ぎぬ」
頭を下げようとした女を、ファルハードは押し止めた。
乾燥した荒野に住まう人々は、客をとても大切にする。
客をもてなさない者、主客の礼節を弁えない者は、
周りから最低の人間だと蔑みの目で見られるのだ。
503
名前:
Princess of Dark Snake
[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 10:56:44 ID:YIC62Htb
彼の言葉を聞き、女は嫣然と微笑んだ。
焚火の赤い灯りに照らされたその顔立ちは、まるで名工の手で宝玉を彫ったかの様だ。
都で美姫などは見慣れているファルハードでさえ、思わず唾を飲み込むほどの麗しさだった。
「ウフフ…… ありがたきお言葉。
憚りながら、カヤーニ家の御方々と私どもは些か縁のある家柄、いわば身内で御座います。
どうか、ご遠慮なく戦の疲れをお癒し下されば……」
「?」
その言葉の意味を悟れぬまま、ファルハードは女が差し出した銀の杯を手に取った。
「石蜜を溶かしたバラ水でございます…… あまり冷えておらず恐縮ですが」
「いや、ありがたいぞ」
渇いた喉を、甘く薫る液体が流れ落ちてゆく。
胃の腑に届く冷水が、戦で昂った体に堪らなく心地よい。
一息に飲み干したファルハードに、女は水差しから酌をする。
「そなたの名は? 父御はどちらの君侯だ」
「私のことはシャフルナーズとお呼び下さいまし。
父の名は…… 恐らくお耳に入った事はございますまい」
「これだけの銀器とバラ水を用意できる者なら、我も知らぬ筈はないのだが……
何ゆえ一人でこの様な所に? 近くで合戦があるとは知らなかったのか?」
「ここへは従者と共に参りましたわ。
戦の様子を見に行かせましたけど」
「女の身一人で夜を過ごすのは危なかろうに……」
女は微笑むだけで答えなかった。
ファルハードは無理に問い詰めようとはしなかった。
それよりも女の美貌に目を奪われていた。
光沢の有る艶やかな長い黒髪。
白く美しい肌。
形のよい目鼻立ち、赤い唇。
そして均整の取れた肢体……
糸杉の如くという例えがあるが、この女の前では他の女は枯れ木だ。
年は二十歳前にも見えるが、その落ち着きのせいか少し年嵩のようにも見え、
愛らしい笑顔のせいで若くも見える。
捉えどころどころのない美しさであった。
「ファルハードさま、水菓子をどうぞ」
女の指が果物の皮をむくのを、彼は黙って見つめていた。
細く、美しい指だった。
皿に乗せて並べられた果実を摘み、口に運ぶ。
甘い果汁が口中に広がるが、それが目の前の女が剥いた物だと思うと、
不思議なことに一層甘美な味にさえ思える。
「あんっ……」
気が付いた時には、シャフルナーズの手首を掴んでいた。
ファルハードの腕が、女の体を引き寄せる。
果実を乗せた皿が脚に当たって転がったが、紅を差した唇から漏れた声には、
突然の行為に対する非難は含まれていないように思えた。
間近で見るに、まさしく美女である。
長い睫毛の奥で女の瞳は挑発するように光っていた。
504
名前:
Princess of Dark Snake
[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 10:57:19 ID:YIC62Htb
「王家の殿方は、随分ご性急なのですね……」
「我は兄達と違い、普段からこのような真似をしている訳ではない」
真珠の如き頬に指を寄せ、ファルハードは弁解した。
「では、今宵は何故にかような御振る舞いを?」
「そなたが美し過ぎるのがいけないのだろうな」
「おほほ、ありがたいお言葉でございますが、徒心では野の花を摘み取らないで下さいまし」
「徒心などではない」
ファルハードは、女を絨毯の上に組み敷いた。
下から彼を見上げる形になったシャフルナーズだが、男の行為に抵抗はしなかった。
「シャフルナーズ、お前は美しい」
「……」
「我も詩心を持たぬ朴念仁ではないが、お前の美しさを言い表すほどの才を持たないのが残念だ」
そう言うと、ファルハードは眼下に寝そべる女の唇に、軽い口付けを与えた。
彼女はそれを拒まず、そのまま受け入れた。
「……」
「拒んだりしないという事は、脈があると思っていいのかな」
「うふふ、王家の若獅子の爪から、女子の身で逃れる事などできましょうか?
こうなれば唯、御身の慈悲を願うばかりでございますよ」
「あいにくだが、我はそれほど慈悲深くは無いのでな」
「あら? アルダシール王の子ファルハードさまは、
狩場でも子連れの獲物は狙わない素晴らしい方と聞きましたが?」
「今宵からはそう呼ばれる事も無いかも知れんな…… だが、」
「やっ」
ファルハードの掌が女の乳房の上に乗せられる。
小さく甘い叫びが上げられるが、嫌がる素振りはない。
「そなたは子連れではないだろう」
「うふふ……」
絹の装束の上から胸を弄びつつ、もう一度唇を重ねる。
女の手が、今度は彼を抱え込むように絡みついてきた。
深く、熱い口付けが交わされる。
夜の静寂のなかに聞こえるのは、焚火にくべた枯れ枝が爆ぜる音と、
互いの唇を貪りあう淫らな水音。
月と星が見下ろす中、戦場となった荒野で二人は初めての契りを交わした……
・・・・・・・・・
505
名前:
Princess of Dark Snake
[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 10:59:49 ID:YIC62Htb
絨毯に寝そべるファルハードは、その左腕を女へ枕代わりに貸していた。
その目線は、今しがた自らの傍らにある麗しき顔へ向いていた。
「……」
「何でございます?」
「いや、何でもない……」
本当はある。
まさか、生娘だとは思わなかった。
秘所から伝った鮮血が、体液と共に絨毯に染みを作っている。
破瓜の際に女が辛そうに顔をしかめた時まで、全く気が付かなかったのだ。
世慣れて見えた女の態度から、一度や二度は誰かの手が入っているものと勘違いしていた。
しかし、そんな事を言うのは余りに無礼なので口には出せなかった。
(この女を、どうやっても王宮へ連れて帰らなければならなくなったな……)
甘えるように頭を腕の上に乗せる女の髪を弄りながら、ファルハードはそう思った。
多分、父王の怒りを買うだろう。
戦場で自分の部隊を見失った失態に合わせて、帰陣した時には女連れとは!
(行方不明となって心配をかけた分、反動が怖いな)
それでも、この女に対して自分は責任があるし、この美しき女を捨てて帰る気はさらさら無い。
父に怒られてでも側に置く心算はしていた。
そんな風に、ファルハードが甘い思いに浸っていた時である。
風の音に混じって、何者かが土を踏む音がゆっくりと近寄ってくる。
ファルハードはそれを悟り、反射的に戦鎚へ手を伸ばした。
反乱軍の兵士が、焚火の灯りに引き寄せられてやってきたのだとすれば、
一戦交えねばならない。
シャフルナーズを背に庇う形で、土音の方を睨む。
その時、背後に隠した女が近寄ってくる者に向かって声を掛けた。
「爺や、首尾はどうだった?」
「だめじゃ。カーウースめの脳は砕かれておった。
近侍どもが必死に生かそうとしておったが、ああなっては如何に我らでも手の施しようが無いわ」
炎に照らされて、女の従者の姿が現れる。
「っ!!」
506
名前:
Princess of Dark Snake
[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 11:00:35 ID:YIC62Htb
それを見た瞬間、戦鎚を握る手に力が篭った。
従者の小柄な身体は、まるで幼児の様だった。
頭は大きく、体は小さい。
しかし肌に子供の持つ艶はなく、むしろ皺とシミで薄汚れている。
だが、そんなことは額の角と背中に生えた蝙蝠の羽に比べれば何でもなかった。
「やれやれじゃ…… 意識さえあれば、魂と引き換えにもう一暴れする力を貸してやったのに喃。
ひい様が折角お出ましになられたというのに、ツイてない奴よ」
「あらまあ、とんだ無駄足だったわねえ。
こちらとしては、もう少し血と骸で大地を肥やしてもらいたかったのに」
「まあ近年は戦も疫病も少なかったから喃…… 小雨程度の血であっても、無いよりましじゃ」
「おのれらっ、化生か!?」
二人の会話を聞いたファルハードは、目にも留まらぬ速さで横殴りに女へ打ちかかった。
「……むっ!?」
巌をも砕く一撃だったが、そこには既に女の身体はなかった。
「情を交わしたばかりだというのに、なんとも惨い真似をなさいますのね」
霞の様に消えたかと思った女の声が、別の方向から聞こえる。
振り向けば、背後にあった枯木の枝に乗り、こちらを見下ろしていた。
何も身に纏わぬ女体の美しさに魅入られそうになったが、ファルハードは戦鎚を握り直した。
「だまれ人妖! 身内などと欺いて人を誑かしおって」
「おほほ……」
いかにも可笑しそうに、婀娜めいた哄笑が原野に響く。
「何が可笑しい?」
「欺くなどとは人聞きの悪い。私と貴方様は、確かに身内でありましてよ」
「嘘を付くなっ。我が王家に化生の身内などおらぬ!」
「ふふふ、王家ならばこそ。
神の嘉したもう英雄カイクバード、邪悪の化身ザッハーグを封じ込めて世界を救いたり……
蛇王を打倒しパルティアを建国した英雄王カイクバードの伝説、
今更語るまでも無くご存知でしょうが?」
507
名前:
Princess of Dark Snake
[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 11:01:21 ID:YIC62Htb
「それがどうしたというのだ」
「カイクバード王はザッハーグの後宮から聖賢王ジャムシードの二人の姫を救い出し、
英雄王と彼女たちから貴方がた、カヤーニ家の王朝が始まりました……
しかし『蛇王が世を治めた千年の間、彼女たちが孕むことはなかった』と史書にございますか?」
「!?」
「カイクバードの子を産んだのですもの、彼女たちも石女ではございませんわ。
蛇の血脈は残ったのです…… もうお分かりでしょう?
私は蛇王ザッハーグの裔、シャフルナーズ。
英雄王の血を引く貴方様とは、聖賢王の血を介して繋がっているのです」
「な、なんだと……」
王位は男系で相続するのが通例であるし、カヤーニ家の血に蛇王の血が混じっている訳でもない。
それでも女の話が事実なら、忌まわしい蛇王家とカイクバード王朝は母系で姻戚という事になる。
カイクバードが王に推戴されたのは蛇王の暴政に終止符を打ったが故であり、
彼らにとってザッハーグの存在は、憎むべき最悪の敵以外ではありない。
愕然とする男に、悪戯っぽい口調でシャフルナーズは微笑みかけた。
「お判り頂けまして? 遠き血脈の御方」
「黙れっ、例え女だろうと蛇王の一門は見逃せぬぞっ!」
半ば己自身を叱咤する意味を込めて、ファルハードは叫んだ。
「うふふ。ファルハードさま、私は貴方様にバラ水を差し上げましたわね?
そして、水菓子も幾らか召し上がって頂きましたが、
それらは、何時の間に御身の体から消えなさったのかしら?」
「むっ!?」
「客として受け入れられておきながら、火の主に対してこの御振る舞い……
それがカヤーニ家の御流儀でございますの?」
女の言葉の意味はこうである。
客は、主に迎え入れられて最初に食べた物が体から出るまでの間、留まる事が出来るとされている。
どんな宿敵同士の間でも、一旦主と客になったら諍いは起こさないものだ。
その意味から言えば、もてなしを受けたファルハードが鎚でシャフルナーズを殺そうとしたのは
許され難い非礼といえる。
「……」
ファルハードは戦鎚を下ろさざるを得なかった。
踵を返して上着を拾い、そのまま愛馬の背に鞍を置く。
「あら、お帰りですの? もう少しゆっくりなさいまし」
「蛇のもてなしは受けられぬ。
……火を借りた以上、今回は見逃す。
だが、次に会った時は容赦せんぞ」
「まあ恐ろしい。でも私としては、また必ずお会いしたいですわ」
「ほざけっ、蛇め!」
吐き捨てるように言うと、忌まわしい場所から逃れようとばかりに馬へ飛び乗り、
鐙で腹を蹴りつける。
「うふふ…… 道中ご無事で、愛しいファルハードさま」
甘い声にあやうくファルハードは振り向きそうになったが、何とか思い止める事が出来た。
男の姿が闇に紛れ、遠く消えていくのを、シャフルナーズはずっと見送っていた。
508
名前:
Princess of Dark Snake
[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 11:02:31 ID:YIC62Htb
いつの間にやら、傍らに老小鬼が脱ぎ散らかした衣服を捧げて彼女の側に居た。
だが、その目が何やら不満ありげに主に向いている。
長い付き合いである。
シャフルナーズはその視線の意味が判った。
「爺や、私に言いたい事があるの?」
「ひい様……、何故あやつに操を呉れてやりなすった」
「何故にとは?」
「知らぬ訳では無かろうに。あやつの一族と我らは万世の仇じゃ。
奴の父祖によって蛇王様は討たれ、我らは日の当たる世界より追い払われた」
「また古い話を……」
「新しかろうが古かろうが、事実に変わりはないわいっ!
あやつの態度を見ても判ろうが?
倶に天を戴かざるの敵に身体を許すとは、とても正気とは思えぬ!」
「おほほほほっ……」
苦りきった老小鬼の声を聞き、シャフルナーズは繊手を口に当てて高らかに笑った。
「なにが可笑しいのじゃ?」
「お前が余りに愚かしい事をお言いなのでねえ……
それこそ聖賢王の昔より、乙女の恋が正気で行われた例など在りはしないでしょうに?」
「ゲぇっ!?」
「そう、私はあの方を一目で気に入ってしまいました。
いくら守役のお前が小言を言おうと、大河の流れと女の恋心は神々でも止め難いと知りなさい」
驚きと呆れが五分五分に混じった顔で、老小鬼はまじまじと主を見る。
乳を求める赤子の頃から世話をしてきた姫君が、何時の間にやら自分の手の施しようの無い
悍馬に育ってしまったことを、今更ながらに思い知らされた。
509
名前:
Princess of Dark Snake
[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 11:04:11 ID:YIC62Htb
「全く、お父上が何と言われるか……」
「マーザンダラーンには戻らないわよ。
叱責されると判っているのに、のこのこ顔を出す馬鹿は居ないでしょう」
「お叱りで済めば良いがな…… 爺がひい様の父親であれば、洞穴に百年も閉じ込めて置くわえ」
「ならばなおの事戻る事は出来ないわね。
百年も経ったら、ファルハード様がお前のような老爺になってしまうもの」
小うるさい従者の皮肉を、シャフルナーズは軽く受け流す。
ただでさえ皺だらけの顔であったが、老小鬼は眉に深い皺を寄せて主を見つめていた。
「…………」
「まだ言い足りない事があって?」
「一つだけ…… その昔、ジャムシードの娘二人は、父を殺した男に抱かれた。
そして蛇王が討たれた後、王の両肩から生えた二頭の蛇に口付けしたその紅き唇で、
簒奪者カイクバードの耳に愛を囁いたのじゃ」
「それで? 年の所為か、お前の話は最近回りくどいわねぇ」
「魔族はよく人を害するが、女子は我らよりもよっぽど性悪じゃ!
ザッハーグ王の血を引きなさり、おまけに女の身なるひい様は、
もう我らよりもよっぽどの……『蛇』じゃわい」
「うふふ…… お前に蛇と呼ばれるようなら、私も一人前ねえ」
パルティアの人々は蛇を嫌う。
悪人に対する侮蔑の言葉に『蛇の子め』『蛇王の一味だ』と使われる程である。
しかし、一般人にとっての侮蔑が万人にとっての蔑称とは限らない。
例えば妓楼において一度も客に蛇と呼ばれなかった妓女など居る筈が無いし、
彼女らにとってそれは勲章ですらある。
いわんや魔族にとっては。
「ふふっ、うふふっ…… おぉっほっほっほっーーーー……」
一層高い哄笑が、夜の荒野に響き渡った。
この夜、一人と一匹から蛇と呼ばれたシャフルナーズは、
その事をむしろ誇らしげに思い、可憐な声で笑うのであった。
(終わり)
年代記
パルティア王アルダシールの治世九年。
王弟カーウースの起こした内乱は、彼の死をもって鎮圧される。
510
名前:
投下完了
[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 11:05:50 ID:YIC62Htb
妖姫シャフルナーズとファルハード王子の出会いでした。
この話は『王書』のザッハークに関係する章に、
・ジャムシード王の娘二人を後宮に納めた
・ファリードゥーンが彼女を救い出して妻にした
・ザッハークの一族は根絶やしにされたわけではなく、その血を引く末裔がその後登場する
とあるのをヒントに話が浮かび、ペルシャ物を作ろうというきっかけになったのでした。
千年も娘達が生きてたのかよという突っ込みは、神話だから無しですね。
しかし、これまでの発言からお気づきの方も居るかもしれませんが、
個人的にアルスラーンの野郎は大嫌いです。
ラジェンドラ王は大好き。
511
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 11:38:04 ID:7QUdyhcL
面白い作品でした。このお姫様の性格ならどのような結末を迎えようと
悲恋物語とは言われないに違いない
ラジェンドラ王の好物の果物の蜂蜜ヨーグルト和えが作中の
料理の描写で一番うまそうだとおもいます
512
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 19:11:07 ID:1GLjE8vn
このお姫様いいなあ。
アルスラーン未読でペルシャ系
疎いけど面白そうだな。
だからというわけでもないが
ラジェンドラって聞くと機械知性体のほう思い出すぜ
513
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 19:18:22 ID:9+VVrGyt
海賊課のほうは自分は好きだな。
アルスラーンならギーヴ。
514
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 21:36:15 ID:HAQb2sO6
自分自身も分からなかったので『王書』ってなによって人のために↓
ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%83%A1
515
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 02:36:03 ID:V9jf5muO
GJ!
アルスラーンは途中から放置してた程度で、ペルシャにも詳しく無いけれど、
ねた本の『王書』を衝動買いしたくなるくらい、とても面白かった!
516
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 12:49:39 ID:E54t/YlC
アルスラーンって「ぼくのかんがえたかんぺきなおうじさま」って感じで受け付けない。
517
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 22:18:26 ID:/453W0fB
緊急保守
518
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/28(金) 13:42:25 ID:IsuurL0X
ファンタジー世界の王は貴族に対し絶対的優位なのと
諸侯の中の代表者にすぎないのとどっちが好き?
519
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/28(金) 17:37:49 ID:0wWk2gdh
貴族は王の権力に時に媚びへつらいつつ、自分のためには他国の王とだって抜け目なく通じようとしてて、
王は大貴族たちの勢力を削ごうと努力しているのだが、なかなか上手く行かない…って感じなのが好き。
520
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/09/28(金) 17:40:44 ID:1afcCatK
中央集権国家と地方分権国家
帝政と王政で大分違うもんだな
521
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/01(月) 18:40:58 ID:afZC9POu
捕囚
522
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/04(木) 20:56:39 ID:oroUprMF
王様は保守
523
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 02:06:11 ID:02hFRV0C
女装の女騎士を書いている途中に小ネタを思いついたので、
そちらを先に投下します。
すみませんがエロなしです。
それでは、「所有の証」です。
524
名前:
所有の証
[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 02:08:35 ID:02hFRV0C
薬師の家で過ごすのが、休日の習慣となりつつあったある日。
「………その、お前も所有の証を付けたいとか、思ったりするのか?」
帰り支度を済ませ、名残惜しくもあとは別れるばかりとなった頃に、
女騎士が唐突にそんな事を言い出した。
実りの季節には、日が傾くのを待ちかねたように、何処からかひんやりとした空気が
早々と足元に擦り寄ってくる。
じきに訪れる日暮れの支度に小屋の窓を閉めて回っていたグルドフは、
声の主の方を振り返った。
「所有の証?」
何を突然、と言わんばかりに彼は眉を顰める。
醒めたこげ茶色の目で冷静に聞き返されると、アリューシアはうっすらと
顔を赤らめた。
「あ、ああ。最近女の兵士の間でヘンなことが流行っていてだな、
脱衣場で着替える時などに、腕とか、胸元とか、首筋とかに恋人に付けられた跡を
見せびらかしたりし合っているのだ」
「──ああ」
抑揚の無い声で、ようやく合点がいったように彼は頷く。
「キスマークね」
「ん…そう…………キスマーク……」
キスマークを話題にするぐらい、今更どうって事も無いだろうに。
どういうわけか、女騎士の口調はぎこちない。
「そう言えば、少し前に、宮廷の貴族達がお遊びでそんな事をやってましたが」
「ああ、その遊びがいつのまにか護衛の兵士たちの間に飛び火したらしい」
窓に寄りかかり、ふうん、とあまり興味の無いそぶりで応えて
薬師はアリューシアを眺めた。
「………しかし、浴場は共同だから、他人に感づかれるような痕跡を残されるのは
絶対に困るって、貴方は確か言っていたのでは……」
525
名前:
所有の証
[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 02:09:58 ID:02hFRV0C
確かに付き合い始めたばかりのころ、アリューシアはそう言ったことがある。
その意見が尊重されたのか、どんなに気持ちが昂ぶり、激しく互いを求め合う
ことになっても、彼が跡を残すということは今までに一度たりとも無いことであった。
アリューシアは困ったような表情を浮かべ、俯いた。
「う……うう。そうだ。どの方面からめぐりめぐって姫のお耳に入るか分からぬからな。
姫に知らせるときは、人づてではなくきちんと自分の口から、お前との事は
知らせねばなるまいし……」
「でも、付けたいんですか」
「ぅ、別にそういう訳では…………」
言葉を濁した相手に追い討ちをかける様に、薬師は呟く。
「貴方みたいな厳格な方でも、人のノロケ話を聞いてうらやましくなることが
あるんですね」
図星だった女騎士の清麗な顔が、ますます赤く燃え上がった。
いつもは真っ直ぐに相手を見返す澄んだ藍色の瞳が、きまりの悪そうに、
古ぼけた床の木目を見詰めている。
普段は『己の言動に一点の恥ずべきところ無し』と言わんばかりに胸を張っている
有能な騎士のくせに。
自分でも、自分が矛盾を抱えているということは承知の上なのだろう。
それに、融通の聞かないこの人は、以前に跡を付けるなと言った手前、
いまさら掌を返してそれをねだることに随分と抵抗があるらしい。
まるで、欲しい物がはっきり言えなくて困っている
恥ずかしがり屋の子供のような仕草だ。
本当に、この人は分かりやすい。
しばしの沈黙の後、女騎士はもごもごと自分ひとりで納得するように呟き始めた。
「いや、言ってみただけだ。…………実際に付けられては確かに困る。
うむ。困るな。この話は無かったことにしてくれ」
「────付けてあげましょうか?」
怜悧な眼差しのまま、淡々とした口調を変えることなくグルドフは女騎士ににじりよった。
526
名前:
所有の証
[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 02:11:56 ID:02hFRV0C
「えっ?」
予想していなかった答えに驚き、アリューシアが弾かれたように顔を見上げる。
「所有の証」
声を低めてそう言うと、薬師は口の端を微かに吊り上げた。
その僅かな表情の変化から、彼がまた何かろくでもないことを考えていると
素早く察知したアリューシアは後ずさった。
しかし、数歩後退したたところで、とん、と腰に作業台の頑丈な天板が突き当たる。
退路無し。
恥じらいと困惑と焦りの入り混じった顔が、ゆっくりと長身な男の影に覆われていった。
「………いや、いい! やっぱりいい。言ってみただけだから! 本当に!!」
必死で声を上げるアリューシアを、そのまま作業台に押し上げる。
「うわ!ちょ…あっ、やっ……こら! 何処に、おまえ……あっ、ひゃぁ!」
動揺しまくる女騎士を、グルドフは力ずくで押さえ込みにとりかかった。
*
「みてみて〜! ほら。ここと、ここ」
「あれ? 会ってきたの?」
「うん。休憩時間に、こそっとね」
「やだー。もうっ、熱心なんだからぁ」
宵の口の女兵士宿舎の共同浴場に、女達のにぎやかな声が響く。
制服を着ている時はきりりと身を引き締める凛々しい彼女達も、ひとたび仕事が
終われば、ただの恋する年頃の娘達である。
貴族とは違い人目を避ける配慮は忘れずにいながらも、今日も湯煙のたつ浴場内では
そこかしこで、新しく付けられた『所有の証』の披露がはじまり、あちこちから
冷やかしの声があがっている。
証拠隠滅のためにアリューシアは薬師の家でいちど綺麗に身体を洗ってあるのだが、
不審に思われないように皆とともに宿舎の浴場に入り、傍でその様子を眺めていた。
527
名前:
所有の証
[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 02:13:23 ID:02hFRV0C
「アリューシアは今日は休暇だったんでしょ。何か見せるものは無いの?」
同僚の一人が、この話になると一向に注目を浴びない女騎士に水を向けた。
「私か?!………私は、無いな」
突然、話題をふられたアリューシアはぎくりと身を強張らせた。
「一度ぐらいアリューシアの披露も見たいわよねぇ」
「本当に何もないの?ちょっと、これ取って」
「わっ」
体を隠していた洗い布を強引に剥ぎ取られ、均整のとれた裸体を露にされる。
気心の知れた同僚たちから容赦のないチェックを受け、
胸と股間をかろうじて手で隠したアリューシアはその場に立ち竦んだ。
「………………」
剣の鍛錬で付けたという青あざ以外、本人の言うとおり、どこにも何も期待したものが
ないのを見て、同僚たちはつまらなそうに顔を見合わせた。
「まあ……そんな相手もいないしな」
というアリューシアの言葉に、いくつもの失望のため息が漏れた。
「あなたって本当に男っ気が無いわよね」
「もてない訳じゃないんだから、早く誰か彼氏を作ればいいのに」
「いっぺんやっちゃえば、後はどうってこと無いんですよ〜!」
最後の一人のあからさまな言葉に、辺り一面からきゃあきゃあと歓声が上がった。
その後も盛り上がる同僚たちを尻目に、アリューシアはこそこそと
洗い場のいすに座り、身体を流し始める。
(見せられん…)
湯に濡れた肌でまぎれているが、じっとりと脂汗が背中を伝う。
(元から人に見せるつもりは無かったが、よりにもよってこんな所につけるなんて……)
太腿の内側、脚の付け根のきわどい部分にくっきりとついた赤い跡。
日常の動作をしている限り、人に見られる心配はない場所ではあるが。
528
名前:
所有の証
[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 02:16:28 ID:02hFRV0C
(おまけに……)
結局キスマークだけで終わるはずがなく、帰り支度を整えた後なのに
期せずしてもう一戦交えることになってしまった。
安全な日という事を知った上で、深く繋がったまま彼が果てるのを受け止め、
その後くたりと横たわっている時だった。
普段薬の効能を説明するのと同じような口調で、薬師がこんなことを言った。
「知ってますか?子種は女の胎内に注がれると、中で数日間は生きているのだそうですよ」
まだ甘い痺れの残っているアリューシアの腰を、
大きな掌がゆっくりと撫で回す。
「要するに、別れたあとも2、3日は私が貴方の身体を占有しているって事ですかね」
湯を張った重い湯桶を持ち上げようと動いた弾みで、
とろりとしたものが奥から伝った。
あんな話を聞いてしまっては、いつも以上に意識してしまうのも当然のことである。
(ああ、もう、バカバカバカバカバカ──!)
薬師とのやり取りが何度も甦ってきては、その度に顔が熱くなる。
気持ちを切り替え、皆の前ではなるべく考えないようにと努めているのに。
──気恥ずかしさの中に、少しばかりうれしい気持ちも混ざりながら。
皆がみな、心地よい温度の湯にほんのりと顔を上気させる浴場の中。
誰にも気付かれず、アリューシアはひとりのぼせたような顔で
がしがしと身体を洗いはじめた。
(所有の証 END)
529
名前:
所有の証
[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 02:18:27 ID:02hFRV0C
以上です。
読んでくれた方、どうもありがとう。
530
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 07:28:13 ID:NZiN9Mhl
うおう、ごちそうさまでした。
アリューシアかわええー
531
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 09:49:33 ID:w4zNRccz
GGGGGGGGGGJ!!!
悶えた、アリューシア可愛いなぁ、もう!
グルドフはアリューシアがだいすきなんですね ニヤニヤ
532
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 17:39:58 ID:9TAREZ18
お待ちしてました、超GJです!!
このカップル、大好きです。
女装の女騎士も楽しみで楽しみで…!
533
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 19:34:57 ID:mMjD5J57
やばい、アリューシア可愛すぎ。
悶え死ぬかと思った。
女装のやつ、期待して待ってます。
534
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/06(土) 03:05:20 ID:cxerBZ+I
女装のやつ、本当に書いて下さってるんだ!
ありがとうございます。楽しみにしてます。
お願いしてみてよかったぁw!もうそれだけで感激。
…だけでなく、新しい作品がうpされているぅ!!
あぁ、また2人ともいい味だしてるよぅ。ハァハァ
535
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/06(土) 09:52:16 ID:uLCEyYKi
GJです!
なんかいい連休が過ごせそうだ
536
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/06(土) 14:30:07 ID:JVzUDyRz
このカップル大好きだ!ありがとうGJ!
537
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/07(日) 10:31:59 ID:Ms1O1y1p
神キテター!次のもwktk!
この二人は可愛いなぁ…
538
名前:
投下準備
[sage] 投稿日:2007/10/08(月) 21:27:36 ID:GGyDE62t
女装女騎士をお待ちの皆様はスレ更新してみてガッカリかもしれませんが、
蛇姫モノの二話目が出来たので投下します。
539
名前:
Princess of Dark Snake 2
[sage] 投稿日:2007/10/08(月) 21:28:48 ID:GGyDE62t
選び抜かれた石材を用いた王宮は、王都シャーシュタールの華である。
その特徴的な高楼と丸屋根が並び建つ宮殿は異国の旅人を嘆息させ、
パルティアの威光を見せ付けるに足る。
建築を行った五代前のパルティア王は、他国に同等のものを建てられぬ様にする為、
完成後に設計師を殺害したという言い伝えが残るほどだ。
遠く良石を産する山からわざわざ運ばれた白大理石の柱。
瑪瑙、紅瑪瑙、翡翠、そして瑠璃までも用いて幾何学文様を床に描いた廻廊。
仰ぎ見れば、建築力学の粋を込めて造られた天井が、空間の高さと広さを実感させる。
壁には漆喰や彫刻によって形作られた植物や獣、天使や幻想上の生き物たちが色取りを沿え、
来訪者に王国の繁栄を印象付ける。
だが、この美しい宮殿の住人達が、常に心安らいで暮らしている訳ではない。
現在宮廷の殆どの人間は、ある問題のために落ち着かぬ日々を過ごしていた。
現パルティア王の第三子、ファルハード王子もその一人である。
無言のまま、彼は自室へ戻った。
渋い表情はここ数日変わっていない。
これが夷狄の侵入や政治問題であるのなら手の打ちようもあるのだが、
事は彼の力の及ばない範囲の物なのだ。
(……)
金糸で刺繍を縫いこんだ綿入れに腰を下ろし、意味もなく天井の文様を眺める。
ファルハードは近侍を遠ざけ、一人物思いに沈んでいた。
一国の大事に、何も出来ない身が恨めしい。
平時においてはその剛勇を誇り、知恵も勇気も持ち合わせているはずの自分が、
今は事態の好転をただ待つばかりだった。
540
名前:
Princess of Dark Snake 2
[sage] 投稿日:2007/10/08(月) 21:29:20 ID:GGyDE62t
そうしてどれ程の時間、彼はたそがれていただろうか。
ふと、扉の向こうで女官が呼びかける声がする。
「おくつろぎ中の所失礼致します」
「ん?」
「殿下に面会を求めている者がございまして……」
「今は誰とも会う気分ではない。後にさせろ」
邪険に言い放つが、王子の命令を無視したかのように扉は開き、
ヴェールで顔を覆った女官がしずしずと入ってきた。
己の言葉に背いて入室してきた女を見て、ファルハードの声には怒気が混じった。
「聞こえなかったのか? 今は誰とも会う気分でないと言ったはずだぞ」
「そんな大きな声をお出しにならずとも、十分聞こえましてよ…… 愛しいファルハードさま」
「?、シャフルナーズ!」
「おほほ、憶えていてくださったのですね」
ファルハードには、その口調と声色には聞き覚えが有った。
白い手がヴェールを持ち上げると、後宮の美姫でさえ顔色無からしめる麗しき貌が現れる。
「一体全体、こんな所に何の様だ? ここはお前が足を踏み入れるべき場所ではないぞ」
「あら、舅の見舞いに来るのがそんなにいけない事でしょうか?」
「……誰が誰の舅だ」
「それは無論、貴方さまのお父上でありパルティアの今上王、アルダシール陛下でございますわ」
そう言って、シャフルナーズは目を細めて微笑んだ。
この女の素性さえ知らなければ、たちどころに心奪われていそうな笑みであった。
それ故一層、ファルハードの心はかき乱されるのだ。
部屋の主の許しもないまま美女は足を進め、王子の横に堂々と腰を下ろした。
541
名前:
Princess of Dark Snake 2
[sage] 投稿日:2007/10/08(月) 21:30:51 ID:GGyDE62t
「人の父親を勝手に舅呼ばわりするな。
悪王ザッハーグの血筋に連なる蛇が、我らが王家に輿入れ出来ると思うのか?」
女から顔を背け、ファルハードは言い捨てた。
普段ならば、彼はどんな時でも相手から視線を逸らす事は無い。
相手を正面から見据えることが出来ないのは、心に後ろぐらい所があるからだった。
「まあ、何と非道な言い草でしょう!
あの夜、わたくしを組み敷いて乙女の新鉢を割りなさった方が、
今になって知らぬ振りをなさいますの?」
「……」
「『徒心ではない』『何があっても、お前を手離したくない』などと耳障りの良い言葉で
娘を誑かすとは、カイクバードの正義と侠気も、代を重ねれば煤けてゆくものなのですね。
綸言汗の如しと申しますが、カヤーニ家の汗は直ぐに乾いてしまわれるの?
この卑怯者!色魔!ろくでなし!」
本来は王子にとても言えないような悪罵が続けられるが、そこを突かれるとぐうの音も出せない。
成り行きとは言え、彼は王家の敵と情を通じてしまったのだ。
さらに悪い事に、手を出したのは自分からで、手を付けたのは処女だった。
『一夜の過ちでも、ひょっとしたらとんだ重大事に繋がりかねない』
血気盛んな王子達に老いた教育係が繰り返して教えた言葉だが、それが今更ながらに身に染みる。
「生娘の体を弄んでおいて、全く恥知らずもいい所ですわ。
庶人だってもう少し己の言動に責任を取りますわよ」
「ぐ……」
「わたくしがカヤーニ家に嫁入りする資格が無いと仰るのなら、
貴方さまこそ王家に居る資格は有りませんわ。
『いっそザッハーグの婿にでもなってしまいなさい』」
「!?……」
「うふふ……」
「ふはははは、これは傑作だな。シャフルナーズ……」
「おほほ、本当ですわねえ。でも、もし貴方さまにその気がございますなら、
いつでも婿入りして下さってかまいませんのよ?」
面罵していた女も、罵られていた男も共に口を開けて笑った。
シャーシュタールでは『ザッハーグの婿になれ』というのは、
独身男性に使われるありふれた悪口であったからだ。
よっぽどその言い回しが気に入ったのか、彼は腹を抱えて笑っていた。
542
名前:
Princess of Dark Snake 2
[sage] 投稿日:2007/10/08(月) 21:32:47 ID:GGyDE62t
「くくくっ…… まさか、そんな言葉をかけられる日が来るとは、我は思いもよらなかったぞ?」
「わたくしも、パルティアの王子殿下をそう罵れるとは思ってもみませんでしたわ」
先程眉を吊り上げて男の不実を言い募っていたシャフルナーズだが、
今はもう普段どおり妖しい微笑みを浮かべるいつもの顔に戻っている。
実のところ、彼女はファルハードの言葉に怒りを感じたわけではない。
王子としての立場では、そう言うのが当然だとも思っている。
ただ、彼の言い方に後ろめたさがあるのに気が付き、
『ちょっと苛めてやろうかしら』と思っただけなのだ。
けれども、ファルハードにとって事は笑話で終われるものではない。
笑いが収まるにつれ、その精悍な顔に真剣味が戻ってくる。
「……しかしシャフルナーズ。
実際に、我らの家が敵同士だという事は揺ぎ無い事実だ」
「それがどうかいたしまして?」
「父や兄、一族郎党に至るまで、ザッハーグ家の娘を王宮に入れる事を肯んずる者は居まい。
言い難い事だが、何かの形で償いはする故、あの夜のことは許して貰いたいのだが……」
「おほほ、ひょっとしたらお義兄様方は応援して下さるかもしれませんよ?
出来の良くて目障りな弟が蛇王家と通じたとなれば、格好の攻撃材料でございますもの」
愉しそうに、家中の不和を女は指摘した。
この数日、彼の心が晴れない原因はそこにあるのだった。
パルティア王である父は突然倒れ、侍医たちも病の原因を突き止められないでいる。
万が一の事態も覚悟しなければならないと言われたが、
医学の心得のないファルハードには、苦しむ父親の手を握ってやる事ぐらいしか出来ない。
だが、そんな自分の無力さよりも腹立たしいのは、
気の早い廷臣たちが『次』はどうなるかの品定めし、色々蠢動し始めていること、
さらに兄達も盛んに画策している事なのだった。
もちろん彼の周りにもおせっかいな人間がハエのように集っており、
この夜一人自室で過ごしたかったのも、そんな醜悪な輩と会いたくなかったからであった。
543
名前:
Princess of Dark Snake 2
[sage] 投稿日:2007/10/08(月) 21:33:55 ID:GGyDE62t
シャフルナーズの口調が気に障ったのか、ファルハードは態度を硬くする。
「そこまでこちらの事情が判っているのなら、
今の我には、お前にかかずらっている暇が無いことも承知だろう?」
「あら、わたくしを追い出す御積りですか?」
「追い出すとは言い方が悪いな。そもそもお前が勝手に押しかけて来たのだろうが」
「あらあら、なんとも冷たいお言葉でございまえすこと…… いいですわ。
そんなに私の顔が見たくないというのなら、今宵はこれ位で帰ります」
シャフルナーズが拗ねたように言う。
目の前で不機嫌そうに表情を曇らせた顔もまた美しい。
ザッハーグの家でなければ、どんな家門の出自であっても引き止める所だが、
蛇王の悪逆を駆逐した偉業こそ、彼らカイクバード家の支配を正統化しうる所以であり、
彼としても譲れない部分なのだった。
心のどこかでそれを残念に思うと同時に、ファルハードは少々驚いてもいた。
この一筋縄でいかない蛇姫を、こんなに簡単に追い払えるとは思っていなかったのだ。
「では、次は御義父さまの葬儀の時にお目にかかるとしましょうか?
そう日を置きはしないでしょうけど」
「っ……不吉な事を言うな」
「おほほほほ……」
意味ありげに、シャフルナーズは横目でファルハードへ視線を送る。
「不吉であろうと事実は事実。
典医たちがどんなに匙を捏ね回そうと、効かぬものは効きませんことよ?
ああ、御義父上もお可愛そうに。
一天万乗のパルティア王が、哀れ天寿をまっとう出来ずに崩御なさるとは」
「待てッ!」
立ち上がろうとした女の手首を、彼は掴んだ。
血相を変えて問いただすファルハードに、腕をきつく握り締められても、
シャフルナーズは顔色一つ変えることはない。
「父の病の原因を知っているというのか? シャフルナーズ!」
「それはもう…… パンはパン屋でございますもの」
「教えろっ!」
「巫蟲の術でございますよ、ファルハードさま」
「!?」
「典医どもは『反逆者とはいえ弟君をお討ちになったご心労のため』などと
見当外れを申しておりますが、呪物を仕掛けられた事に気が付かぬとは、
揃いも揃って俸禄泥棒も良いところですわね」
544
名前:
Princess of Dark Snake 2
[sage] 投稿日:2007/10/08(月) 21:35:05 ID:GGyDE62t
ファルハードには、女の瞳が嘘を吐いている眼には見えなかった。
意味ありげな笑みを絶やさぬ得体の知れない女子だが、
そもそも嘘には吐く価値のある嘘と無い嘘がある。
「どうしたらその術は解ける!」
「あらまあ、医者よりもわたくしの言葉をお信じになりますの?」
「ここで病の元を欺いた所で、お前に何の利が有る? せいぜい我が心を一時惑わす程度だろうが」
「うふふ……」
「それに、お前が嘘を付くとしたら、こんな所でなけなしの信用を壊す真似はしそうにない。
もっと重要な局面で、人を奈落の底に突き落とすために欺く…… お前はそういう女に見える」
「おほほ、酷い言い様ですわねえ……」
かなり酷い言われ方なのだが、シャフルナーズに怒りの色は見られない。
愛しい男が必死に詰問してくるのを、むしろ嬉しげに受け止めている。
先には相手を詰って悦んだ女であったが、今は反対に悪し様に言われる事を楽しんでいるのだ。
ファルハードは彼女の血統から蛇と呼ばわるが、シャフルナーズの淫蕩さは
出自によらなくてもそう称されるに相応しいかもしれない。
「教えて差し上げてもよろしゅうございますが、
呪術の種明かしをするのは、魔道士の仁義に外れますのでねえ……」
「条件があるのなら、もったいぶるな」
「うふふふふ、ではお言葉に甘えて……」
細い人差し指が、ゆっくりと男の目の前に突きつけられる。
「一晩、御身がわたくしの物になって下さるというのなら、
義父上にかけられた呪いを解く方法をお教えしてもいいですわ」
「なんだと!?」
「わたしくは慎ましゅうございますから、愛しい方から貪ろうとは思いませぬ。
あの日のように一夜わたくしを慈しんで頂けるのならば、
いかなる秘密でもお教えしましてよ」
「我にお前と契れというのか?」
「はい── 別に減るものでもなし。簡単なことでございましょう」
「……そういう言い方は、姫君には相応しくないな」
「おや失礼。なにせ出自が出自でございますから、おほほ」
「他の物ではいかんのか? 一夜の歓楽よりも、形の残る謝礼を支払うぞ」
「ほう、それはどのような?」
「金でも、宝石でも、王室の宝物庫に有る物なら大抵の物は──」
「おおっほほほほほほっ……」
男の申し出がおかしくて堪らないといった風に、シャフルナーズははしたない程に大笑いした。
545
名前:
Princess of Dark Snake 2
[sage] 投稿日:2007/10/08(月) 21:38:13 ID:GGyDE62t
「お笑いして申し訳ございませんね、ファルハードさま。
ですが、金や宝物の類は、妖魔があなた達人間を堕落させ、魂を購う時に用いる代物では?」
「む……」
「妖から金銀を奪った貰ったという話は巷間に溢れておりますが、人が魔族に金を払うとは!
それこそ後の世の語り草になりましょうね…… うふふふふっ」
芝居めいた台詞とともに、幾つもの腕輪を嵌めたその白い手で笑いの止まらぬ口元を覆おうとする。
わざとらしい仕草だが、彼女の宝石付きの腕輪の価値は、
どれ一つとっても平均的なパルティア貴族の身代に勝りそうだ。
「金子や宝石は嫌いではございませんが、さし当たって不自由しておりませんの……」
「……」
「この世に金で換えがたいものは三つ。
人の命と骨肉の情、そして男女の愛── 違いまして?」
「……違わんな」
「では、悩む事はございませんでしょう?」
身を乗り出して、麗しいかんばせを愛しい男に寄せる。
芳しい花の薫りが、女の首筋から香った。
「御義父上のお命がかかっているのですから、よもやお断りになりますまい?
孝行息子のファルハードさま」
「仮にも父を舅と呼ぶのだから、無償でしてくれても良さそうなものだがな」
「まあ、わたくしの輿入れを認めさせて下さいますの?」
「それは……」
「おほほほほ、これでも十分お負けしている積りですけれど。
パルティア王の命と引き換えでございますもの。
一晩では済ませず一年二年、いえ『正式に妻に娶れ』と言ってもよろしゅうございますが、
両家のわだかまりを考慮して、それは言い出さずに置いたのですよ?」
「……くぅっ」
ファルハードの眉間に皺が寄る。
あの晩この妖姫と契ってしまったのは知らぬが故の過ちだが、二度目はそれで済ませられない。
けれども、女の言うとおり父の命には代えられぬ。
必要とあらば肉親でも政略の具にせねばならないのが、王族としての宿命。
一夜の我慢で命が買えるのならば、たとえ醜女とでも寝ねばならぬ。
相手の意のままになるのは忌々しいが、苦渋に満ちた表情でファルハードは頷くのだった。
546
名前:
Princess of Dark Snake 2
[sage] 投稿日:2007/10/08(月) 21:39:25 ID:GGyDE62t
「判った……」
「うふふ、そう言って下さると信じてましたわ」
「だが、こちらも王子の身を差し出す以上、後で虚言だったでは済まさぬぞ!?」
「ご心配なさらず、わたくしは愛しい方にはめったに嘘を申しませんもの」
男の首筋に両腕を絡ませ、シャフルナーズは体を相手に委ねる。
紅を引いた唇が、ファルハードの唇に重ねられた。
あの晩とは逆に、女が男の唇を奪う。
音を立てて、存分にシャフルナーズは吸った。
男の頭を抱え込み、より深い繋がりを求めて啜る。
余りの激しさにファルハードが辟易しかけた頃、ようやくシャフルナーズは顔を離した。
「恋人との口付けは、火の様に熱く、砂糖菓子より甘い……、古詩の通りでございますね」
「……『恋人』との口付けはな」
「まあ、ではわたくしとの接吻はどうなのです?」
「甘いが、同時にとてつもなく苦い」
「うふふ、ではもう少し甘みを効かせた口付けを心掛けるとしましょうか」
そうして頬へキスをしようとしたシャフルナーズだが、
ファルハードは彼女の細腰に手を回すと、妖の姫を軽々と抱きかかえた。
「それよりも、とっとと寝室で事を済ませてしまおう」
「床急ぎなさいますのねえ。
慌てなくても、夜は長うございますよ」
「我にとって、今日ほど夜の長さが恨めしいと思った日はないな」
「まあ、つれないお言葉。
ファルハードさまは舌の剣で女を傷つける名人ですわね」
「お前こそ弁舌の縄で男を縛る名人だ」
「おほほ、まだお縛りしたのは御身一人でございますよ……」
ベッドの上に運ばれて、今度は男の方から唇を寄せる。
二度目の契りを、二人はそうして交わした。
・・・・・・・・・
547
名前:
Princess of Dark Snake 2
[sage] 投稿日:2007/10/08(月) 21:40:52 ID:GGyDE62t
「王都の西小路に、シンド人が多く住む一角がございますの」
「……」
「そこの赤い呪い小屋にいる老婆が、御義父上の爪を入れた泥人形をこしらえて
日々太針で責め苛んでおりますわ」
「では、その老婆を殺し、泥人形を壊せば良いのだな」
「その通りでございますわ、愛しいファルハードさま」
それだけ聞き出すと、女の艶やかな黒髪を撫でていた手を止め、
ファルハードは身を起こそうとする。
「あん、そんなにお急ぎにならなくても…… まだ約束の夜は明けておりませんのよ」
「生憎とこちらは父の命がかかっているのでな。
一刻でも速く呪いを解いて差し上げたいのだ」
「ふふふ、本当かしら? わたくしから逃れたい口実ではありませんの?」
「それも有る」
「まあ、本当に酷い方…… わたくしをこんなにしておいて、飛ぶように去ってしまうのですもの」
まだ月は傾いていないが、シャフルナーズは巫蟲の秘密を喋った。
雄獅子の如きファルハードの体躯に存分に弄ばれ、彼女は息も吐けぬほどに疲れ切っていた。
本来なら、恋人同士の甘い睦言を期待するべき所だが、男が求めているのは呪物の秘密。
せっつく相方の詰問に堪えかね、シャフルナーズはとうとう口を開いたのだった。
「お前が激しくしろと言うのが悪いのだ」
「物には限度という物がありますわ。
お忘れかもしれませんが、私はこういう事をするのは二晩目なのですよ?」
「その割りに身体の反応は良かった」
「それはもう、教師の薫陶がよろしいもの。おほほ……」
548
名前:
Princess of Dark Snake 2
[sage] 投稿日:2007/10/08(月) 21:43:43 ID:GGyDE62t
互いにきわどい台詞をかけながら、ファルハードは衣装を調える。
彼の背中に、シャフルナーズはそっとしなだれかかった。
「なんだ、秘密を聞き出した以上もう用はないぞ」
「冷たい方…… わたくしとファルハードさまの関係に免じて一つお教えしますけど、
シンド人は何の理由もなく人を呪ったりしませんのよ」
「ん?」
「呪い師は呪物を売って口を糊する稼業。巫蟲術の裏には、依頼人が必ず居るものです」
「……」
「もし御義父上の病が治った後、無実の人間を呪物で陥れようとする者が現れたら、
それが今回の一件の依頼人ですわ──」
それだけ言い、シャフルナーズは恋人の頬に唇を当てた。
背中にかかっていた感触が不意に消えファルハードは振り向くが、
既に女の姿は無い。
ただ、窓から入り込む風に揺られて、カーテンがひらひらとたなびいていた。
・・・・・・・・・
「ええい、もっと探せ! そこもさらに深く掘れっ!」
背中に突き刺す父王の視線に震えながら、第二王子アタセルクスは工人たちを叱咤した。
「そこの床も剥がしてみろ。呪物の証拠は見逃すな!」
「……」
「そっ、そうだ! 天井裏に隠したかもしれん。そっちも……」
「……もうよいだろう、アタセルクス」
うんざりした口調で、アルダシールは息子を止めた。
「これだけ探して出てこないという事は、ファルハードは無実だろう」
「はっ、しかし……」
「しかしも何も無い、お前が『此度の病は、王位を狙うファルハードの呪術によるもの』
と申すから、こうして人数を繰り出して探しているのだぞ?
『第三王子の宮を探せば、直ぐに証拠が見つかる』と言っていたのはお前ではないか」
「そ、その通りではございますが……」
「こうして何も見つからぬのでは、お前の言が誤っているとしか余には思えん」
「はっ、ははーー…… も、申し訳ございません。
ええいっ、此奴めっ! さては手柄目当てに我が弟を讒しよったか!」
「えっ?」
やおら振り向いたかと思うとアタセルクスは、何の事か判らないといった風情の侍従に対して
抜き打ちに剣を振るった。
「ぎゃぁーー!?」
血が、第三王子宮の地面を濡らす。
アタセルクスは剣を鞘に収めると、父である王に向かって跪いた。
549
名前:
Princess of Dark Snake 2
[sage] 投稿日:2007/10/08(月) 21:45:00 ID:GGyDE62t
「申し訳ございません、父上。悪人に惑わされて宮廷をお騒がせした罪、万死に値します」
「謝るなら、余でなくファルハードに言え。
お前の所為で、自分の宮がここまで荒らされてしまったのだからな」
「はっ、はい…… 悪かったな、ファルハード」
「もっと真剣に謝れんのか?」
「……許してくれ、弟よ。讒言を信じた私が愚かだった。お前の宮は私が責任を持って元に戻す」
「いえ、済んだ事をお気になさらずに……兄上」
一応そう言ったファルハードだったが、兄の謝罪の言葉を完全に信じることが出来ずにいた。
シンド人の呪術師を斬った晩に囁かれた毒が、血を分けた肉親への絆を感じさせない。
蛇王家の女が予言した事が事実なら……
ファルハードは背中に薄ら寒いものを感じ、無理矢理その疑念を押し殺そうとしていた。
パルティア王アルダシールは、病が突然だったと同じように、突如として平癒した。
王宮中が表向き国王の回復を祝ったが、
直後に第二王子が弟を巫蟲の疑いで誣告するという事件が起きたのだ。
断固として否定する第三王子であったが、門閥の後押しを受けた第二王子は
第三王子宮を調査するとして、今日国王臨御の元に強引な捜索を行ったのだった。
その様を、王宮に聳える高楼の窓からこっそり眺めていた影があった。
「にしても恐ろしい奴じゃ……
父を呪殺して罪を弟に擦り付けようなど、カイクバードの裔とは思えん悪賢い奴。
あの見事な言い逃れようも褒めてやりたいわい」
「うふふ…… でも、あいつの所為でお前は一苦労させられたのよ?」
「ぺっ、苦労したのはひい様の所為じゃろが。
この年寄りに、王子宮に埋められた呪物の証拠を掘り出せなどと命じよって」
「おほほ、そうしなければファルハードさまが罪に落とされてしまうでしょう?
念のために、呪術とは関わりの無さそうな犬猫の骸まで掘り起こして貰ったけれど、
お前には本当に苦労をかけるわねえ」
「ふんっ! 女になってから、ひい様は一層人使いが荒ろうなったわい」
第三王子宮に埋められていた、おどろおどろしい文様が刻まれた頭骨を手で弄びつつ、
女は老いた従僕の不平を聞く。
それは今日の捜索で第二王子が発見する筈であった『魔術の証拠』であった。
「こんな子供騙しの代物では鼠一匹だって呪えはしないでしょうに、救いがたい素人の浅はかさね」
「俗人は信じたい物を信じるものじゃ。贋物でも人一人陥れる用は足せるわい」
「しかし、お前の言うとおりあの王子は中々の曲者ねえ……
今回は無事に終わりそうだけど、これからが楽しみだわ」
「憎きカヤーニ家同士の殺し合いは、正に望むところ。
せいぜい諍いをおこして我らに血と魂を啜らせて貰いたいものじゃ」
「そうねえ、ファルハードさまが困れば困るほど、私に頼らなければならなくなるもの」
「ひぇいっ、ひい様に見込まれたあ奴が哀れじゃ。儂にはそっちの方がよっぽど恐ろしいわ」
「うふふふふ、おおっほっほっほほほほほほほ……────」
誰も居ないはずの高楼に、女の哄笑が響き渡る。
呪物騒ぎは落着したが、幽霊が出るとして
この日を境に塔には宮廷の人間が近付かなくなったのだった。
(終わり)
年代記
パルティア王アルダシールの治世九年
国王病に倒れ、一時危篤となるも回復。
その直後、宮廷内に巫蟲騒ぎ有り。
550
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/08(月) 22:55:30 ID:9zH+qMsw
>>549
このお姫さま大好き!
作者様 超GJです。続きも期待してます
551
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/09(火) 01:41:46 ID:kQtS78PV
お、おもしろいやんけ!
552
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/09(火) 04:07:06 ID:S92Sb3O+
GJ!!
新作も楽しみですが、続きが読めるのも嬉しい限り。
553
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/09(火) 08:15:05 ID:CM3zkHWn
GJ!マッチポンプをしなくても王宮には王子の苦難の種が
ゴロゴロしているから困る
554
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/13(土) 07:41:31 ID:TkbJ3RTE
もしかして誰もいない?
555
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/13(土) 07:50:44 ID:KSra41+L
>>554
俺が居るよ・・・
556
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/13(土) 16:53:10 ID:2Xxxgscy
ずっと前から書いているけど、話のうまいまとめ方が分からなくなって次のを投下できずにいる俺もいるよ……
557
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/13(土) 19:13:27 ID:HpT0dQ2H
いろんな作品をまってる俺も居るよ。
558
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/13(土) 20:41:53 ID:TkbJ3RTE
わりと人いて安心した。
≫556
少しぐらいまとまってなくても全然構わんよ。期待してる。
559
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/13(土) 23:07:36 ID:tFEgKSJk
結構人はいると思う。
でも、投下がないときはみんな静かだよねw
560
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/14(日) 08:03:44 ID:+y0auO2S
ヘタレな魔王の物語のリクエストを姫スレでもらったのだけど、
女兵士 姫 女兵士
1 → 2 → 3
という風に変則的に投下してしまったため、ここで次に姫スレに戻るのは
混乱の元かと思ってるのですが、どうでしょうかね?
そもそもスレ違いになるかと思って 2 を姫スレに書いたのが混乱の原因なのですが。
561
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/14(日) 10:21:32 ID:5/OeshU2
個人的にはえちぃの相手に合わせてスレをかえるか一貫して同じスレにするか
どちらでもかまわないので作者のやりたいようにやって欲しいな。それにしても
女兵士、姫、中世ファンタジーのスレは住人も職人も掛け持ちしてる人が多そうだ
562
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/14(日) 10:25:39 ID:tSTEFg3x
作者様が投下したいと思うほうに投下したらいいと思う。
女兵士スレに投下した時は、姫スレのほうにその事をお知らせみたいな
感じにすれば問題ないんじゃないかな>ヘタレな魔王の物語
逆もまたしかりで。
563
名前:
名無しさん@ピンキー
[age] 投稿日:2007/10/15(月) 19:12:17 ID:1vvhcG8P
期待
564
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 20:53:55 ID:XgEUquy2
アリューシアこないかなぁ。
565
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 22:06:50 ID:h5/AUDbE
アシュレをしつこく待ってますw
566
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/16(火) 20:50:23 ID:6jyYG8fB
アビゲイルも…
567
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/16(火) 23:14:35 ID:y7z5y/8f
副長殿…
568
名前:
邂逅]T
[sage] 投稿日:2007/10/16(火) 23:35:42 ID:mUvecu7P
んばんわ。アビゲイルきました。
エロくないですが。ドゾー
569
名前:
邂逅]T 1/7
[sage] 投稿日:2007/10/16(火) 23:37:20 ID:mUvecu7P
男の腹の上で俯く女の肩が大きく上下していた。
タイロン・ツバイからは顔にかかる前髪のせいで表情がわからない。
「あ・・・ぅ・・・」焦点の定まりきらない視線が、あたりをさまよい始めた。血をながして倒れる城主、開いた窓。
自分と男の結合部を眺め、ゆっくりとタイロン・ツバイの顔へ。鏡の中の自分の顔を認めて、あたりをもう一度見渡す。
「・・・な」今一度タイロンの開いた天眼に視線を当てた。
「な・・・んなの、これは」
しん、とした室内に彼女の言葉が響いて消えた。
まとまらない思考を奮い立たせて、アビゲイルは今自分がおかれている状況を理解しようと努力していた。
しかし下腹部は熱を孕んで脈打ち、思考を邪魔する。
「アビゲイル」
眼下にはタイロンがいる。
先程まで、この男にいいようにあしらわれていたのではなかったのか?
今のタイロンは両腕を衣類でまとめて吊り下げられ、自分に組み敷かれている。
表情は苦しげで、すがる様にこちらを見上げる・・・まるで自分がこの男を犯しているようではないか。
身じろぎをすると下腹部に快楽が走り、まとまりかけた思考が拡散しかかった。
「・・・アビゲイル、俺を見て」
かすれたタイロン・ツバイの声に導かれて、アビゲイルが視線を動かした。
お互いに、病人のように潤んだ瞳を見つめあう。
570
名前:
邂逅]T 2/7
[sage] 投稿日:2007/10/16(火) 23:38:02 ID:mUvecu7P
つながったまま、どれほど視線を交わしていただろうか。
「・・・説明すると長くなる」口火を切ったのはタイロンだった。
アビゲイルが見慣れた人懐こい笑顔・・・と言っても苦笑なのだが、額の真円のせいで違和感を感じる。
「とりあえず、戒めを解いてくれ」
のろのろとアビゲイルが結わえられたタイロンの手を解放するために動き出した。
どこか体を動かすたびに、アビゲイルの体を快感が走り抜ける。
ぴりぴりと走る快感に腰が砕ける所を耐え抜いて、打ち込まれた楔をゆっくりと引き抜く。
泉から溢れたアビゲイルの蜜とタイロンの残滓が、つうっとタイロンの男根を滑り下りた。
思わずうめき声が漏れる。
571
名前:
邂逅]T 3/7
[sage] 投稿日:2007/10/16(火) 23:39:26 ID:mUvecu7P
タイロンを足の下においたまま、アビゲイルが戒めを解きにかかった。
「ややこしい・・・」
膝立ちになったアビゲイルの下腹部が、胸地が、闇の中でもほの白く陰影をつくり、なまめかしい。
「・・・ややこしい男だと思っていたんだ」
眩しいものを見上げるようにタイロンが見ている。
その視線がアビゲイルの四肢に快楽を与えていた。
「ここまで」
苦痛をこらえるようにせり上がる快楽をこらえ、唇をかみしめる。
引きむしるように、戒めを取り払った。
「ややこしくなくてもいいのに・・・」
絞り出すようなかすれ声にとともに、アビゲイルがぺたんとタイロンの腹の上に座り込んだ。
572
名前:
邂逅]T 4/7
[sage] 投稿日:2007/10/16(火) 23:41:07 ID:mUvecu7P
長く戒められていたせいで、タイロン・ツバイには腕の感覚がない。
「おれもそう思う」
自嘲気味に笑うタイロンに下から見上げられ、アビゲイルがうろたえて眼を伏せた。
妖艶な雰囲気は女神とともにさり、恥らう様子がかえって淫靡だ。
儘ならない腕を操ってアビゲイルの額に張り付いた髪を取り除く。
「私には、なにがなんだか・・・わからない。」
頑是ない子どもをあやすように、頬をなでた。
「おれも」
「うそつけ」アビゲイルがため息とも吐息ともとれる長い息をはいた。
573
名前:
邂逅]T 5/7
[sage] 投稿日:2007/10/16(火) 23:41:45 ID:mUvecu7P
タイロンはアビゲイルを落とさないようにゆっくりと身を起こし、彼女を抱えたまま立ち上がった。
「自分で歩ける。」
呟く抗議を無視して、城主をまたぎ越えて、寝台にそっと、壊れ物を扱うように優しくおろす。
そのように扱われたことがないのでアビゲイルは戸惑い、何のリアクションも起こすことができなかった。
先程の激しい行為で限界まで高まったからだの熱に、絹地がひんやりと心地よい。
かき寄せた絹を、タイロンはアビゲイルにかけてやった。
柔らかな薄布はアビゲイルのもつ曲線を隠さないので、かえって眼の置き場に困る。
結局アビゲイルの隣に背を向けて寝ころんだ。
「何から話せばいいのかぁ・・・」
心底困り果てた声音に、アビゲイルの頬がおもわず緩む。
574
名前:
邂逅]T 6/7
[sage] 投稿日:2007/10/16(火) 23:42:28 ID:mUvecu7P
「正直、どこまでわかってる?」タイロンの問いに、アビゲイルが考え込む。
いいように弄ばれて、達したところまではハッキリと脳裏に浮かぶ。痴態を思い出してしまい、頬が赤らむのが自分でもわかってしまう。
「・・・とりあえず、お前、じゃないな、タイロンさまの身分。」
タイロン・ツバイの気配が一瞬こわばる。「さま、は止してくれ」
発する声は今までになく自嘲にみちていて、普段の闊達さは消えうせている。
王に連なる貴い人。身分を隠して王の目となり耳となる者。
「クンツさま裁くのをみてた・・・」
本当の、タイロンの仕事。この男の得体の知れなさが事実を知った今なら腑に落ちる。
「・・・その後は?」
アビゲイルはタイロンの声に真剣なものが含まれていることを感じ取り、思いだそうと考え込む。
が、そのあとのことは絹地の向こうの出来事のようにぼんやりとかすんでいる。
両手で顔を覆う。「ひどく・・怒っていた。」
じっと手を見れば、確かにこの指で城主から天眼を奪った感覚がある。
「城主の天眼を捨てた」
「そうだ」
ふ、とタイロンの体臭が自分の手から漂うのをとらえた。
「ひどく昂ぶった」
「・・・ああ、そうだ。」
ゆっくりと、あったことを鮮明にしていく。
この手で、タイロンの男根を引きずり出し、口をよせた・・・混乱して、王の息子にしがみつく。
身分の尊い方だったのだ。
「タイロンを犯した」
手指が、小刻みに震えるが、自分では止めようもない。
神話のような過去と直近の過去と現在がない交ぜになって、気が遠くなりかけた。
「私ではないものが、私を満たしていた・・・」
575
名前:
邂逅]T 7/7
[sage] 投稿日:2007/10/16(火) 23:43:02 ID:mUvecu7P
頬にぴたぴたと当てられる手の冷たさで、ふと我に返った。
真近にタイロンの天眼が鈍く光る。「タイロン・・・さま」
心配顔に影が差す。「さまはなし、だ」ため息は深い。
自分を落ち着けるために、アビゲイルは目を閉じて、深く大きく息を吸い込んだ。
「私の中にいた・・・あれは何だ?」
「お前に依ったものは、大きく、貴きものだ。」たしかに、たとえようもなく大きな存在だった。
「この大地に豊かな実りをもたらす」アビゲイルの中に母のような慈愛を満たした。
「災厄をもたらすのも、あの貴きもの次第だ」父のような厳格さに満ちていた。
「われらは母神と呼ぶ。」目を閉じていても、タイロンの黄金の目がまぶしい。
腕の中の女がくったりと脱力して自分に身をゆだねてきた。
576
名前:
邂逅]Tおしまい
[sage] 投稿日:2007/10/16(火) 23:44:17 ID:mUvecu7P
今日はここまで。
もうちょっとで終わりますよん。
577
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/17(水) 00:06:44 ID:cSJz0H3v
うわ〜、本当にアビゲイル来た! GJです!!
完結篇も楽しみにしてます!
578
名前:
名無しさん@ピンキー
[sagE] 投稿日:2007/10/17(水) 05:41:56 ID:tBuswJee
乙です!
続き正座して待っております
579
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/18(木) 18:45:11 ID:AeHyLypr
20kbを切ると長めの話は最後まで収まらなくなるので、
そろそろ次スレの季節と思われますが如何?
580
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/18(木) 19:06:44 ID:qYvgU0dI
おお!そろそろ新スレの時期ですね。
自分は立てられないので、どなたか立てていただければありがたい。
581
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/18(木) 23:22:30 ID:l7z8e8j8
新スレ立てました。
◆◆ファンタジー世界総合:女兵士スレpart5◆◆
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1192717229/
582
名前:
あぼ〜ん
[sage] 投稿日:2007/10/19(金) 02:29:08 ID:ktoXXTaK
あぼ〜ん
583
名前:
そして、遺されたもの
[sage] 投稿日:2007/10/19(金) 23:44:02 ID:aeZHsFhH
エロ無しですが埋めます。
女将軍が養子を迎える話で、全体のシメにあたります。
584
名前:
そして、遺されたもの
[sage] 投稿日:2007/10/19(金) 23:45:03 ID:aeZHsFhH
女将軍は死に瀕していた。
敵からは死神の如く恐れられ、味方からは畏敬の念を抱かれた彼女であっても、
有象無象の雑兵のと平等に死を迎え入れようとしていた。
「──私が死んでも、決して包囲を解いてはならぬ。なんとしてもあの街を落とすのだ」
「ははっ……」
ベッドに横たわる女の声は、かって馬上で軍兵を叱咤した頃とは比べ物にならぬほど弱弱しい。
しかし、まだ幕僚達にその執念を伝えることは出来た。
この街さえ陥ちれば、戦争の帰趨が見えてくる筈なのだ。
兵法上の常道に背いて市壁を囲んだままの越冬に臨んだのはそのためだ。
寒気に兵士が殺されていくなか、外部からの援助を断つために封鎖は続いている。
壁の内側も、飢えと寒さでさぞや惨いことになっている事だろう。
だが、冬は女将軍をも捕らえた。
軍中にはびこる流感が彼女の古傷を悪化させた。
剣を取れば未だ誰にも敗れたことの無い勇者が、いま病に敗れようとしている。
それも数日もかかるまい。
すでに発熱する病状は過ぎ、全身が寒気に襲われている。
意識の有るうちに、部下達に指示を残しておかねばならなかった。
「ブラッカ、そこに私の鎧櫃があるな?」
「はい、閣下」
「櫃の蓋は二重になっている。その間にあるモノを取り出すのだ」
彼女の忠実な副官は、命令の通りにそこに挟まれていた物を取り出した。
ブラッカは、既に腕を伸ばす力も無い上官のために、目の前にそれをかざす。
それは、一通の封筒だった。
あて先は彼女たちの主君である。
将軍の印章が押された封蝋が破られて居ない事を確認し、彼女は頷いた。
「では、────それを燃やしてくれ」
「……宜しいので?」
「いいのだ。今更未練がましい事だった」
将軍自筆の署名のある国王宛の封書であったが、本人がそうせよと命じた以上、
ブラッカは逆らうわけにはいかなかった。
幕僚達も、あのような場所に隠された密書の内容に興味はあっただろうが、
封筒は燃え盛る暖炉の炎にくべられる。
こうして公開されれば王国の行く末に波紋を投じかねなかった文書は、灰となって葬られた。
火が紙を焦がし、秘密が炭となって朽ちてゆくのを彼女は静かに眺めていた────
・・・・・・
585
名前:
そして、遺されたもの
[sage] 投稿日:2007/10/19(金) 23:46:35 ID:aeZHsFhH
「まあー、あだー……」
彼女の腕に、赤子が抱かれていた。
まだ生まれて一年に満たぬ子だ。
「ふふふ、可愛らしい御方だ」
「お前でも、そんな風に思うことがあるのだな」
「フッ、私にも可愛らしいものを愛しく感じる気持ち位あるさ」
テーブルをはさんで坐るのは大剣を背に帯びた傭兵風の男だった。
女将軍は相手の挑発めいた言葉さえ気にならぬように、腕の中の赤子に微笑みかけていた。
紅葉のように小さな掌を伸ばして、女将軍に手を繋いで欲しがっている。
「んん?、あくしゅですか? はーい、あくしゅですよー」
「国元の連中に見せてやりたいものだ。泣く子も黙る女剣士が、赤ん坊と『あくしゅ』とはな」
「貴様の言う『国元』とやらは何処の国だ? 私は反逆者と母国を同じくした覚えなど無いがな」
「……」
三つの瞳が、挑発的に交差する。
過去に横たわる恩讐は晴らされた訳ではない。
むしろ時間を重ねたことで、より一層複雑に絡み合ってさえいる。
「……う、ういぃゃぁーん! あぁーん!」
二人の間に漂いかけた不穏な空気を察したのか、赤ん坊は泣き出した。
慌てたように、女剣士は襁に包まれた赤子を持ち上げる。
「ああ、申し訳ございませんね! ほーら、高い高ーい」
必死になってなだめる女剣士を見ながら、男は杯を傾けた。
彼の左目は眼帯に覆われている。
それを奪った敵は、今目の前で子供をあやしている。
皮肉な事だ。
かって自分たちを引き裂いた女に、彼らは縋らなければならなかった。
さもなければ、子を産んで体力が衰えていた──妻を連れての逃避行は不可能だったろう。
586
名前:
そして、遺されたもの
[sage] 投稿日:2007/10/19(金) 23:47:12 ID:aeZHsFhH
「やれやれ、ようやく泣き止んでくださったか……
もうお休みさせた方がいいかもしれないなあ」
「そうだな。明後日には国境を越えたい。早めに寝ておいた方がいいだろう」
「……」
「国境を越えてまで、お前について来て貰う事はできない。済まなかったな」
「礼を言われる筋合いは無い。今回の事は私の罪でもある……貴様を生かしておいた」
五年前、彼女は一度だけ騎士の誓いに背いた。
その負債の証が、目の前にいる男と腕の中に居る赤子だ。
男の隻眼に僅かに殺意が含まれかけたが、直ぐに霧消した。
女の方も、それ以上のことは言わなかった。
共に剣を取って戦っている時だけは昔の戦友同士に戻れるのだが、
武器を鞘に収めれば、わだかまりは容易に溶けない。
「止めよう、もう終わった事だ」
「そうだな……」
「これからあの方を連れてどこへ行くつもりだ?」
「東へ、五年間で俺にも知り合いが増えたからな」
「逃げ切れるのか? 例え地の果てへでもこの国は暗殺者を送り込んでくるぞ」
「覚悟の上だ。あの方と共に死ねるのなら本望だ…… 今も、五年前もそうだった」
「……」
しばしの沈黙の間に、二人ともがあの日のことを思い出していた。
三人の運命が切り裂かれ、今に続く宿命が準備されたあの日のことを。
再び女剣士が口を開いたとき、その声には厳とした決意が込められていた。
「この子は私が預かる」
「なんだとっ?」
「貴様とあの方は死んでも本望かもしれんが、赤子を巻き込むのは止めろ。
この方は私が養育する」
「そんな事は……許さん。あの方にとってもこの子は心の支えなのだ」
「冷静に考えろ。身体の弱ったあの方と子供を連れて、これから先も逃げおおせられると思うのか?」
「……」
「私にとっても主筋にあたる方だ。決して粗略な扱いはしない──」
・・・・・・
587
名前:
そして、遺されたもの
[sage] 投稿日:2007/10/19(金) 23:49:10 ID:aeZHsFhH
「ブラッカ。あの子は私の刀を継ぎたがっていたが、
身体が大きくなって細身の刀法を使うのは、かえって窮屈な思いをするだろう……
もっとおおらかに、そして精緻に武器を扱う技を修める方があの子のためだと思う」
「はっ、ルーシス卿は剣術師範として多くの優れた弟子を育てております。
彼の元で修練なされば、閣下の様な達人になられるでしょう」
「私には財産を譲るべき身内は少ない。
公証人に遺言状を預けてあるが、お前は後見人として見守ってやって欲しい」
「お任せを、閣下」
「それから…… 困ったな、主君に申し上げたいことよりも、
あの子のために言い残したいことの方が多いではないか?」
「それが、母親の情というものでありましょう」
「母か…… あの子もそう思ってくれているだろうか」
「疑うまでもなく、ラズリオン殿は閣下のことを母と慕っておいでですよ」
「そうか」
その言葉を聞き、女将軍の目元が緩んだ。
一条の雫がそこから零れ落ちたのが、ブラッカには判った。
「最後に一つ頼みたい事がある。あの子の両親の事だ」
「はい」
「もしも、あの子の二親にその気があるのなら、きっと何時の日か名乗り出てくるだろう。
それまでは私の子、ラズリオンでいるがいい── そう伝えてくれ」
「……承りました。確かにお伝えいたします」
信頼する副官に養子の行く末を委ね、安堵したかのように彼女は笑った。
「国王陛下にはお詫び申し上げてくれ。
功をもって大罪を償おうと思っておりましたが、私めはこれ以上お役に立てませぬとな」
上官の言葉に、部下達は戸惑いを憶えた。
偉大な女将軍がいつどのような罪を犯したというのだろうか。
戦場での大功はあれど、償おうとしていた大罪とは一体なんだろうか?
結局、彼らはその言葉を彼女なりの謙遜か、病に冒されたが故の言い間違いと受け取った。
その裏にどれだけの意味が込められていたのかは、手紙が燃えた以上誰にも判らぬことだった。
秘密を胸に仕舞い込んだまま、女将軍は明け方には死んだ。
攻囲は春まで続いたが、本国からの増援が遅れたために街は陥落しなかった。
彼女の死は無駄になったが、その功績と家門は後世まで伝えられている。
(終わり)
588
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/20(土) 08:37:26 ID:CZ9i2nDn
GJ!ラズリッサのその後の話ですか
589
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/20(土) 22:08:21 ID:xnIWLi28
ぐじょーぶ
そして埋め。
埋めついでに富士見とか昔の角川とかみたいな
いかにもな冒険者ものをみてみたいと呟いてみる
590
名前:
名無しさん@ピンキー
[sage] 投稿日:2007/10/21(日) 08:20:06 ID:Ujlok2QJ
じゃあ、最近、新潮文庫の某冒険物を読んだオレが
591
名前:
あぼ〜ん
[sage] 投稿日:2007/10/22(月) 17:38:06 ID:p+ugoR75
あぼ〜ん
592
名前:
あぼ〜ん
[sage] 投稿日:2007/10/22(月) 17:39:08 ID:p+ugoR75
あぼ〜ん
593
名前:
あぼ〜ん
[sage] 投稿日:2007/10/22(月) 17:40:08 ID:p+ugoR75
あぼ〜ん
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